Columbia Masterworks Recordings

Columbia Recordings
Side 1, 2, 3, 4

<Table of Contents>

・LISZT'S GREATEST HITS
・Levant Plays Gershwin

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LISZT'S GREATEST HITS
 米CBS Records/CBS Masterworks MLK-39450(CD (C)1984/(P)1958,1963,1970,1971)
 Liszt
  Mephisto Waltz(rec1958), Etude No.3(Piano:Andre Watts), Hungarian Rhapsody no.2(rec1958)
  Libestraum(Arr:Victor Herbert,rec1968),Hungarian Fantasia for Piano & Orchestra(Piano:Ivan Davis,rec1968)
  Les Preludes(Bernstein/New York Philharmonic)
  
  Eugene Ormandy / The Philadelphia Orchestra

 以前、YouTubeのIVAN DAVISとORMANDY & Philadelphia によるFRANZ LISZT "Hungarian Phantasy"(Philadelphia 1961)の興味深い映像についてご紹介しましたが、この顔合わせによる同曲のレコード録音を運良く入手しました。

 IVAN DAVIS自身のディスコグラフィにこのCDの紹介があり、駄目もとで色々探したら、amazon.com の market place にこのCDが1枚出品されていました。早速オーダーしてみたのですが、あいにく日本への発送はダメということで買えませんでした・・・が、出品者に「このCD買いたいから、日本まで発送してくれんかね?」とメールで頼んだら「ええよ」と直ぐ返事が来たので早速オーダーしました。「船便で送ったからそっちに着くのは11月頃だわ」と発送の連絡が来たので、じゃあ気長に待つか・・・と思ってたら数日前にポストに着いてました。サンキュー!

 1984年発売のこのCD、Sonyに買収される前のCBS Masterworksレーベルです。ホルンと(たぶん)ヴァイオリンとフルートを組み合わせた特徴のあるロゴが記憶に残っています。日本のCBS/SONYでは使われなかったかな?

 
 "CBS RECORDS MASTERWORKS" LOGO

このCDではジュエルケース裏面とCDにモノクロでこのロゴが小さく印刷されているだけです。過去の録音の再発売(アナログ録音のCD化等)はこんな感じのデザインが多いようです。

 ちなみにこのCD、過去のLPアルバムの再発のようで、

This material was previously released on M30306.

と断っております。LPのコンピレーション盤・・・というところですか。ジャケットデザインもLPの転用でしょうが、右上に"20"と番号が振られており、恐らくタイトルの"GREATEST HITS"シリーズだったのかもしれません。作曲者毎にアルバム作ってたんですかねえ、このシリーズ。右下のCDロゴに書かれた、

DIGITALLY MASTERED ANALOG RECORDING

も時代を感じさせますねえ。ちなみにブックレット裏には、

Digitally remixed by Laura Harth with John Johnson,Engineer.
This recording has been digitally transferred onto Compact Disc to obtain
the best possible reproduction from newly remixed original session tapes.

とあり、「オリジナルのセッションテープから新たにミックスダウンしました」と謳っているのですね。確かにその甲斐あって、非常に良い音質に仕上がっています。

 さてこのCD、IVAN DAVIS自身のディスコグラフィにもamazon.comのオーダー画面にも曲目のデータが無く、"Hungarian Phantasy"以外の収録曲は?でしたが、まあそれは来てのお楽しみ・・・ということであまり考えもせずオーダーしたわけですが、結果は「思わぬ拾い物」になりました。ワッツが弾く練習曲3番(ラ・カンパネッラですな)とバーンスタイン/ニューヨーク・フィルによる「前奏曲」以外はマエストロ・ジーンの演奏でした。しかも、「愛の夢」(ヴィクター=ヘルベルトのアレンジ)は初めて聴く音源です。

 最初の「メフィスト・ワルツ」から、飛び出してくる鮮烈な弦の音に圧倒されます。このCD化当時のミックスダウンと編集は過度なノイズリダクションをかけておらず、ハイカットフィルターも量子化に伴う折り返し雑音防止用の最低限のものしか入れてないのでしょう。ローカットも特にしてないようで、超低域ノイズも残っており、セッションの雰囲気が良く伝わってきます。最近、過去のアナログ録音をCD化したものは過度のノイズ除去のお蔭で酷い音になっているのが少なくないのですが、CD当初のこういう素直な編集、原点ともいえる姿勢を取り戻して欲しいものですね。

 閑話休題、ワッツの「ラ・カンパネッラ」はクライマックスでミスがあるものの、これもなかなかの好演。ハンガリー狂詩曲の2番はエッセンシャルで出ているものですが(メフィスト・・・もそうですがね)、こうして改めて聴き直してみると、フィラデルフィアのスカっとした音を再認識出来て気持ちよくなりますな。ストコフスキーの壮絶演奏で初めてこの曲を知った耳には物足りない部分も有るのですが、さりげなく目立たないようで、良く聴くと凄いことになっている・・・というヤツですわ。

 「愛の夢」はヴィクター=ヘルベルトのアレンジが如何にも「昔のハリウッド映画調」で、鳴り響くフィラデルフィア・サウンドとの相乗効果により、リスト版「法悦の詩」といった少々苦笑モノの仕上がりになっています。なんて面白いんだ、これは!

