休日の山歩き 10 蕎麦粒山 Sobatsubuyama
[奥多摩] 蕎麦粒山(1473m) 東日原から往復
2009年1月11日(日)
蕎麦粒山と仙元峠 合成 トップページ
前ページ
次ページ

蕎麦粒山('09年)

蕎麦粒山('11年)
仙元峠(左)と蕎麦粒山(右)
巻き道が付いているのが白い線で見える。
都県境の尾根(棒杭尾根分岐より東)からこずえ越しに望む。

【奥多摩を縦走する、富士山を望む】
正月休みを通じて、関東平野は晴天の日が続き、自宅からも奥多摩の山々や富士山がくっきりと望めたが、山歩きに出かけることはなかった。成人の日を含む連休がチャンスだったが、その前の金曜日、東京は一日中雨が降り、山々では雪になっていることが想像された。
今回の山歩きのねらいは二つ。一つは東京・埼玉都県境の稜線を歩くこと、もう一つは奥多摩から富士山を見ること。若い頃に棒ノ折山に登ったとき、小沢峠から長い尾根歩きをしたが、この尾根が都県境で、右が埼玉、左が東京だと考えながら歩くと、何か愉快だった。今、そのことを思い出しながら、棒ノ折山から都県境の尾根を長沢背稜を経て雲取山まで縦走してみたいと思うようになった。その試しとして、前回鷹ノ巣山に登り、石尾根を歩いた。この時は富士山は望めなかった。
二つのねらいを満たす山として、東日原から一杯水を経て蕎麦粒山を目指すことにした。都県境の尾根をできるだけ長く歩くため、可能なら日向沢ノ峰を経由して鳩ノ巣駅方面に下山することも想定した。

【東日原から蕎麦粒山を目指す】
連休2日目の日曜日、午前5時過ぎ。まだ真っ暗だが西の空に満月があり、今日も晴天になると予想された。中央線が国分寺・立川間で工事をしていたが、西武線に回り拝島から青梅線に乗ることができ、奥多摩駅に7時17分に着いた。前回と同じ状況だが、今日はバスは日曜ダイヤで、7時25分発の東日原行きに乗り込んだ。乗客は登山姿の男性ばかり11人。川乗橋で1人降りた。10年前に川苔山に登った時の記憶がよみがえった。バスは日原川に沿って進み、他の人は終点の東日原まで行った。雪は道路脇に少し残っている程度。多くの人は日原街道を西の方に歩いていく。蕎麦粒山への入口を探していると、交番から私服の警官?が顔を出して教えてくれた。ガードレールのある道路に上がると、朝日が差してきた。ヒノキの標識に沿って登山道に入る。民家を過ぎ、杉林の中の急坂をジグザクに登り、次に右下に杉の植林、左上に落葉樹という尾根の右斜面を直進で登る。ヨコスズ尾根だ。積雪も増えてきて、靴が滑るようなので、早々とアイゼンを付けた。

東日原バス停 合成 東日原の登山口
東日原のバス停 登山道入口
日原の集落 杉林 ヨコスズ尾根
日原の集落。奥は日原川 杉林をジグザグに登る 尾根を直進する

【雪道を歩く】
雪山歩きは広島で何度か経験した。登山道が新雪で覆われると、ルートを探すのが大変難しくなるが、逆に先に歩いた人の靴跡があると、ルートもわかり歩き易い。今回、あまりポピュラーでない蕎麦粒山を目指すに当たり、雪が深いなどで進むのが困難になったらすぐ引き返そうと思っていた。また、山頂を過ぎて下山する際には、人が歩いてないルートは途中歩けない箇所があるかもしれないから、麓から登ってきた靴跡がある場合のみ下山に使い、それ以外の場合は登ってきた道を引き返すのがよいと考えた。
果たして、現実の登山ルートは、複数の靴跡がある中で、明瞭な登り方向の靴跡が付いている。雪が降ったのは昨日の朝までだろうが、今朝一番に歩いた人がいると思われる。

