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西洋美術史 年表 
カラヴァッジョ
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(1573−1610)  イタリア  バロック 
ルネッサンス以降、その多大な影響力から抜け出せずにいた絵画世界に、新しいスタイルを確立して行ったのが、カラヴァッジョである。

いったい何が新しいのか。それは光と影の劇的な使い方であり、現実的で、精神的な写実性である。
「発展ではなく革命によって進んだ最初の画家」と言われる。

1620年代くらいまでは、高い評価を得ていたが、17世紀後半から19世紀まで、否定的な評価が下されていた。理想を追う古典主義が主流だったからである。

伝統に反逆する写実主義の画家というイメージは、クールベ以降に現れたのである。
北イタリアのベルガモの近く、カラヴァッジョで生まれたので、本名はミケランジェロ・メリーシだが、カラヴァッジョを名乗った。
17歳の時天涯孤独の身となり、ローマへ出た。枢機卿デル・モンテに助けられる。
1606年、賭け事の口論がきっかけで、友人を殺してしまう。逃亡先でも絵画を描き続けたが、37歳で亡くなった。

静物
1590 Oil on canvas 105 x 184 cm  ボルゲーゼ美術館 ローマ イタリア

病める少年バッコス 
1593 Oil on canvas, 67 x 53 cm  ローマ、ポルゲーゼ美術館
主題解説:ギリシャ神話へ行く

バッコス:
ぶどうの神、祝祭の主、エクスタシーを与える本尊である。

ディオニュソスは人間を愛し、彼の祭りは格別に楽しかったので、他の神々もそのお祭り騒ぎに加わったほどである。

ぶどうとつた、バラがディオニュソスの聖なる植物である。ひょう、山羊、いるかが聖獣である。

ときにリュシオス(ゆるめるもの)と呼ばれた。彼のぶどう酒が、人間たちを日々のかせから開放するからである。

果物かごを持つ少年
1593  Oil on canvas, 70 x 67 cm  ローマ、ポルゲーゼ美術館

トカゲにかまれた少年
1594 Oil on canvas, 66 x 49,5 cm  ロンドン・ナショナル・ギャラリー

聖痕を受ける聖フランチェスコ
1596  Oil on canvas  92.5 x 127.8 cm  アメリカ、コネチカット、ハートフォード、ウォズワース・アテネウム
主題解説:聖書の物語へ行く


聖フランチェスコ
フランチェスコ会創設者。
1182年、アッシジの裕福な商家に生まれる。25歳のときにこれまでの放蕩を反省し、財産をすべて貧者に分け与え修行と伝道の道に入る。

1223年、彼が創設したフランチェスコ会は慈善と伝道を中心に活動し、聖母マリアへの信仰に重きをおいた。

清貧、純潔、服従がモットーの生活であった。修行中にキリストと同じ5つの聖痕を受ける。

1226年になくなっているが、彼は生きているときから伝説化されていた。多くの奇跡を起こし、神の二番目の子であると考えられた。
亡くなって二年後にもっとも高い位の聖人となる。

持ち物は聖痕(手と足、胸の傷)、磔刑像、ユリなど。褐色または灰色の素朴な衣に、3つの結び目のある腰帯をまいている。この3っつとは、清貧、純潔、服従の意味である。

若者たちの合奏
1595-96  Oil on canvas, 92 x 118,5 cm  ニューヨーク、メトロポリタン美術館

女占い師
1596  Oil on canvas, 115 x 150 cm  ローマ、カピトリーノ美術館

女占い師(ジプシー女)
1596-97  Oil on canvas, 89 x 131 cm  パリ、ルーヴル美術館

トランプ詐欺師
1596 Oil on canvas, 90 x 112 cm  テキサス州、フォートワース、キンベル美術館

リュートを弾く若者
1596

Oil on canvas, 94 x 119 cm

ロシア、サンクト・ペテルブルク、エルミタージュ美術館
1600

Oil on canvas, 100 x 126,5 cm

ニューヨーク、メトロポリタン美術館

悔悛するマグダラのマリア
1596-97  Oil on canvas, 122,5 x 98,5 cm   ローマ、ドーリア・パンフィーリ美術館
主題解説:聖書の物語へ行く

