Preface/Monologue2023年 3月


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奥多摩・大岳山から御前山を望む

ここまでのCover Photo:奥多摩・大岳山から御前山を望む

1 Mar 2023

さすがに3月ともなると南関東は暖かくなる。
室内の暖房を点ける頻度が減ってくる。

かわりに花粉症の発症が増えてくる…。
植林の山に行っても出ないのに。なんでだろうと常々思う。

4 Mar 2023

青春18きっぷの春の使用期間到来。
待ってましたと板東三十三観音第十九番札所の大谷寺へ。


宇都宮駅からバスで30分で着く大谷は初の訪問。当地に近づくにつれて建材としての大谷石を使った建造物が目立つように。塀や門は当然のこと、全てが大谷石でできた蔵や倉庫が威容を誇る。

巨大な平和観音を見上げたのちに大谷寺の堂内に入ると何体もの磨崖仏が出迎えてくれる。摩耗していることでかえって時の重みが迫力を感じさせる千手観音像、参拝者にのしかかるように掘られた釈迦三尊像等、横目で見ながら通り過ごせることなどできない。

境内の奥には御止山という小高い丘があり、登ってみると枝越しに周囲の採石場跡地や自然にできたように見える大谷石の急崖が見渡せる。既視感があり、なにかと思えば湘南鷹取山だった。しかし規模は遙かに大きい。地下採石場の広大な空間が広がる大谷資料館を訪れるだけでそう感じる。

宇都宮からのバス通りを資料館の先まで歩くと、道路の左右に天を突いて佇立する岩塔群を目にする。弁慶の太刀割岩、兜岩、ラクダ岩など。妙義山の一部が平地に下りてきたかのような眺めで、名はついていないが民家の奥に今にも転げそうな岩が突きだしているのも見え、下に住んでいるかたは不安に思わないのだろうかと訝しみもする。


大谷地区から半時ほど足を延ばすと、低山の中腹に多気不動尊というお寺がある。こちらにも詣でてみるとちょうど護摩を焚いているところで、山中に読経と太鼓の音が響き渡り、堂内では天井を焦がすのではと思える炎が上がっていた。

寺が建つ山は多気山といい、377メートルの旧山城で、山道を30分ほどで登れるらしい。境内の高いところから直接とりつくこともできるようだが、御朱印をいただきたかったのでいったん下り、麓からの車道途中から入るコースに入った。緩やかにジグザグを切って登れる整備されたものだった。

危ないところなく登り着くのは城跡の一角で、関東平野側が切り開かれ、彼方の宇都宮市街地とさらに彼方の筑波山塊を望む大展望地。帰宅後に見た古いガイドによるとかつては木々が茂って眺望はなかったらしい。いまは広場となり、あずまやと”切り開き”記念碑が建っている。

最高点は再び森の中に入ってしばらくのところで、梢越しに二股山がよく目立つ。多気山のすぐ目の前には稜線が激しく上下する山があり、その上に日光連山が白い頭を出していた。稜線の激しい山は古賀志山だった。


多気不動尊に向かう前に、資料館の先にある普通の家のようなカフェに入った。「越路 さいかち庵」というその店では揚げたそばがきが売り物で、どんなものかと食べたら美味なこと。付け合わせで出された切り干し大根は優しい甘さでいくらでも食べられる。セットで食したお汁粉もお餅がやわらかくておかわりしたいくらいだった。次行く機会があれば甘酒も飲んでみたい(満腹になったので頼めなかった)。

11 Mar 2023

板東三十三観音第二十番札所の西明寺へ。その後、関東ふれあいの道”焼物としいの木のみち”を。


宇都宮線、水戸線、真岡鐵道を乗り継いで何十年ぶりかに益子に赴く。駅前から延びる通りは、あまりに時間が経ちすぎてなにが昔のままでなにが違うのかまったくわからない。ただ、駅近くにレンタサイクルがあることだけは同じだった。今回は山道を行く区間もあるので徒歩で行く。

市街地中心部に至るまでも陶器を並べる店はあり、古い造りの建物もいくつか目にした。いよいよ観光中心部というところで右方向に道を逸れ、家並みを抜けると田野の彼方に西明寺の建つ高舘山が見えてくる。

高さ273メートルの山を回り込むように車道を辿り、山頂近くに辿り着くのが目指すお寺だった。楼門前の石段に覆い被さるように茂る椎の木々が素晴らしい。石段を登れば500年前に建てられたその楼門や三重塔が見下ろしてくる。遙か昔は変速ギアのない自転車で坂道を登ることに挫折し途中で引き返した。あのとき来ていたらどう感じたことだろう。