【ヨコスズ尾根を登る】
さて、杉の植林に沿って登り、やや傾斜が緩やかになると、やがて樹幹越しに、谷をはさんだ東側の展望が開けてきた。左上には尾根の上に空が見えているが、なかなか稜線に出ない。ついに、鋸の歯と歯の間のように薄く切れた鞍部で稜線に出て、初めて尾根の西側の展望が開けた。小さなコブを巻いて道が続き、やがて広い尾根筋の真ん中を通るようになった。雪は、大体くるぶしまで埋まる程度だが、膝上までの深い吹きだまりの所もあれば全く付いてなくて土がむき出しの所もあり、降雪時には相当の強風が吹き抜けたと思われた。幸い今日は風もほとんどなく日差しも暖かい。動物の足跡もある。日だまりの中で小休止し菓子パンを食べた。

ヨコスズ尾根の稜線に出る ヨコスズ尾根 一杯水避難小屋
ヨコスズ尾根の稜線に出る 尾根の上 一杯水避難小屋

【都県境の尾根へ】
尾根を登り詰めて、一杯水避難小屋(1453m?)に着いた。綺麗な建物で、中も清潔そうだ。ここから道は左の酉谷山と右の蕎麦粒山に分かれるが、靴跡はその両方に付いているようだ。右に緩やかな道を取ると、程なく一杯水の水場だが、雪に埋まって水の気配がない。やがて川俣方面への分岐という標識があった。ということは、東京・埼玉都県境の稜線に出たのだ。気がつくと、いつからか、こずえ越しではあるが、南の石尾根と思われる稜線の向こうに富士山がはっきりと見えている。今日の二つのねらいを果たした。
歩き易い道が続く。稜線の道とは言え、コブはみな南(東京)側を巻いている。急斜面に取り付き片側が切れ落ちている部分もあるから、滑落しないように慎重に歩く必要がある。細い鞍部を過ぎた次の小さいコブは、右に巻く道の外、コブの上にも動物の足跡のようなものが付いているので、軽い気持ちでコブの上を歩き、すぐに巻き道に合流すると思ったのになかなかそうならない。気がつくと右手遙か下に巻き道が見えるので、もはや無理と元の場所に戻り、約10分間の寄り道になった。ガスがかかりでもしていたら本当に道に迷ったかもしれない。間違った道に靴跡を付けてしまったので、拾った木の枝で止めておいた。
なお、東京側に分岐する棒杭尾根という標識があり、急坂が降りていて、靴跡もあったが、歩き通したのかどうか分からない。

一杯水 川俣方面への分岐 都県境尾根から望む富士山
一杯水(標識の左側) 川俣方面への分岐 石尾根(城山のあたり)の後ろの富士山
都県境尾根 都県境尾根 棒杭尾根への分岐
狭い尾根の上の道 右の登山道と左のコブの上の間違った道 棒杭尾根への分岐

【仙元峠と蕎麦粒山】
その先の仙元峠(1440m)は、峠とは言いながらピークのてっぺんにあり、祠があり、埼玉側に仙元尾根が分岐している。秩父市が平成20年10月に設置した真新しい説明板があった。
峠の急坂を降りるとすぐに蕎麦粒山への分岐となり、ここは靴跡は右の巻き道にはなく、登りにだけ付いている。この山は円錐形の良い形をしているだけに、最後の登りはきつく、約15分の登りで蕎麦粒山(1473m)頂上に着いた。12時20分、東日原から4時間20分と、雪道のせいで意外と時間がかかった。新雪の上に初めて靴跡を付けた人の苦労はどんなだったろうか。ここまで鹿2〜3頭の群れを見かけたほか登山者に会わなかった。狭い山頂には岩があり、眼下に防火帯の稜線と、その先に日向沢ノ峰や川苔山が見渡せ、左手に埼玉・東京西部方面と思われる平野が広がるほか、三方は木立に遮られている。靴跡の主はさらに東に向かったらしい。もはやこの時間から進むのは無理と考え、山頂でしばし過ごして東日原に帰ることにした。こずえ越しに雲取山や川苔山などが確認できる。富士山は雲に隠れたのか確認できなくなっていた。風もなく日差しが暖かく、山頂を独り占めできるささやかな贅沢だ。ガスコンロを持参したがライターが不調で点火できなかったので、ポットの湯で生温いコーヒーを作り、冷たい弁当を食べた。なお、標識によれば鳥屋戸(とやど)尾根が南へ分岐しているが、雪が深く靴跡もなかった。

