Preface/Monologue2023年 2月


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竹寺にて

ここまでのCover Photo:竹寺にて

1 Feb 2023

茨城県土浦市の板東札所二十六番清瀧寺へ。ついでに近くの"小町の里"から背後の稜線に上がって雪入山まで歩く。


清瀧寺へは近くまで行く公共交通機関がないので車で行くしかないかと思っていたが、JR常磐線土浦駅からバスで宝筺山入り口バス停に出れば一時間半ほどの歩きで着くとわかり、「よしでは」と朝一本しかないのに乗るべく利根川を渡る。

停留所からは近ごろ人気のあるらしい宝筺山には向かわず、その裾野を交通量の多い車道で巻いていくのだが、排気ガスに加えて途中の区間にある採石場やらコンクリ再生工場やらからの砂埃がかなりのもので、マスクなしでは肺を痛めそうな…。ひとには勧められない計画だなと思いつつ我慢して歩く。

採石場区域を後にし、冬枯れの田園地帯に入るとようやく空気も落ち着く。清瀧寺に向かう前に寄った"小町の里"近辺には駐車場に多数の車。中古車売り場の車列かと思ったそれは、小町山という山を登るために来た人々のものだった。宝筺山を上回る人気ではなかろうか。

"里"の売店のかたに伺うと、平日でも毎日大勢が来て(自分もそのうちの一人だけど)、土日などかなりの混雑らしい。なので周辺駐車場も増設しているのだとか。コースは小町山に向かうものと朝日峠というものに向かうものとがある。札所参拝後、雪入山に向かうため後者を辿ったがあまり人影を見なかった。小町山を周回するひとたちが多数らしい。小町山に登らずともほんの少し寄り道すれば小野小町の腰掛け岩とか小町の化身のおかめ岩とかがあって、「小町ゆかりの地」という気分にさせてくれる。

朝日峠とは展望のよい草山で、隣の宝筺山やその裏の筑波山、広い平野部の向こうには霞ヶ浦も望見できる。ここから稜線伝いの車道(フルーツラインというそうな)を辿ってパラボラ山(名の通りアンテナが立っているが、最高点はどこなのかよくわからない)から展望のよい剣ヶ峰に出て、雪入山を往復し"雪入ふれあいの里公園"に下りた。


本日は大部分が舗装道歩きだったものの、"小町の里"近くからは愉しく歩けた。春の陽気の一日で雪はどこにもなかった。ただ、300メートル台の山ではあったけれど、ここでも筑波山や加波山同様に稜線の一部では風が強かった。

6 Feb 2023

北鎌倉から六国見山に登り、天園ハイキングコースに入って獅子舞を下り、鶴岡八幡宮前を横切って源氏山に上がり、北鎌倉駅に戻る。獲得標高差は300メートル近くはいっただろうか、鎌倉とはいえど、少しは足慣らしになれば。

随分と久しぶりに訪ねた六国見山は、北鎌倉駅側にあった広い谷戸の畑がすっかり住宅地となっていて跡形無し。山頂も展望テラスまで造られて公園化され、そもそも低いとはいえ、まるで山を登った気がしない。ただ、天園ハイキングコースとの鞍部よりやや明月院寄りに下るルートは文字通り山道で、次回登るとしたらここを辿ろうと思えるものだった。

12 Feb 2023

連れと箱根へ。


二日前に降雪があったので積雪があるかもしれない高い山や凍ってるかもしれない旧街道の石畳道は避け、鷹巣山・浅間山のあたりを歩くことに。小涌谷駅から千条の滝を経て浅間山に登り、大平台に下る。このコースでは雪はなし。2時間ほどの行程。


昼過ぎ、小田原から乗ったバスから眺めた箱根湯本は盛況の人出だった。山中に向かうバス停にも人が多く、ここでバスを乗り継いで畑宿から登ろうとしていたのをやめてそのまま乗り続け、小涌谷で下りることにした。日曜午後にかかったせいか強羅方面に向かう車道は下りが混んでいて、大平台から長々と渋滞していた。

15年ぶりに再訪した千条(ちすじ)の滝は、落ち口を掘り下げられて周囲に岩組まで造られ、以前にはなかった池ができていた。見た目はよくなったものの都内の結婚式場のような雰囲気で、自然なものに思われたのが公園化されたようで違和感もあった。

冬枯れの山道を辿って浅間山山頂へ。さすがに山の中に入ると喧噪とは無縁。天候は下り坂で上空では雲が早回しで流れていくものの、連れも自分も気分は上々。前回訪問時同様にテーブルのあるベンチで休憩し、冷たい風を受けながら湯を沸かして熱いものをつくり、JR小田原駅改札脇で売っていた数量限定の美味しいあんパンを食べた。