マグダラのマリア

[聖書] ルカによる福音書7  罪深い女を赦す <BR>
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この町に一人罪深い女がいた。イエスがファリサイ派の人の家に入って食事の席に着いておられるのを知り、香油の入った石膏の壷を持ってきて、後ろからイエスの足もとに近寄り、泣きながらその足を涙でぬらし始め、自分の髪の毛でぬぐい、イエスの足に接吻して香油を塗った。<BR>
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・・・「赦されることの少ない者は愛することも少ない。」 そして、イエスは女に、「あなたの罪は赦された」と言われた。<BR>
<BR>罪深い女の行為を不信に思い、イエスに訊ねると、多くの罪を持つものは、罪の少ないものより、愛も大きい。そして多く愛したものは赦される、と言って彼女の罪を赦した。罪あるものこそ深く愛さねばならないという教え。<BR>
<BR>絵画を見るときは、油壷を持っているか、キリストの足もとにいる。<BR>
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悔悛のマグダラのマリアの場合は、質素な服装で、十字架と頭蓋骨を持っている。<BR>
この場合の頭蓋骨は、イエズス会が奨励した精神修養としての死の瞑想で、補助手段としての頭蓋骨。<BR>
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エジプトへの逃避途上の休息
1596-97  Oil on canvas, 133,5 x 166,5 cm  ローマ、ドーリア・パンフィーリ美術館
主題解説:聖書の物語へ行く

エジプトへの逃避

イエスが生まれて、東方から三賢王が礼拝にやってきた。

三賢王が帰ると、天使がヨセフの夢に現れて言った。「起きて、その子と母を連れてエジプトに逃げなさい。ヘロデ王が、この子を探し出し、殺そうとしている。私が再び告げるまで、エジプトに留まりなさい」

三人はヘロデ王が死ぬまで、そこにいた。


バッコス(バッカス)
1597 Oil on canvas、95x85cm イタリア、フィレンツェ、ウフィツィ美術館
ギリシャ神話 デュオニュソスへ行く

祭りの後のバッカス

始めに、「バッカス」の絵を見てみよう。上の絵をクリックして、別のウィンドウで、よく見ていただきたい。
これが、ギリシャ神話のバッカス(ディオニュソス)か?と思うような、絵である。そのあたりにいそうな、男の子のようである。
表情は物憂げで、疲れているようである。まるで祭りの後のバッカスである。豊饒の象徴であるはずの果物は、よく見ると腐っている。豊饒ではなく、衰退である。

狂気と冷静
バッカスはお酒の神様であり、祝祭の主である。祭りの際にお酒に酔って狂気乱舞する人々がいるが、そんな所からディオニュソス的な性質として、陶酔・狂気・激情などがあげられる。(バッカスはローマ神話の名前で、ギリシャ神話ではディオニュソスという)
その反対の性質として挙げられるのが、アポロ的と言われる性質である。冷静で自己抑制の効いた性質である。
人は常に、激情に駆られて生きているわけではない。狂気と冷静は相反するものだが、コインの表と裏のように、互いに重なり合って一つなのである。

狂気の後の衰退
日本のサラリーマンを考えてみると分かりやすい。昼間は冷静に職務をこなしている。夜はお酒に酔って、冷静の中に溜まったストレスを解放している。とても冷静に仕事をしていた人か、と思うような状態である。バッカスは解放の神様でもある。
しかし、解放が行き過ぎると二日酔いになってしまい、解放の意味はなくなり、苦しむことになる。衰退が始まるのである。

破壊
このバッカスは、祭りの後で疲れているのに、さらに我々にお酒を進めている。その表情はまるで、我々を無気力な衰退から、破壊へと導いているようにも思える。まるで、表情を変えない殺人鬼のようである。

ギリシャ悲劇
バッカスに関する残酷な、ギリシャ悲劇がある。エウリピデースの『バッコスの信女たち』である。
テーバイの王、ペンテウスが、バッコスの教えの虜になった母親に、狂気と陶酔の祭りの中殺される、という悲劇である。母親が自分の息子を殺してしまったことに気づくのは、祭りの後、しらふになった時である。
ギリシャ人はバッコスの破壊性に気づいていたのである。
カラヴァジョが描いたバッカスは、ギリシャ神話の神様というよりは、我々の中に潜む狂気である。