寺は関東ふれあいの道が通るところでもあり、境内の裏から擬木階段で高舘山頂を経由して益子市街地北方に抜けていける。高舘山は山城で、眺めはなかったが曲輪や堀切など城跡地形が残っていて面白い。”ふれあいの道”を寺から行けば、この山は下りの山道が長く、危険がところがないのでよいハイキングとなる。

それは出た先の「益子の森」でも同じで、広い敷地を広い土の道で歩き回れる。展望塔に登ればいま登ってきた高舘山の全貌を間近にし、天気さえよければ北関東の山々をぐるっと展望できる。この日は5月なみの陽気で靄がかかり、遠い山はなにも見えなかった。


益子の森からの”ふれあいの道”は舗装道の区間を経て里山のなかを経巡るような道筋となる。街中はともかく山中の道標は完備していて、迷路のようなコースを愉しく歩けた。今回立ち寄らなかった市街中心部の観光と併せて再訪してもよいなと思うものだった。

14 Mar 2023

山中で、たまに町中で、子供らに目を見て「こんにちは!」と挨拶されると、世界が明るくなった気になる。

邪気を払ってくれるかのような。

17 Mar 2023

連れの実家に帰省中。

そのついでで、讃岐のこんぴらさん詣で。話に聞いていた階段道は、駅の階段のような段差が等しいもので、しかも延々と階段が続くわけではなく平坦路もあるのでそれほど疲れない。それは奥社に続く道筋も同じ。それでもJR琴平駅から本宮まで休憩込みで1時間、奥社まではさらに30分かかった。ちょっとした山登り。

大門を過ぎたところで店を広げる”五人百姓”の飴売り台が三人分しか出ていない。訊いてみると、いまはオフシーズンなので交代で休んでいるのだとか。そこそこ観光客はいるのだが、シーズン中となるとさらに大勢が来るのだろう。その飴、「加美代飴」は帰路に買った。柚子味の優しい飴。

20 Mar 2023

笠岡諸島の一つ、白石島の立石山に登り、異界を見せる寺に詣でる。

JR笠岡駅の一つしかない改札口から駅を回り込んで10分ほどで船着き場に出る。当初は別な島に行こうと思っていたのだが、なにも考えず駅で時間をかけたため乗ろうとしていた船がほぼ目の前で出港。一便しかない朝の船を逃すと次は昼過ぎ。ああまったく・・・

さすがにここまで来てなにもしないで帰るはないだろうと、観光案内所があるはずと駅前に戻る。案内所のかたはたいへん親切で、町中の見所と、島であれば白石島、この島でのハイキングと開龍寺訪問を勧めてくれる。とくにこのお寺は一見の価値があると。地元愛溢れる言葉に真実を感じ、ではとまずは町中を見て回り、たまたま見つけた昔ながらの喫茶店でモーニングセットの食事後、再び船着き場へ。

定員が20人かそこらの船で半時ほど、上陸した島の港は待合室と自動販売機が目に入るくらい。海岸線を回り込んで夏には海水浴場になるらしい浜から登り出すと、すぐに見晴らしが開け、高度を稼ぐにつれて視界はさらに広く。花崗岩の地質のためそこここに大きな岩が露出し、ものによってはボルダリングめいたこともできる。

最高点の立石山でも200メートルに満たない高さだが、いくつかのコブを越えていく見晴らしのよい花崗岩の稜線縦走は”海上アルプス”の評に恥じず、立石山本体への登りは滑落すると無事では済まないザレ場の斜面で、行程を通して標高だけでは侮れないところだった。終始展望がよく、山頂でもそこに至るまでと同様、いずれも低いながら形佳い山をもたげる周囲の山々、好天に輝く瀬戸内の海を眺め渡せられた。

下山は開龍寺を目指す。下る道を間違えて縦走してきた稜線の山腹を延々と上り下りする羽目に。だからか最近歩かれた形跡がない。辿り着いた寺は裏から入る格好となり、いきなり見るべきものの第一、平たい巨岩が屋根を覆って突き出す大師堂の前に出る。何を見ているのかすぐには納得できない光景。大岩がお堂を呑み込もうとしているのか、逆にお堂が岩の間からせりだそうとしているのか…。山を下って異界に出会ったの感あり。


笠岡諸島は観光地としては市販ガイドにも載っていないようで、平日とはいえ飛び石連休の合間にもかかわらず観光客っぽい姿は見受けられなかった。「しま山100選」の一つに選ばれている立石山は歩いて愉しく、島全体として穴場と言ってよい場所だった。

24 Mar 2023

広島に足を延ばし、初めて平和記念公園を訪れる。

なので原爆ドームもこの目で実物を見るのは初めて。崩壊の様もだが、黒くすすけた焼け跡がとくに理解を拒む。なにせ焼いたのがただの火ではない。その火がいまも多くの人の体内で燃え続け、その子供らにまで心身の苦痛を与え続けている。