18 Feb 2023

”北武蔵”とされる山稜へ。札所一番の北にある「高原牧場入り口」のバス停から粥仁田峠に上がり、愛宕山、皇鈴山(みすずさん)、登谷山(とやさん)に釜伏山(かまぶせやま)と辿って秩父鉄道野上駅に下る。


粥仁田峠への登路は二度目。二度目でも、高所にある牧草地から眺める秩父盆地と武甲山が素晴らしく、かつ静かな道のり。峠を目指すハイカーはみな小川町駅発バスを使うのだろう。稜線を乗り越えた先の大霧山登山口にはいつも人影がある。

車道が通る山稜だが愛宕山が立ち上がるところから皇鈴山を越えて登谷山の盛り上がりを下りきるところまでは山道を歩ける。粥仁田峠から愛宕山までもところどころ土の道を歩けるのだけれど、牧場の敷地が稜線を蚕食していて鉄条網で区切られまでしているので愛宕山を登り出すところまでは車道を歩いた方がよい。なお、「彩の国ふれあい牧場」なるものの入り口近くにあったトイレは使用禁止になっていた。あてにしていると大変なことになる。

小振りの天文台施設を載せる愛宕山からは雷電山らしきが遠望できるくらいで眺望は限られている。対照的に次の皇鈴山は広々とした山頂部で、西側の箕山方面はやや灌木が被り気味だが、東側の展望台に出てみると官ノ倉山を正面に北武蔵の山と平野部とが見渡せる。この山頂部へは車道が上がってきているので季節がよくなるとかなり賑やかになることと思える。皇鈴山から登り着く登谷山山頂部ではすぐさま寄居の街並みと周囲の山々が眼下に広がり、なかなか劇的な演出だった。

釜伏山直下にある釜山神社は信徒会館のような建物も大きく、しかも入り口には使われなくなって久しいとはいえ飲料水の販売用ケースもあって、かつては常時賑わっていたのではと思えるが、会館の室内と拝殿はともかく、他は手が回っていないという印象だった。境内には繰り返しオオカミの狛犬が現れる。武州はオオカミ信仰が広範にあるらしい。

神社の奥の院とされる釜伏山は名の通りに目立つ山容だが、現地解説版によると全山が蛇紋岩でできており、風化浸食に耐えて残ったのだという。蛇紋岩の山といえば早池峰山が思い起こされるが、成因がまったく同じなのだった。ここも蛇紋岩ならではの植生があるのだろうか。さすがにハヤチネウスユキソウはないだろうけど。


釜伏山からは塞ノ神峠を経て”関東ふれあいの道”を下った。いまだ微かな香りを漂わせるロウバイの木々や、高さ1メートル強の岩の断面に二度三度と褶曲の痕跡を見せる岩(菊水岩と名がついている)とかを眺めて寄り道していると思いのほか時間がかかり、長瀞周辺の人家があるあたりに出たのは日没ごろ(17:30)になってしまった。帰路途中の蓬莱島公園で休憩しているうちにすっかり夜になり、着いた野上駅には誰もいないまま列車が来た。

25 Feb 2023

両毛線栃木駅からバスで一時間強、山間にある板東三十三観音第十七番札所に詣で、さらに奥まったところにある静かな山域を巡る。


出流山満願寺は若いころに友人たちに連れられてきた寺で、拝観し千部ヶ岳遊歩道を周遊したのち、山内にある信徒会館に泊まったものだった。いまも会館は建っているものの宿泊は受け付けていない。お寺のかたに伺ったところ、東日本大震災で泊まれなくなってしまったとのことだった。残念。

見事な本堂と驚異の奥の院を拝観したのち、山腹を巡る舗装林道に上がってこれを山奥めざして辿る。台風のせいか地震のせいか、道路が中央から谷側に裂けかけて四駆でも通れそうにない状態の部分がある。歩く分には車が来なくて静かでよい。

高度を稼ぎ、寺が建つ谷間の源頭部を回り込んで千部ヶ岳稜線に乗ろうとすると未舗装林道が左に分岐する。これを詰めるとこのあたりの最高点らしき出流山(満願寺の山号と同名、655.8m)に達する。小振りの山名標識が立つ山頂は周囲が植林で眺め無し。静けさだけが取り柄だが、貴重な取り柄だ。舗装林道に戻って先に進み、千部ヶ岳山稜を乗っ越すあたりから稜線の山道に入る。千部ヶ岳はどこが山頂なのか分からなかったが、それくらい平坦で歩くには楽な稜線だった。

木の根は出ているもののよく踏まれたコースの左手、植林が切れた場所では冬枯れの枝越しにに雪のついた日光連山と高原山が望めた。最近よく歩いた筑波山近辺から眺めるよりは当然近く大きく、ここは栃木県なのだなと納得する眺めだった。


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