第18回 : TOHOKU/TOKYO 1925-1945 相克のモダニズム展(板橋区立美術館)

ふとしたきっかけで、この展覧会を知り出かけました。私が住んでいる練馬区と会場のある板橋区とは、隣り合った区なのですが、少しばかり足の便が悪く感じていましたので、今回が初めての訪問となりました。

会期は、2000年3月26日(日)まで。9:30〜17:00まで開館(入館は16:30まで)です。休館日は月曜日ですが、3月20日(月)は開館し、翌21日(火)が閉館となります。入場料は一般が500円です。

美術館に入ったら階段を2階へと上がりましょう。そこが展示会場です。
会場には東北が生んだ64人の作家の、106の作品が、ほぼ年代順に展示されています。油絵が多いのですが、版画や写真も含まれています。作品に描かれた対象はまちまちですけれど、大雑把に言って
1)東北の人物や風景を描いたもの
2)都市の人物や風景を描いたもの
に分かれます。これが静物画となると、そのどちらに属するのか、いや、そもそもそう問うことに意味があるか分からなくなりますので、こればかりは、あるがままに見ました。

年代順の展示によって作品を見ていくと、先ほどの1)とか2)が入り混じって出てくるわけですね。人物画や風景画でも、作品によっては、どちらなのか迷ってしまいます。
具象画もあれば、抽象絵画も隣り合わせで展示されていることがあります。1930年代も半ばを過ぎると、シュールレアリスティックな絵が多くなってきたように思います。こうして見ていくうちに、ふと思い出したことがあります。昨年秋に見た「芸大美術館名品展」(展覧会の絵 第13回 参照)で、戦前の東京美術学校ではシュールレアリズムが禁止され、この種の作品は望めなかったらしいです。東京美術学校=東京の美術というわけではありませんが、一方、東北でそうしたアカデミズムの縛りと関係なしに、まるでマックス・エルンストを思わせるような作品に出会えたのは新鮮な驚きでした。

また、昨年の夏に個展を見た常田健の作品『飲む男』(1939年)に再開できたのも嬉しかったです。1934年頃、常田のいとこである阿部合成との合作『海の群像』という一連の作品も見ましたが、こちらの主役は猟師です。この中の「鱈をかつぐ人々」なども印象に残りましたが、約5年後に描かれた『飲む男』のスケールの大きさは、やはり破格のものでした。

展示を見ただけでは分からないことも残りました。
ちらしの裏に展覧会の趣旨を書いた文章がありますが、昭和戦前期に作家が「東北モダニズム」のネットワークに参加していったというのです。具体的にどういうことだったのでしょうか?
モダニズムを大切にしようとする作家たちが会でも作ったのか、それとも雑誌のようなものでも出したのか? 少なくとも会場には、それらしき記録は展示されていませんでした。この辺の事情は、もう少し知りたいと思いましたが、これは展覧会を見るということとは別次元になるかもしれませんね。

さいごに、この展覧会を知ったきっかけをお話しておきたいと思います。
2月下旬に「常田健の蔵」というホームページがあることを知りました。実際に見てみると、作品を画像で紹介したコンテンツとならんで、画集や展覧会の紹介をしたページを見つけ「えっ、こういうのがあるの?」ということになった次第です。HPの存在を教えてくださったのは、岡田真由子様という方で、常田健さんのお孫さんの奥様です。ありがとうございました。
ゆっくりと充実していくHPのようです。皆さんも、一度ご覧になってみたらどうでしょうか?

常田健の蔵(http://www.tabikobo.com/medianetjapan/ken/index.html

【2000年3月13日記】


トップページへ
展覧会の絵へ
前のページへ
次のページへ