記念公園は資料館を含め、見るところが多く、3時間近くも滞在した。遊歩道の脇に多数あるベンチのひとつに腰をかけていると、外国の言葉ばかりが聞こえてくる。じつにここは、いわゆる”ダークツーリズム”ではあるが、国際的な観光地なのだと実感する。原爆死没者慰霊碑の前では若い海外からのかたが合掌していた。世界中のひとの多くが同じ思いでいるならばと思えることしきり。

広島城を見て回り、まだ時間があったので縮景園へ。大名庭園が起源の日本庭園は香川県の栗林公園同様に一歩一景の眺望が展開し、足を止める機会が多いのでさほど広くないのに見て回るのに時間がかかる。ここもまた海外からの観光客に好評なようで、かなりの人が丹念に園内の散策路を辿っていた。

25 Mar 2023

宮島巡り。

広島にとった宿からJRで宮島に渡るフェリー乗り場の近く移動する。移動方法は他に、路面電車でも、広島市内の川岸から出る観光船でも行けるようで、さすが大観光地と思わせる。船上から朱塗りの鳥居が近づくのを見つめつつ10分で渡る先には、土曜だからか午前中から大勢の観光客。当然ながらここにも海外からの客は少なくないが、どちらかというと日本人比率が多い。海辺沿いに厳島神社に近寄るにつれて海に浮かぶ鳥居にスマホのカメラを向ける人の数が増えていく。

朱塗りの社殿は中に入って瀬戸内の海を眺めるように歩くとじつに開放的かつ軽快。昨日が曇天でこの日も天気予報では同じだったのに意外なことに晴れて青空が広がったからだろう。屋台は出ていないもののまるで縁日のような雰囲気を醸し出す古社は厳かさよりも心浮き立つ気分を感じさせる場所だった。

神社のすぐ脇にある日本三弁天の大願寺に詣でた後、宮島最高峰の弥山に登る。ロープウェイを使えば下りた先から30分で頂上だが歩いて登る。もみじ谷コースというのを登り、大聖院コースというのを下ったが、基本的に舗装された道筋を行くもので、ところどころに階段がある。この階段は金比羅さんでのように整然としたものではなくて傾いていたり段差に違いがあったりなのでなかなか歩きにくい。とはいえ弥山は標高は低いもののじつは急峻な山なので、この整備されたルート以外を歩こうとするとたいへんなことになる。遭難者も出ているらしい(そもそも保護された地域なので歩けないし、ヤブが濃すぎて無理、ルート外での下りは想定外の崖もあるので相当に危険)。ところで山を歩いて上り下りするひとはおよそ半数が海外からの人だったように思える。普段着の人もいたが、みな異国情緒を満喫したくてしかたないのかもしれない。

下山先の大聖院は中国三十三観音その他の札所でもあり、山中に種々の堂宇が立ち並ぶ大きめなお寺だった。弥山を下っている最中、麓からギターのライブ演奏が響いてきたが、この寺で行われていた野外ライブのものだった。このお寺でも海外からの観光客が目立ち、宮島は世界的な観光地なのだなと思えた。

27 Mar 2023

和気アルプス。和気富士から登り、最高点の神ノ上山に寄って白岩経由で和気中学校脇に下る。

低山の連なりとは思えない彫りの深さと豪壮さ。稜線部だけならミニチュア鳳凰三山と呼べるかも。先日の笠岡・白石島の立石山も宮島弥山の頂上部も、今回は登ってないがよく訪れる児島半島の貝殻山への中尾根も、みな花崗岩。なので奇岩と展望地が多い。和気アルプスはさらに落ち込む斜面の傾斜と岩壁の多さが優れている。兵庫県にある須磨アルプスというのも同じだろうか、近いうちに訪れてみたいところ。

下山後、和気神社にも詣でる。下山地から和気駅とは逆方向に田畑を左右に見る里道を歩き、参拝後の帰路、同じ道を歩いていると、農作業帰りらしいかたから「これから登るの?」と問われる。下りてきて神社に詣でてきてこれから駅に帰ると答えると、車を使わず徒歩で通していることに驚かれていた。ここも当然ながら、山にしても何にしても車使用が前提。

28 Mar 2023

児島半島の付け根部分に散在する玉比咩神社、木華佐久耶比咩神社、日本第一熊野神社を車で巡る。

境内に突き出る巨岩、背後に高まる里山、木々に囲まれた境内に整然と並ぶ拝殿など、おのおの見所のある神社で、桜の時期の華やかさがありながら人影も少なく、心穏やかになる小旅行だった。


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