第38回 : ルノワール展 (ブリヂストン美術館)

東京駅を降りて、八重洲通りをブリヂストン美術館へ向かって歩いていくと、街のあちこちに「ルノワール展」のポスターその他が目立ちます。街を挙げての応援体制が整っている様子が伺えました。この展覧会、4月15日(日)までを会期として開催されていますが、毎週月曜が休館日となります。入館料一般1300円です。実は私、展覧会初日の2月10日(土)に行ったのですが、美術館の入口は行列ができていました。「おおっ!」とビビッていると、前売券をお持ちの方はすぐにご入場できます、というので嬉々として美術館に足を踏み入れました。でも、ちょっと待って。ブリヂストン美術館は昨年改修が終わって、リニューアル・オープンしたのですが、美術館がある2階へは階段で上がるのではなく、エレベーターを使うのですよ。一度に乗れる人数が限られますから、中に入って少し待つこととなりました。ま、このあたりは細かいことですが・・・。

今回、ブリヂストン美術館で行なわれているルノワール展は、1870年に描かれた《水浴の女とグリフォンテリア》(サンパウロ美術館)から1892年の《ピアノを弾く少女たち》(オルセー美術館)まで油彩画約50点と素描約15点が集められています。つまり、ルノワールが大家と認められた後の作品ではなく、この画家が「もっとも創造的だった20年間に出品作品を限定」(主催者による)したというのです。制作年代を今回のように限ることで、ルノワールの芸術をより深く理解しようという趣旨です。

1870年代のルノワールは、印象派の中心的存在の一人として活動しますが、80年代には印象派と一線を画した作品が多く見出せるようになります。しかし、こう一言で言ってしまうのは、少し気がひけます。輪郭線や色彩の使い方が直截的になり、それらの画面への現れ方が作品によって違うのですね。時に驚き、時に感心しながらこれらの作品を見ましたが、飽きすことなく楽しかったですね。そして、最後を飾るのが《ピアノを弾く少女たち》。輪郭線がなく柔らかな色彩を再び取り戻しますが、それは70年代の印象派時代の絵画とは、やはり違った趣がありました。たしかに、さまざまな試行錯誤が繰り返された20年ほどだったのだな、と実感できました。

さて、ここでブリヂストン美術館のホームページにつないでみましょう(→こちら へどうぞ!)。現在、トピックスとして、この展覧会の紹介が掲載されていますが、そのページを開いて見ていくと、
    《ルグラン嬢》(1875年 フィラデルフィア美術館)
    《シャトゥーの舟遊び》(1879年 ワシントン・ナショナル・ギャラリー)
    《桃のある静物》(1881年 メトロポリタン美術館)
    《ヴァルジュモンの子どもたちの午後》(1884年 ベルリン・ナショナル・ギャラリー)
の4点がウェブ上で見られます。なかでも、《ルグラン嬢》は生き生きとした人物像がいいです。ルノワールは、これに限らず子どもを描かせると、なんとも素晴らしい絵を描くという印象をもっていましたが、この作品も然りです。なかでも目がいいですね。もしも、当日見た作品のなかから一つだけ選べ、と言われたら、私は《ルグラン嬢》をとります。

ほかに、私個人が「へえーっ」と思ったことがありました。それは、ユトリロの母親で画家でもあったヴァラドンが、何枚かルノワールの作品のモデルとして描かれていることでした。たとえば、
    《ブージヴァルのダンス Dance at Bougival 》(1883年頃)
    《髪を編む娘》(1884年)
残念ながら後者は、ウェブ上で見出せませんでしたが、前者はありました\(^o^)/ OCFA−Pierre -Auguste Renoirの4ページ最上段に出てきます。ついでながら、その下の作品に描かれた女性もヴァラドンですね。私は、特別ヴァラドンのファンだというわけではありませんが、のちにエリック・サティとも、あるいはロートレックとも恋愛関係にあって、当時のパリで、彼女が小さいユトリロ(1883年生まれ!!)を抱えながら、どうやって生きていたのか、というのがちょっと気になった次第です、ハイ。最後に、《ピアノを弾く少女 Girls at the Piano 》(1892年)は、同じHPの5ページ最上段。今回のみならず、先年のオルセー美術館展で見たぞ、という方もいらっしゃるでしょう。また会えますよ。主催者の企画の趣旨は成功していると思います。
【2001年3月3日】


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