 さて、お目当てのハンガリー幻想曲ですが、YouTubeで見られるこの突っ走った演奏とは趣が異なり、着実で落ち着いた演奏という仕上がりになってます。レコーディングですから安全運転になったのでしょうか。1961年の映像と1968年の録音ですから、時期の違いも大きいかもしれません。その分、オーケストラとピアノは雄弁さを増しており、これは聴き物ですよ。

 さて、最後の「前奏曲」ですが、マエストロ・ジーンはステレオ録音を残さなかったので、残念ながら(ファンの人、すいません)レニーとNYOの演奏が入っています。残念ながら、(当時の)フィラデルフィアとニューヨークの実力差が残酷なくらい分かってしまう比較となっています。悪い演奏では無いと思いますが、フィラデルフィアの鮮烈な演奏の後では今一つ・・・ですな。

 レニーとジーン、両マエストロが Columbia Records と契約を結んでいた当時、話題性ではレニーだがレコードの売り上げではジーンの方がはるかに上であったという。山崎浩太郎氏はレコ芸2002年12月号「連載 20世紀の不滅の大指揮者たち−16 ユージン・オーマンディ」にて、このことについて興味深い考察をしている。上手く要約できないので興味のある方は図書館でその記事を読んで頂くとして、私の見解はそれとは異なる。もっと単純明解に、「両者のレコードの出来の差」が売り上げの多寡を左右したのだろう・・・と。ここで、両マエストロや双方のオケの上下を評価する気もないし、どちらが良いかは個人の好みや嗜好によるところも大きいからあまり意味がない。

 ただ、自宅でレコードを聴く・・・ということであれば、やはりアンサンブルが整った綺麗な演奏で聴きたい・・・というのが人情だと思う。私の少ないレニー/ニューヨークフィルのレコード体験では、オーマンディ/フィラデルフィアのレコードに較べてアンサンブルが雑・・・という印象だ。そのあたりが両者のレコード売り上げの差の要因の一つ・・・だと思うが如何であろうか?(2008.9.20)



Levant Plays Gershwin
 Columbia CL700(LP)
 Gershwin: 1.Rhapsody in Blue, 2.An American in Paris, 3.Concerto in F
 
 Oscar Levant(p)
 Eugene Ormandy/The Philadlephia Orchestra(1)
 Andre Kostelanetz/The Philharmonic-Symphony Orchestra of New York(2,3)

 オーマンディ・ファンには申しわけないけど、このアルバムの主役は オスカー=レヴァント と Mr.Music, Kosty おじさんこと アンドレ=コステラネッツ なのである。

 

 Kosty おじさん が指揮している The Philharmonic-Symphony Orchestra of New York は NYP の変名であろう。恐らく他のレーベルに独占契約を結んでいる為、その他レーベル用のレコーディング変名の一つだろう。エヴェレスト・レーベルにも変名で録音していたと思う。

 オスカー=レヴァント は今で言うマルチ・タレント(これも死語かなあ)で、俳優、ピアニスト と色々な顔をもっており、フィラデルフィアンにもなじみが深い人であったと思う。(100周年本に、ホロヴィッツとレヴァントが二人でポーズをとっている写真がある)。MGM映画 "An American in Paris" では ジーン=ケリー(この人も Eugene なのだ)と一緒に「売れないピアニストで万年天才青年」という役で出演、「ヘ調の協奏曲」でその妙技を披露している。この演奏は必見というか必聴というか、これだけ取り出してレコードにしてもいいくらいの出来。ちなみに、このLPのRhapsody と Concerto は CD化されている。まだ入手できると思うけど、興味のある方は探すと良いだろう。

 CBS MK 42514 Levant Plays Gershwin(CD)
 
 肝心の演奏なんだけど、Rhapsody の方は始めのクラリネットの音を聴いて「ピッチが高い?」とオヤっと思った。回転数は合ってる。聴き続けるうちに気にならなくなったが、これはマエストロ好みの高めのチューニングのせいであろうか?(それともピアノのチューニング?)こういう曲では、我らがマエストロよりもコスティおじさんの方がノリの良い演奏をしてくれる。協奏曲の最初のティンパニからしてノリが違う。まあ、これは仕方ないかな・・・という気もするが・・・。レヴァントのピアノは少々荒っぽいというか、細いところは気にせずこちらもノリの良さでそのまま弾ききってしまう・・・という感じで、これは曲調にマッチしている。

 さて、このLP、Rhapsody と An American の面は音が潰れて戴けない。重い針圧の消耗した針で何回もかけたような感じで傷みが激しい。ま、中古だし仕方ないか。もう片面の協奏曲はまあまあ。レーベルはポップス番号CLの赤い Walking 6 eyes 盤。

  CL700 Walkng 6 eyes Label
 
 当時のLPには、レコードをかける針についての注意書き(というより警告)があって、これはなかなか面白い。

  

 どうやらこの「永久針」と言うヤツはSP時代からあるらしく、「永久に使えます」という誇大広告はLP時代でも後を絶たなかったらしい。「”永久針”はLPに取り返しのつかないキズを付けてしまいます」と、コロムビア・レコードは自社のLPに警告を出している。ま、コロムビア自身、レコードプレーヤー・カートリッジを販売していたから、ちゃっかりその下に自社のCMをさりげなく打っているのが微笑ましい。

 ちなみにこの当時、レコード針は、「ダイヤモンド」「サファイヤ」「オスミウム」の3種類が主流だったみたい。

  

 「ダイヤモンド」「サファイヤ」針は僕にもなじみ深いが、「オスミウム」は知らなかった。「一番安いが15時間程度しか持たないから頻繁に取り替えるように」と書いてある。お勧めは「ダイヤモンド」で、「最も良い針で、高価だが千時間は持つので、ランニングを考えればこれが一番安い」とある。

 それにしても、当時のコロムビアのジャケットはお色気ムンムンで大変宜しい。

 

本当の主役はジャケットのこの女性・・・かな。(2008.8.30)


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