第40回 : ヴェネツィア絵画展(上野の森美術館)

これは「日本におけるイタリア2001年」のオープニングを飾る展覧会の一つで、その意味では前回取り上げた「イタリア・ルネサンス ― 宮廷と都市の文化展」と同様です。この展覧会は上野の森美術館で開催されていますから、両方を回ってみてもいいわけですね。本展の会期は5月27日(日)までですが(こちらの方が会期は短いわけです)、会期中無休というのが嬉しいです。入場料は一般が1300円。上野の森美術館のHPにつなぐと(→ こちら へどうぞ)、トップページに本展のコンテンツが出てきます。ここを見ていくと、出品全作品一覧が用意されています。私は帰宅後に気付きましたが、事前にチェックしていくこともできるわけですね。

本展は、18世紀のヴェネツィア絵画を特集していて、20人ほどの作家の油彩が約60点展示されています。これだけまとめて18世紀ヴェネツィアの絵画が紹介されるのは日本で初めてだそうで、この点がウリになっています。会場に足を踏み入れると(少なくとも私が行った日は)、ヴィヴァルディの《四季》がBGMとして流れていました。ヴィヴァルディは18世紀のヴェネーツィアで活躍していた音楽家ですから、実に理にかなっていますね。さて、会場の展示は次のような構成になっていました。

T.18世紀ヴェネツィアの現実
1. 都市景観画(ヴェドゥータ)と奇想画(カプリッチョ)
2. 祝祭と生活
3. 田園とアルカディア
U.18世紀ヴェネツィアの幻想
4. 信仰と神話

<都市景観画(ヴェドゥータ)と奇想画(カプリッチョ)>のコーナーでは、最初に展示されている『ヴェネツィア俯瞰地図』が私にとっては面白く、まずこの図を頭にインプットしてから歩を進めました。カナレットとフランチェスコ・グアルディの作品が展示作品の主なところ。

<祝祭と生活>は、ピエトロ・ロンギの作品を中心に展示されています。私にとっては、とても面白いコーナーでした。たとえばアントーニオ・ストームの『ブチントーロの出航』は、いかにも水の都ヴェネーツィアの光景を描き出していますし、ヴェネーツィアに伝わる言い伝えをもとにしたアントーニオ・グアルディの『ドージェ・バルトロメオ・グタデニーゴに指輪を渡す漁師』、仮面舞踏会の一場面かと思ったロンギの『リドット(賭博場)』、中世以来総督(ド−ジェ)を選んできたヴェネーツィアならではの絵画でアレッサンドロ・ロンギの『バロッティン・デル・ドージェ(ドージェ選挙のくじ引き少年)』などのほか、ピエトロ・ロンギが描いた富裕階級を取り上げた作品(たとえば『地理学の講義』『朝のチョコラータ』など)も面白く見ました。

<田園とアルカディア>は、たった6点のみの展示。内訳はフランチェスコ・ズッカレッリ2点、ジュゼッペ・ザイス4点というところでした。私は、ざっと見てしまいました。<信仰と神話>は宗教画や神話から題材をとった絵画をまとめてあります。ジャンバッティスタ・ティエポロの作品がとりわけ多く、ほかにセバスティアーノ・リッチ、ジャンバッティスタ・ピアッツェッタらの名も見えます。ひとくせあって面白いなと思ったのが、ティエポロの『ヴェネツィアに富を捧げるネプトゥヌス』。ネプトゥヌスがお金をじゃらじゃらと出しながら見せる表情のなんと誇らしげにみえることか・・・。

なお、ここまでに私が興味をもった作品のいくつかは、先に触れた上野の森美術館HPの本展のコンテンツを開くと「作品紹介」があり、そこで画像と解説を見たり読んだりできます。こうしたコンテンツが展覧会終了後も、過去の展覧会情報としてでも残されると嬉しいのですがね。
【2001年4月29日】


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