カラヴァジョの生涯
カラヴァジョ自身、かなりな乱暴者で、変わり者で有名であった。1606年には、殺人を犯している。ローマから追放され、教皇の恩赦を待ちながら、ナポリ、マルタ、シシリアと流れ、マラリアで亡くなっている。
このバッカスはまるでカラヴァジョ自信のようでもある。狂気の後の焦燥、それは破壊への誘いでもある。

果物かご
1597  Oil on canvas, 31 x 47 cm  ミラノ、アンプロジアーナ絵画館

ダヴィデとゴリアテ
1597-98  116 x 91 cm  プラド美術館
主題解説:聖書の物語へ行く

ダビデとゴリアテ

イスラエルの最初の王。ダビデはユダヤ人の家系、羊飼いであった。預言者サムエルは、主に選ばれし者の印にダビデに香油を塗った。

その時の王はサウルであったが、主の恵みを断たれ、心が乱れ、悪霊に苦しめられていた。

王サウルの心を慰めるために竪琴の名手ダビデが雇われた。

そのころイスラエルとペリシテの間で戦いが始まった。ペリシテ軍にはゴリアテという巨人がいた。

ダビデはサウル王にゴリアテと戦わせて欲しいと願い出た。

ダビデは投石袋から小石を取り出し、石投げ紐で石を飛ばした。小石は巨人ゴリアテの額にのめりこみ、ゴリアテは倒れた。

マグダラのマリアの回心
1597-98  97,8 x 132,7 cm  デトロイト美術館
主題解説:聖書の物語へ行く


この町に一人罪深い女がいた。イエスがファリサイ派の人の家に入って食事の席に着いておられるのを知り、香油の入った石膏の壷を持ってきて、後ろからイエスの足もとに近寄り、泣きながらその足を涙でぬらし始め、自分の髪の毛でぬぐい、イエスの足に接吻して香油を塗った。

・・・「赦されることの少ない者は愛することも少ない。」 そして、イエスは女に、「あなたの罪は赦された」と言われた。

罪深い女の行為を不信に思い、イエスに訊ねると、多くの罪を持つものは、罪の少ないものより、愛も大きい。そして多く愛したものは赦される、と言って彼女の罪を赦した。罪あるものこそ深く愛さねばならないという教え。

絵画を見るときは、油壷を持っているか、キリストの足もとにいる。

悔悛のマグダラのマリアの場合は、質素な服装で、十字架と頭蓋骨を持っている。

この場合の頭蓋骨は、イエズス会が奨励した精神修養としての死の瞑想で、補助手段としての頭蓋骨。

アレクサンドリアの聖カタリナ
1598  Oil on canvas, 173 x 133 cm  マドリード、ティッセン=ボルネミッサ・コレクション
主題解説:聖書の物語へ行く

聖カタリナ(アレクサンドリアの) 

キリスト教の聖女(その実在は疑わしいとして教会暦から除外)。

4世紀、アレクサンドリアの貴族の娘で、4世紀初頭ローマ皇帝マクセンティウス(在位306-312)の求婚を退け、その怒りにふれ、処刑されたと伝えられる。

大釘を打ち付けた車輪で拷問を受けるが、その車輪は雷で粉々になったという。最後に斬首されて殉教。

持ち物は拷問の際の車輪のほか、剣、指輪など。



ホロフェルネスの首を斬るユディト
1598 Oil on canvas、145x195cm  ローマ国立美術館(パラッツォ・バルベリーニ)     
主題解説:聖書の物語へ行く


ユディトとホロフェルネス

ユディトはベツリアの町に住む、裕福な未亡人であった。大変に美しく、神への信仰が厚かった。ホロフェルネス率いるアッシリア軍がベツリアの町を包囲した。

ユディトは召使とともにはアッシリアの陣地へ行った。ユディトは取り囲まれているベツリアの町について、もう神の加護のない町であるから、攻略方法を教えると言って敵将ホロフェルネスに近づいた。

ユディトの美しさに気を許したホロフェルネスは彼女を酒宴に招いた。
ユディトはホロフェルネスが酔いつぶれて寝込んでしまうのを待ち、首を切り落とした。

ユディトはホロフェルネスの首をベツレアの町に持ち帰った。将軍のいないアッシリア軍はあっさりと敗退した。

メデューサの首
1598-99  Oil on canvas mounted on wood, 60 x 55 cm  フィレンツェ、ウフィツィ美術館
主題解説:ギリシャ神話へ行く


