第50回 : シエナ美術展(東京ステーションギャラリー)

「日本におけるイタリア2001年」の一環として(またしても!)10月6日からスタートし、12月9日(日)までを会期とした展覧会『シエナ美術展』に行ってきました。休館日は毎週月曜、入館料は一般800円となっています。私にとってなじみのないシエナの美術ってどんなものなのだろうか? という僅かな興味が湧かなかったら、行かずじまいになったかもしれません。冒頭でリンクした「〜2001年」の公式HPにつなぐと、この展覧会の記事が見出せます。もちろん、東京ステーションギャラリーのHPにつないでも、関連記事を読むことができますよ。

この展覧会は、シエナのモンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ銀行、キージ音楽アカデミー財団のコレクションから約100点をもってきて初公開しています(絵画、彫刻、陶器など)。シエナは、古い時代の街並みや風景がそのまま残されているといいます。そのせいでしょう、世界遺産にも指定されていて、主催者によれば、シエナの美術やシエナを描いた美術作品を、これだけまとめて日本に紹介するのは初めてのことだそうです。「ふーん、そうなのか」と思いながら、展示室に足を踏み入れました。

本展覧会では、キリストの降下、聖母子、マグダラのマリア、聖ヒエロニムスほかの聖人像等々、宗教的な題材を扱ったものが目立ちます。もう一つくわえると、特に初期バロックのころの作品などは、目がパッチリとして、画面全体はやや平面的に見える作品が目に付きました。そこに見られる一種のバタ臭さは、やはり特徴といえるのでしょうね。ともあれ宗教的題材を扱った作品は多いです。その中で、十字架から降ろされたキリストを描いた作品の、右肋骨のあたりについた傷を見て、『カラヴァッジョ展』で見た別の作品を連想してしまいました。それは、復活後のキリストを本人かどうか疑う弟子がいて、その傷のあたりをまじまじと見つめている、というものでした。こんな連想が生まれるのも楽しいものです。それから、ペテロが大粒の涙を流して後悔している油絵がありましたが、これなども印象に残りました。

シエナの風景を描いた作品にも強烈なインパクトを与えてくれるものがありました。カンポ広場の光景を描いた何種類かの作品がそれです。ヴィンチェンツォ・ルスティチの《コントラーダの行進》や《闘牛》が描かれたのが1585年頃、このあと確か17世紀にもカンポ広場を描いた絵画があり、さいごはフランチェスコ・ネンコの《1818年5月18日と19日、大公フェルディナントV世の訪問の際に催されたパリオの競馬で、シエナのカンポ広場をねりあるくコントラーダの伝統的な行進》が登場します。驚いたことに、この広場の風景は、時代が移ってもほとんど変わらないのですね。なんとも面白い、と思いました。

さて、会場では音声ガイドなどは用意されておらず、作品の横に解説文が付されている。これを読みながら見ていくのは、案外時間を喰いますし、何よりもしんどいですね。これって、私が怠け者だという証しでしょうか??
【2001年11月18日】


トップページへ
展覧会の絵へ
前のページへ
次のページへ