第39回 : イタリア・ルネサンス ― 宮廷と都市の文化展(国立西洋美術館)

いま国立西洋美術館で、7月8日(日)までを会期として「イタリア・ルネサンス ― 宮廷と都市の文化展」が開催されています。休館日は月曜日ですが、ただし4月30日[振替休日]は開館するそうですよ。入場料は、一般(当日)1300円です。

この展覧会は「日本におけるイタリア2001年」の幕開けを飾る展覧会の一つで、フィレンツェ・プラート・ピストイア美術監督局が発案・企画し、国立西洋美術館と共同で準備に当たってきた催しだといいます。今回の展示の特徴は、イタリア各地の美術館から、絵画、彫刻、素描、写本、タペストリー、宝飾工芸品、陶器のほか、武具や科学観測用具などにいたるまで、約180点が集められていることです。私にとって美術鑑賞で一番見たいのは絵画、次に版画かな、そして時に素描が入ってくることもある、といった好みがありますので、これだけ多くの種類が集められると正直言って戸惑いました。しかも主催者の弁では「その趣旨は、歴史的現象としてのイタリア半島に起こったルネサンスの『文化』そのものを理解してもらうことにある」とありましたから、不向きなところへ来てしまったかなと不安にかられました。

会場の展示は、次の4つのセクションに分かれていました。
T ルネサンスの創造
  15世紀フィレンツェの文化に焦点を当てながら、ルネサンスの始まりからその成熟への道筋をたどります。
U 新たなる芸術規範の拡がり
  15世紀イタリア各地の宮廷や都市の独創性ゆたかな文化を再認識します。
V 円熟期のルネサンス
  盛期ルネサンスの作品を見ながら、その後のマニエリズムの萌芽をたどります。
W 16世紀宮廷文化の栄華
  16世紀ヴェネツィア派の優美な色彩の世界と、トスカーナ大公国時代の絢爛なマニエリズム文化を比較しながら絵画、彫刻、工芸品などを見ます。

一番強い印象が残ったのは「W 16世紀宮廷文化の栄華」のセクションでした。このセクションには器、杯、紋章、水差し、花瓶、日時計、コンパス、四分器なども含まれるのですが、なんといっても、いま見ても生き生きとした絵画作品が見出せました。たとえば・・・

◆ ティツィアーノ・ヴェチェッリオ『フローラ』
◆ ティツィアーノ・ヴェチェッリオ『悔悛するマグダのマリアラ』

後者は、おととしの6月に国立西洋美術館で行なわれた「フィレンツェとヴェネツィア展」(本HP「展覧会の絵」第3回)で見た作品と同名の作品ですが、ヴァリアンテだと思います。前回はエルミタージュ美術館所蔵の作品でしたが、今回はナポリのカーポティモンテ国立美術館所蔵の作品です。ものの本によると、ティツィアーノはこの主題でたくさんのヴァリアンテを残したとか。一方、『フローラ』は初めて見ました。ティツィアーノの絵画作品をウェブ上で見ようとすると、
    http://sunsite.dk/cgfa/titian/
が一例です。『フローラ』は、その最初のページの上から9番目(Flora 1515)をクリックして拡大表示してみましょう。どうですか、きれいな絵でしょう。ほかにも、このセクションでは『ルネサンス画人伝』を著した、あのジョルジョ・ヴァザーリの作品『ウルカヌスの鍛冶場』や、ベルリオーズがオペラに取り上げたことでも有名なベンヴェヌート・チェッリーニの『アンドロメダを解放するペルセウス』などにも接することができて、思わずニッコリでした。

第Tセクションにはマザッチョ、ドナテッロ、ボッティチェッリほかの作家が登場します。ボッティチェッリは『受胎告知』とか『ホロフェルネスの遺骸の発見』という作品が出ています。第Uセクションは、よくわからないので省略(汗と笑いだあ!!)、第Vセクションはレオナルド・ダ・ヴィンチ、ラファエッロなど展示作品の数は少なめですが、有名な作家の習作などが含まれていました。
【2001年4月11日】


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