ペルセウスとメドゥサ


ペルセウスは、セリポス島のポリュデクテス王に育てられた。しかし、王は、ペルセウスが成人すると、邪魔になり、彼を殺そうと企んだ。

ペルセウスに、その国を荒らしていた怪物メドゥサを退治しにやらせたのである。

メドゥサは、ゴルゴンの三姉妹の一人で、もとは美しい乙女であった。しかし、アテナとその美しさを争ったため、髪はひしめく蛇に変えられ、美も奪われ、怪物にされてしまったのである。

メドゥサを一目見たものは、皆、石になってしまうのである。

ペルセウスはそんな恐ろしいメドゥサを退治するために、思案した。

幸い、ペルセウスはアテナヘルメスに可愛がられていた。

アテナは楯を貸してくれた。そして、ペルセウスに警告した。メドゥサを見るとき、楯に写る姿だけを見るようにと。

ヘルメスは翼のついた靴を貸してくれた。そしてもう一つ貸してくれたのは、金の新月刀であった。これは、世界でただ一つ、メドゥサの首を切ることができる鋭利な刀である。

ヘルメスは、ペルセウスに、あと二つのものが必要だ、と告げた。その二つのものは、かつて、西方の国のニンフに、ヘルメスが与えた贈り物である。

さらに、ニンフたちの住家は、グライアイと呼ばれる三人の老女だけが知っているので、彼女らから、ニンフの住家を聞かなくてはならない。

ペルセウスは翼の靴を履き、老女グライアイのところまで、飛んでいった。彼女たちは、三人なのに、一つの目と一つの歯しか持たず、それらを、交代で使っていた。

ペルセウスは、グライアイたちから、ニンフたちは黄昏の娘たちの園(ヘスペリデス)に住んでいることを聞き出した。そこにはヘラの黄金のりんごの木があり、アトラスがそのへりを持ち上げている。

もう何世紀も新しい客に会っていなかったニンフたちは、ペルセウスを喜んで迎え入れた。そして、ヘルメスが残していった贈り物を与えた。

ひとつは、隠れ兜といい、かぶると人間の周りを闇が包み、見えなくしてしまうものである。もう一つはキビシスという袋である。この魔法の袋だけが、メドゥサの毒に耐えられるのである。

ペルセウスは、メドゥサに睨みつけられると石になってしまうので、メドゥサが眠っている間に、近づき、首を落とした。

そのとき、飛び散るメドゥサの血から、生まれ出たのが、天馬ペガソスである。

ナルキッソス
1598-99  Oil on canvas, 110 x 92 cm  ローマ国立美術館(パラッツォ・コルシーニ)

コンタレッリ礼拝堂: 聖マタイ連作      ローマ、 サン・ルイージ・デイ・フランチェージ聖堂
1 聖マタイと天使  (第二次大戦で焼失)
1602  Oil on canvas, 232 x 183 cm

2 聖マタイのお召し  コンタレッリ礼拝堂: 聖マタイ連作より      主題解説:聖書の物語へ行く
1600 295x195cm     ローマ、 サン・ルイージ・デイ・フランチェージ聖堂
反宗教改革時代に最も好まれた主題が「改宗」であった。

