第25回 : レンブラント、フェルメールとその時代(国立西洋美術館)


国立西洋美術館右の写真は、上野にある国立西洋美術館です(2000年7月8日の午後4時40分ころの撮影です)。この日の朝、東京は台風3号の影響が残っていましたが、昼頃から回復基調となり、午後から夕方はご覧のとおり。ビックリしました。

上野といえば、7月2日(日)までの会期で東京都美術館で「ルーベンスとその時代展」が開催されていました[「展覧会の絵」第22回 参照 →こちらへ]。その後、7月4日(火)から会場は同じ上野にある国立西洋美術館で、この展覧会が始まりました。今回の会期は9月24日(日)まで(月曜休館)ですから、まだたっぷり2ヵ月以上の時間があります。「ルーベンス〜」はフランドル絵画とオランダ絵画を並べて見せてくれました。今回は、アムステルダム国立美術館(Rijksmuseum Amsterdam)から17世紀オランダ美術96点[その大半は絵画ですが、一部に版画と素描も]が来ています。「○○とその時代」とネーミングされた展覧会は、主観で言ってしまえば、○○の作品が案外少ないということがよくあるように思います。今回も、96点の作品のうち、レンブラント9点、フェルメール1点で合計10点が主人公と思しき二人の作品です。もっとも、フェルメールは生涯に残した作品数が35点だといいますから、数点まとまってどこかの美術館に貸し出されることは滅多にないんだそうです。

会場に足を踏み入れてみましょう。展示の構成からご紹介しましょう。
   T.黄金時代の曙
   U.オランダの景観 ― 風景描写と「オランダ」の成立
   V.壮麗あるいは虚栄 ― 静物画の世界
   W.自己の確立 ― レンブラントと肖像芸術
   X.日々の暮らし ― フェルメールと風俗画
   Y.神、聖人、英雄 ― もうひとつのオランダ芸術

1600年ころから、フランドル絵画とは一線を画したオランダ独自の美術の歩みがはじまります。フランドルと違って、オランダは美術のパトロンに教会がついていません。目の前の現実をしっかりと捉えた美術作品がズラリと並んでいるのですから壮観です。その種類が<風景画><静物画><肖像画><風俗画>とわたっていますから、さまざまに楽しめます。そして、ただ感覚だけを頼りに見ていけるかというと、作品の中に寓意が込められていることも多いようで、時によってはそうもいきません。たとえば楽器や楽譜は音楽を表しますが、その音楽は音が鳴ったかと思うと消えてしまうもの。そこから人生のはかなさを表わしていたりするんだそうです。まあ、自分が出来る範囲で想像をめぐらせながら見てきました。宗教上の教えと重なる部分もあるのかもしれませんけれども、それだけに限らず、世俗の社会を理性をもって生きるための教訓や遺訓が、そこここに込められているのかもしれません。肖像画は、背景の色や衣装にモデルが用意されていて、注文客にそれらの組合わせを選んでもらって描き上げたという解説もあり「へぇー」と驚いて帰ってきました。
ともかくも、じっくりと見て歩くと興味が尽きない展覧会でした。

■印象に残った絵■
アールト・ファン・デル・ネール  冬の川 (ca.1655)
  Neer, Aert van der       River View in the Winter (ca.1655)

たくさんの人間や動物が川に張った氷の上にいます。数人の人間が乗った橇が、馬に引かれていますね。それも二組も。靴の先がエッジのように尖がった感じの男も見受けられます。スケートを履いているのでしょうね。こうして、観察をしていると時間が経つのを忘れてしまいそうになる、楽しい絵です。
(URL: http://users.pandora.be/bernard/Artpics/Neer.htm より View of a river in winter, 1655-1660, Rijksmuseum, Amsterdam をクリック)

ヨハネス・フェルメール      恋文 (ca.1688)
  Vermeer, Johannes      The Love Letter

とても有名なフェルメールの作品が来ました \(^o^)/ 縦長の画面の中央約3分の1の奥のほうにいる、女主人とメイドが登場人物です。なにか他人のプライバシーを覗き見るような戸惑いとかワクワク感に捕らわれませんか? メイドが意味ありげに笑みを浮かべています。一方、女主人が手にする小さい四角形のものは手紙だといいます。二人の背後に掲げられた下の絵は、嵐の中を航海する船で、男女の間柄を暗示するといいますから、念の入ったことです。しかも楽器を手にしているということが「はかなさ」を示唆するならば、これから一揉めあって、破滅への道をたどるのかな、などと意地悪く想像してしまいましたm(__)m なお、この作品は下に紹介するウェブでも見られますが、やはりできることなら本物に接したいところです。
(URL: http://www.ccsf.caltech.edu/~roy/vermeer/ の Thumbnails of the Paintingsをクリックし、下から2段目の右から2番目をクリックすると、この作品が見られます。)

ほかにも目を引くものがたくさんありましたが、とりあえず2作品のみにとどめておきます。また、アムステルダム国立美術館もHPをもっていて、館蔵のコレクション1250点のヴァーチャル・カタログを用意しています。ただ、美術関係のサイトの宿命か、私には相当重く感じられます。オランダ語もありますが、英・独・仏・伊・西といった言語も用意されています。参考になさってみては、いかがでしょうか?
(URL: http://www.rijksmuseum.nl/


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