Columbia Masterworks Recordings - 1

<Table of Contents>

・清々しい ormandy/philadelphia の Bruckner
・Bach : Easter Oratorio
・Concerto for the Left Hand
・精神的なしがらみを超越したベートーベン
・圧倒的な迫力でかき鳴らされるブラームスの交響曲
・ステレオ創世記に録音されたブラームスの1番交響曲
・ラフマニノフの白鳥の詩「交響的舞曲」とオッフェンバックの「パリの喜び」
・レスピーギの最美曲「教会のステンドグラス」
・Ormandy/Philadelphia の一つの頂点、1959年の超絶名演「ダフニスとクロエ」
・万年天才少年(?) Levant のピアノでガーシュウィンを
・雄大な音絵巻"GRAND CANYON"をスケールの大きい Ormandy/Philadelphia の演奏でどうぞ。


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清々しい ormandy/philadelphia の Bruckner
  米Sony Classical SBK 47653 (C)1991 (P)1973
    Bruckner : Symphony no.4 "Romantic" (recorded 1967)
  米Sony Classical SBK 48160 (C)1992 (P)1967
    Bruckner : Symphony no.5 (recorded 1965)  
    
  素朴なブルックナーと派手(?)なオーマンディ/フィラデルフィアは、お互い水と油のようなイメージが一般的にはあるかもしれません。しかし、この演奏はそのような先入観をもって聴くと思いっきりはずされます。「Bruckner Fan Homepage」のCD情報(投稿編)にて、Inoueさんがオーマンディの「ブル4」を「・・この演奏の魅力は健康的な明るさにあると思います。ノリが良くパワフルながらも大変に美しいとても趣味の良い・・・」と評価されていましたが、「ブル5」ともども同じことが言えると思います。
  「ロマンティック」は Mason Jones のホルン(冒頭のヴィブラートは思わずのけ反りましたが・・・)が素晴らしく、そしてフィナーレは重たくならず「あっさり」といって良いほどスッキリと終わります。結構胃もたれする高カロリー演奏が多いなかでユニークな演奏です。
  一方の「ブル5」の聴き所は弦でしょう。特に2楽章のアダージョのしなやかで美しく音楽が流れていく様はなんとも言えません。私の「ブル5」いちばん好きな演奏は、ヨッフム/コンセルトヘボウの晩年のライブとコンビチュニー/ライプチッヒゲヴァントハウス管等のどちらかというといかつい感じのするものなのですが、健康的で清涼感あふれるオーマンディ/フィラデルフィアの演奏もまた格別な魅力があります。どちらも千円前後で買えるお買い得盤で、録音も大変聴きやすいので、お試しあれ。(2001.11.2)



Bach : Easter Oratorio
  米Sony Classical SBK 60261 (C)1998
   Bach : Easter Oratorio BWV249 (recorded 1963)
   Judith Raskin(s), Maureen Forrester(contralto), Richard Lewis(T), Herbert Beattie(b)
   John de Lancie (solo oboe), Murray Panitz(solo flute), Louis Rosenblatt(solo English Horn)
   The Temple University Concert Choir directed by Robert Page
   Eugene Ormandy and The Philadelphia Orchestra 
  
  Magnificant in D major (Bernstein/New York Philharmonic)

  ormandy/philadelphia の Bach の他の大曲(Mass in B, St. John's Passion)はCD化されていないので、これは結構貴重な1枚かも知れない。この復活祭のオラトリオは40分弱の(バッハとしては)比較的短い曲で、そう肩肘張らずに気楽に聴けると思う。(ただ、これが全曲かどうかは分からない。)現在の流行とは異なる現代オーケストラによる演奏であり、バロックファンからは歯牙にもかけられないかも知れないが、これはこれでピリオド楽器とは違う良さがあり、philadelphia の弦楽セクションが生み出す豊かで大河のような悠然たる演奏はピリオド楽器では不可能だと思う。Lancie, Rosenblatt, Panitz のソロは流石にうまく、ついつい聞き惚れてしまう。惜しいのはヴォーカルソロと合唱で、どうやら水準というところか?少々音程が甘いのは残念。(2001.10.16)