この絵も、マタイが改宗してイエスに従っていくという聖書の場面を描いている。

イエスが収税所にいた徴税人マタイに向かって、「わたしにしたがいなさい」と言うと、マタイは立ち上がって従った。これが、聖マタイの召命である。

いきなりである。イエスはマタイに対しては奇跡など行っていない。それなのに、マタイは立ち上がり、イエスに従うのである。

マタイが立ち上がったことじたいが、奇跡ともいえる。

カラヴァッジョが描いた、この礼拝堂の絵を見てみよう。

右側に立って、腕を伸ばしている男がイエスである。イエスの指先は、ミケランジェロの『アダムの創造』が神に向かって伸ばしている指先と同じである。

テーブルに座っている人々の内、右の三人は、キリストとペテロがやってきたのに気づき、顔を上げている。

左の二人は、顔も上げずにテーブルの上の金貨を見ている。

イエスが声をかけたマタイはいったいどの人物であろうか。

従来の解釈では、テーブルに座っている五人の男たちの中で、中央にいる、髭をはやした男ではないかと考えられていた。

髭の男は自分の胸を指して、「私のことでしょうか」と言っているようでもあるからである。

しかし、よく見ると、一番左側でうつむいている男を指して、「この男でしょうか」と言っているようでもある。

聖書では、イエスはいきなりマタイに声をかけている。マタイは何の躊躇もなく立ち上がり、イエスに従うのである。

そうとあれば、イエスに向かって「私でしょうか」と問う間もないはずである。

左でうつむいている男が、次の瞬間立ち上がり、イエスについていったのではないだろうか。

カラヴァッジョは、ドラマのクライマックスを描いたのではない。その直前を描いたということになる。

実際、この礼拝堂に入って絵を見ると、この絵は決して正面から見られることはない。絵は左奥へと見るように置かれているので、一番左のうずくまっている男の姿が大きく見えるのである。(参照図版

そうやって見ると、左のうつむいている男が、主人公のマタイではないか、という説が有効に思える。

左のうつむいている男はまだ改宗していない。彼はイエスを見ていない。しかし、声は聞こえている。

男は内面ではすでに、すみやかに、静かに改宗が行われたのである。

次の瞬間、彼は立ち上がるのである。

改宗とは、外見の変化ではない。内面的なものである。カラヴァッジョは、男に起った内面の変化を描いたのである。

3 聖マタイの殉教  コンタレッリ礼拝堂: 聖マタイ連作より
1599-1600  Oil on canvas, 323 x 343 cm
エチオピアでの伝道中、マタイは王ヒルタクスの再婚に反対した。怒った王はマタイに刺客を送り、殺した。

普通に見ると、マタイを殺した刺客は、倒れているマタイの上から、再びマタイを切りつけようとしている、中央の半裸の男だと思ってしまうだろう。

しかし、刺客はなぜ半裸であるのか。しかも、なぜ殺し屋が、そんなに怒った顔をしているのか。

前景にいる二人の若者も半裸である。

洗礼をするとき、衣を脱いで半裸になる。マタイは聖堂内で洗礼を行っていたのである。中央の怒れる男も、洗礼を受けようとしていた者なのである。

殺し屋は、左側にいる四人の男たちである。彼らはすでに仕事を終えて帰ろうとしているのである。

中央の半裸の男の左にいる人物は、手に剣を持たずに、手のひらを水平に上げている。半裸の男に剣を取られたのである。剣は半裸の男の手にある。

信者たちは、この後、蜂起するのである。

カラヴァッジョが描いたのは、マタイが殺されたクライマックスではなく、刺された直後を描いているのである。

信者たちが、蜂起する寸前の、燃えるような怒りを描いたのである。

カラヴァッジョの挑戦である。

それまでの見る者に分かりやすく聖書を説くための絵画から脱して、見る者に発見を促したのである。

聖ペテロの磔刑   
1600-1601 230x175cm  ローマ サンタ・マリア・デル・ポポロ聖堂チェラージ礼拝堂

聖パウロの改宗
1600  Oil on cypress wood, 237 x 189 cm  ローマ、オデスカルキ・コレクション
聖パウロの改宗
1600  Oil on canvas, 230 x 175 cm  ローマ、サンタ・マリア・デル・ポポロ聖堂、チェラージ礼拝堂
上の二つの絵は、同じ主題「聖パウロの改宗」を扱ったものである。