仙元峠への分岐 仙元峠 仙元峠
仙元峠への分岐。右が巻き道 仙元峠。祠がある 仙元峠の説明板

蕎麦粒山への分岐 蕎麦粒山頂上 仙元峠から望む蕎麦粒山
蕎麦粒山への分岐。右が巻き道 蕎麦粒山頂上 仙元峠から望む蕎麦粒山
蕎麦粒山から望む秩父方面 蕎麦粒山から望む 蕎麦粒山から望む川苔山
蕎麦粒山頂上から望む埼玉・東京西部方面
右に日向沢ノ峰、中央奧に棒ノ折山あたり
急坂の下に防火帯の稜線が伸びる
左に日向沢ノ峰、中央右に川苔山
大岳山か(蕎麦粒山頂上から)

【東日原に下山】
蕎麦粒山から下山にかかるとすぐ、登ってくる男性に会った。私より1本後のバスで東日原から登って来られたようで、やはり時間がかかったとこぼした。男性と別れ、仙元峠は巻き、帰り道を急ぐ。左手を見ると、樹幹越しに、蕎麦粒山と仙元峠の峰が並び、巻き道が1本の白い横線になって付いているのが見える(このページ冒頭の写真)。一杯水避難小屋では、もはや三ツドッケに立ち寄ることもできず、下りの尾根に直行した。尾根道でアイゼンを外していると、早くも先ほどの男性が追いついてきた。共に帰りのバス時刻が気になり出し、小走りで坂を下った。稜線から下りて直進の道、次に杉林のジグザグ道になり、バスに間に合いそうなめどが立ったので、スピードを落とし汗を拭きながら歩いた。4時少し前にバス停に着き、程なく男性も着いた。最後はあわただしかったが、天気に恵まれ、樹間からではあるが展望もあり、静かな充実した山歩きだった。
16時17分のバスには登山者など数人が乗り込み、途中のバス停にも登山者がいた。奥多摩駅に着くと、中央線ホリデー快速に接続し、国分寺まで直通で帰った。

都県境尾根から望む鷹ノ巣山 蕎麦粒山から望む雲取山 仙元峠の巻き道
鷹ノ巣山(都県境の尾根から) 雲取山(蕎麦粒山頂上から) 仙元峠の巻き道
動物の足跡 動物の足跡
動物の足跡 (左)ヨコスズ尾根で (右)蕎麦粒山頂上で
【行程】地図
西武線⇒拝島(青梅線)6:05発⇒青梅6:35発⇒奥多摩7:17着=奥多摩駅(東日原行バス)7:25発⇒東日原7:46着

東日原バス停7:51→8:02登山道入口→9:30稜線に出る→10:37一杯水避難小屋10:47→10:52一杯水→11:49仙元峠分岐→11:57仙元峠12:00→12:05蕎麦粒山分岐→12:19蕎麦粒山頂上13:10→13:20蕎麦粒山分岐→13:21仙元峠東分岐・巻き道へ→13:27頃仙元峠西分岐→14:22一杯水→14:27一杯水避難小屋→15:07稜線から降りる→15:52登山道入口→15:55東日原バス停

(所要時間)登り約4時間25分、下り約2時間45分、山頂休憩50分含め約8時間
(標高差)東日原620m←→蕎麦粒山1473m=約±850m

東日原(奥多摩駅行バス)16:17発⇒奥多摩駅16:42着=奥多摩(中央線直通ホリデー快速)16:52発⇒国分寺18:01着⇒西武線
【参考資料】
山と高原地図「奥多摩」(1998年版)、関東の山歩き100選(昭文社1998年)、東京都の山(山と渓谷社2005年)

三頭山から蕎麦粒山を望む(09/1/25) 大持山付近から蕎麦粒山を望む(09/2/15)

2009/1/14整理 1/30追記、2/21修正、2011/1/15修正

トップページ 前ページ 次ページ
  直線上に配置