Concerto for the Left Hand
  Ravel:Concerto for Left Hand for Paul Wittgenstein (recorded 1960),
  Mozart:Concerto for two pianos, K.365(recorded 1960, also available on Sony Classical SM3K46519(3CD) )
  米Columbia MS 6274(ML 5674)
   

  ラヴェルの「左手のための協奏曲」は、陰鬱・退廃・グロテスク・ジャズ・軽妙さ等々様々な要素が複合された言わば「大人の音楽」だと思う。数あるピアノ協奏曲の中で個人的な好みとしては最上位を争う曲だ。ormandy/philadelphiaの見事なサポートはこの曲が持つ雰囲気を良く醸し出しいる。カップリングがモーツアルトの2台のピアノの為の協奏曲というのはいまいち意図が解らないけどこちらも見事な演奏。一応両曲ともCD化されたけど、残念ながら現在は入手困難。(2001.9.12)



精神的なしがらみを超越したベートーベン
  Sony Classical
    日SRCR 1502  symphony no.3 (P)1961,(C)1995
    米SB2K 63266 symphonies nos.5-8 (2 CDs)
    米SB2K 63240 symphony no.9,etc.. (P)(C)1997 (2 CDs)
  米Columbia D7L345(mono)/D7S745(stereo) (7 LPs)
    Complete Symphonies
        
    Symphony no.1 (1965) (LP)    ,  Symphony no.2 (1962) (LP)
    Symphony no.3 (1961) (LP/CD) ,  Symphony no.4 (1965) (LP)
    Symphony no.5 (1966) (LP/CD) ,  Symphony no.6 (1966) (LP/CD)
    Symphony no.7 (1964) (LP/CD) ,  Symphony no.8 (1961) (LP/CD)
    Symphony no.9 (1962) (LP/CD)
     Mormon Tabernacle Choir(R.P.Condie)
     L.Ameria(S), L.Chookasian(MS), J.Alexander(T), J.Macurdy(B)

  Ormandy のベートーベンというとこれまで「外道」扱いされてきた感じがある。もともと日本の音楽教育が明治維新と同時にドイツから輸入された経緯もあり、「アメリカの指揮者とオーケストラの独逸音楽?」という偏見が今でもあると思う。私が所属していた吹奏楽部でも、音名を AB(アー、べー)などど言っていたのはその名残ではないだろうかと今になって思う。(当時は格好良いと思っていた)
  でも、Ormandy/philadelphia のベートーベンを聴くとそんなことはどうでも良いように思える。そんなしがらみを越えた音楽的に美しいベートーベンに野暮な能書きはいらない。特に7番・8番は希有の名演と言えるのではないだろうか。迫力ある7番は良く聴くけど、「美しい」と感じられる7番―特筆すべきは4楽章の天国的な美しさ―は他では聴けないと思う。正に「神の舞踏」。未CD化の1,2,4番も早いとこお願いしますよ、ソニーさん。(2001.8.28追記・修正)
  


圧倒的な迫力でかき鳴らされるブラームス交響曲全集
 ●LP:米Columbia D3M31636 The Fabulous Philadelphia Sound Series (P)(C)1972 (3 LPs, Gray Label,Complete Symphonies)
 ●CD:米Sony Classical SB2K63287 (P)1972,1980,1997 / (C)1997 (2 CDs, Symphony no.1 & no.2)
 ●CD:EMI Classics(IMG Artists) GREAT CONDUCTORS OF THE 20TH CENTURY Series
   7243 5 75127 2 5 (UK:CZS5751272) (P)2002 (2CDs, Symphony No.4 )
    