パウロは当初、キリストを迫害するパリサイ派であった。

パウロはダマスカスのキリスト教徒を弾圧するために、一隊の指揮官となり、ダマスカスに向かっているところであった。

突然、天からの光があって、パウロは地面に倒れた。

主の声がした。

「パウロよ、なぜわたしを迫害するのか」

「あなたはどなたですか」

「お前が迫害しているナザレのイエスである」

この後、パウロはしばらく盲目となってしまう。

ダマスクスに着いたパウロは、洗礼を受けるのである。

パウロの改宗も、突然である。

最初、カラヴァッジョは上の絵を描いた。

落馬するパウロと、天に出現するキリストの組み合わせは、伝統的でもある。

左上にキリストと天使が描かれている。

しかし、下の絵は違う。

地面に倒れるパウロと馬、馬丁だけである。

馬丁は、倒れているパウロのことに気づいていない様子である。馬も驚いていない。平静である。

パウロは倒れて、目を閉じ、腕を天に伸ばしている。

上の絵と、下の絵では、主題の取り扱い方、あるいは解釈が、大きく変化しているのである。

下の絵では、奇跡を示すものは何も描かれていない。

倒れたパウロは、静かに天の声を聞いているのである。その声は馬丁には聞こえていない。

パウロの内面で何かが、静かに、変化しているのである。

倒れている姿は、キリスト降誕の絵にあるように、聖母に向かって赤ん坊のキリストが手を広げる姿と重なる。改宗による「第二の生」である。

両手を広げた姿は、キリストの磔刑を暗示してもいる。キリストの十字架磔刑による死は、同時に救済も表すのである。

カラヴァッジョはここでも、「マタイの改宗」同様、内面の改宗を描いているのである。

斬新な聖書解釈である。

そして、この絵も、現地に行って直接見なければならない絵の一つなのである。

というのは、見る者たちは、正面から見られないのである。礼拝堂の右側の壁にあり、右下から見るようになっているのである。

正面から見ると、馬が非常に大きく描かれているが、現地で、右下からみるとまた違った印象なのだそうである。

ダヴィデ        主題解説:聖書の物語へ行く
1600  Oil on canvas, 110 x 91 cm  マドリード、プラド美術館

イサクの犠牲        主題解説;聖書の物語へ行く
1601-02  Oil on canvas, 104 x 135 cm  フィレンツェ、ウフィツィ美術館

聖トマスの懐疑
1601-02  Oil on canvas, 107 x 146 cm  ポツダム、サンスーシ宮国立美術館

エマオの晩餐    主題解説:聖書の物語へ行く
1601-02  Oil on canvas, 139 x 195 cm  ロンドン・ナショナル・ギャラリー
『エマオの晩餐』である。これはキリスト復活を主題としている。

普通のキリスト
エマオに向かっていたキリストの弟子二人の前に、一人の男が現れる。弟子たちは彼を夕食に誘う。その席で男はパンに祝福を与えて、裂く。その行為で、弟子たちは、男が復活したキリストであることが分かる。絵は弟子たちの驚きを描いている。
まずはキリストの顔に注目していただきたい。なんと丸々とした、普通の若者である。ひげもない。『バッカス』同様、その容貌にまず驚く。これがキリストか?と最初は思う。たしかにマタイ伝には「別の姿で」現れたと書いてある。

キリスト復活
キリストは一度天に行き、戻ってきた。十字架の刑は彼の身体に数多くの傷を残した。しかし、一度天に行って来たのだから、その傷は癒されていなければならない。
このキリストは、傷も癒えて、若返り、なにかとても満足げではないか。偉そうでもない。自信の中に、謙虚さがあり、好感が持てるのである。

豊かな表現
キリストの左隣りに立っているのは、宿の主人である。彼の表情はいかにも、本当にキリストか?という感じで、まだ信じられないような、あっけにとられているような表情である。
弟子たちの表情もいい。一人は右側で大きく手を広げている。これによって、画面に奥行きが出ている。十字架の意味も含まれている。左側の胸につけている貝は、巡礼の印である。
果物にも象徴性がある。ざくろは茨の冠を表し、りんごといちぢくは人間の原罪を表し、葡萄はキリストの血を表している。果物の籠はテーブルの端に置かれ,今にも落ちそうである。我々の世界が揺らいでいるのである。

光と影
光と影の絶妙なバランスを見ていただきたい。カラヴァジョが発明したスタイルである。闇の中から、光を浴びて浮かび上がる人間像は、劇中のスポットライトのような役目を果たしている。このスタイルは以後、主流となり、レンブラントなどに受け継がれて行く。


The Inspiration of Saint Matthew
1602 Oil on canvas, 292 x 186 cm Contarelli Chapel, San Luigi dei Francesi, Rome

勝ち誇るキューピッド
1602-03  Oil on canvas, 156 x 113 cm  ベルリン国立美術館

キリストの埋葬       主題解説:聖書の物語へ行く
1602-03  Oil on canvas, 300 x 203 cm  ローマ、ヴァティカン宮美術館

洗礼者聖ヨハネ
1603-04  Oil on canvas, 94 x 131 cm  ローマ国立美術館(パラッツォ・コルシーニ)

洗礼者聖ヨハネ
1604  Oil on canvas, 172,5 x 104,5 cm  カンザス・シティ、ネルソン・アトキンズ美術館

この人を見よ
1606  Oil on canvas, 128 x 103 cm   ジェノヴァ、パラッツォ・ロッソ美術館

ダヴィデとゴリアテ      主題解説:聖書の物語へ行く
1605   125 x 101 cm   ボルゲーゼ美術館  ローマ イタリア

イサクの犠牲      主題解説:聖書の物語へ行
1605  116 x 173 cm   個人蔵

聖母の死
1606  Oil on canvas, 369 x 245 cm  パリ、ルーヴル美術館

瞑想の聖ヒエロニムス
1605-06  Oil on canvas, 118 x 81 cm  スペイン、モンセラート修道院附属美術館

執筆する聖ヒエロニムス
1606  Oil on canvas, 112 x 157 cm  ローマ、ボルゲーゼ美術館

エマオの晩餐               主題解説:聖書の物語へ行く
1606 Oil on canvas, 141 x 175 cm  ミラノ、ブレラ美術館
同じ、『エマオの晩餐』であるが、6年後に描かれたものである。イエスの顔が、落ち着いた青年になっている。さらに、弟子たちの動作もおとなしくなっている。

祈る聖フランチェスコ      主題解説:聖書の物語へ行く
1606  Oil on canvas, 130 x 190 cm  イタリア、クレモーナ市立美術館

ゴリアテの首を持つダヴィデ    主題解説:聖書の物語へ行く
1606-07 Oil on wood,  90,5 x 116 cm  ウィーン美術史美術館

ロザリオの聖母
1606-07  364 x 249 cm  ウィーン美術史美術館

慈悲の7つの行い
1607 Oil on canvas, 390 x 260 cm  ナポリ、ピオ・モンテ・デラ・ミゼリコルディア聖堂
マタイ福音書より

聖アンデレの磔刑       主題解説:聖書の物語へ行く
1607  Oil on canvas, 202,5 x 152,7 cm  オハイオ、クリーヴランド美術館

キリストの鞭打ち      主題解説:聖書の物語へ行く
1607  Oil on canvas, 390 x 260 cm  ナポリ、カルディモンテ国立美術館

キリストの鞭打ち    主題解説:聖書の物語へ行く
1607  Oil on canvas, 134,5 x 175,5 cm  フランス、ルーアン美術館

洗礼者聖ヨハネの首を持つサロメ
1607 Oil on canvas, 90,5 x 167 cm  ロンドン・ナショナル・ギャラリー

執筆する聖ヒエロニムス
1607  Oil on canvas, 117 x 157 cm  マルタ島、ヴァレッタ、大聖堂附属美術館

アロフ・ド・ヴィニャクール
1607-08  Oil on canvas, 195 x 134 cm  パリ、ルーヴル美術館
マルタ島のマルタ騎士団総団長

洗礼者聖ヨハネの斬首
1608 Oil on canvas, 361 x 520 cm  マルタ島、ヴァレッタ、サン・ジョヴァンニ大聖堂

眠るキューピッド
1608  Oil on canvas, 71 x 105 cm  フィレンツェ、ウフィツィ美術館

聖ルキアの埋葬
1608  Oil on canvas, 408 x 300 cm  シラクーサ、サンタ・ルチア大聖堂

ラザロの蘇生      主題解説:聖書の物語へ行く
1608-09  Oil on canvas, 380 x 275 cm  メッシーナ美術館

受胎告知      主題解説:聖書の物語へ行く
1608-09  Oil on canvas, 285 x 205 cm  フランス、ナンシー美術館

羊飼いの礼拝       主題解説:聖書の物語へ行く
1609  Oil on canvas, 314 x 211 cm  メッシーナ州立美術館

キリストの降誕       主題解説:聖書の物語へ行く
1609  Oil on canvas, 268 x 197 cm  パレルモ、サン・ロレンツォ同信会祈祷堂
1969年盗難

洗礼者聖ヨハネの首を持つサロメ
1609  Oil on canvas, 116 x 140 cm  マドリード王宮

聖ウルスラの殉教
1610  Oil on canvas, 154 x 178 cm  ナポリ、カポディモンテ国立美術館



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