  Eugene Ormandy/The Philadelphia Orchestra
   Symphony no.1 (1968) (LP/CD) , Symphony no.2 (1966) (LP/CD)
   Symphony no.3 (1967) (LP)    , Symphony no.4 (1967) (LP/CD)
   Variations on a Theme by Haydn (1963) (CD) , Variations on a Theme by Handel(1960) (CD) 
   "Academic" Overture (1966) (CD) ,  "Tragic" Overture (Stokowski/NPO 1977) (CD)

  最初のOrmandy体験がCBS/SONY「音の饗宴1300」シリーズのブラームス1番。この、トスカニーニによる楽譜改訂を踏襲したド迫力演奏が私の判断基準となってしまい、他のどの1番の演奏を聴いても何かもの足りない・・・その秘密が、トスカニーニの楽譜改訂とオーマンディ独自の改訂に多くを負っていると知ったのはずっと後のことですが・・・。

 Ormandy/Philadelphia のステレオ録音によるブラームス交響曲全集は1966-1968の3年間に録音され、3枚組セットとして発売されています。最初のリリースでは分売されていたかどうかはよく分かりません。というのも、これまで分売のLPを見たことがないからです。ebayのオークションでもBOXSetは時折出品されていますが・・・

 この一連の録音は"The Fabulous Philadelphia Sound Series"と銘打たれたもので、当時の最新技術であったマルチマイクと半導体素子で組み上げられたコンソール、そして4トラックレコーダーによる多チャンネル録音を売りにしていました・・・。しかし残念ながら、この当時の録音は高音が荒れていたり低音不足だったりと不自然さが目立ちまし、残響も不自然に多い印象もあり、その成果には?なところがありますが・・・

 現在、CDで入手できるのは3番を除く3曲。1番と2番はSMEの2枚組廉価盤として、4番はEMIとIMG Artistsの共同による GREAT CONDUCTORS OF THE 20TH CENTURY Series の1枚としてCD化されました。3番も実に素晴らしい演奏なのでCD化を期待したいところですが。LPの音質は、やはり高音が荒れており低音不足ですが、CD化でそのあたりはかなり改善され聴きやすい音になっています。有り難いことに、Ormandy/Philadlephia 関係のCD復刻は、過度のノイズ除去や奇々怪々の音質操作を施されていることが殆ど無く、LPより良い音質で聴けることが多いので助かります。

 1番・3番・4番は文句無しに素晴らしいと思います。堂々とした風格に溢れたスケールの大きな演奏で、トスカニーニ及びオーマンディ独自の改訂もそれに大きく寄与しています。こんな演奏を生で聴かされたら恐らく腰が抜けてしまうであろう・・・と想像してしまいます。まったく、当時のphiladelphiansが羨ましい。

 ただ、2番は個人的に今一つと思っています。どうも推進力に欠けると言うか・・・他の番号の演奏と比較するとちょっと見劣り(いや、聴き劣りか)する印象があります。2番はMuti/Philadelphiaの方が好きですね。

 一度、他の管弦楽曲も含めて「ブラームス交響曲全集」としてまとめてCD化してもらいたいと思います。Ormandy/Philadelphia のブラームスを待ち望んでいる人は少なくないと思うんですがね・・・。(2005.7.16)



ステレオ創世記に録音されたブラームスの1番交響曲
 ●LP:米Columbia Masterworks MS6067(6eyes Label)
   Brahms:Symphony no.1(1959)
  
  Eugene Ormandy/The Philadelphia Orchestra

 1960年代後半の一連のステレオ録音とは別に、交響曲第1番だけが1959年のステレオ録音として遺されています。Columbia Records ステレオ録音最初期の一つですが、音質そのものは後のステレオ録音より良いくらいです。コロンビアはLP開発メーカーでもありますが、ステレオ録音への移行はRCAに大きく遅れます。(RCAは1955年からのステレオ録音を開始)

 音のバランスも良く演奏も悪くありませんが、残念ながら1968年録音とは比較の対象になりません。特にスケールの大きさという点では・・・それ程、後年の録音が異常ともいえるほどの素晴らしい出来だということになるでしょう・・・。CBS/SONY「音の饗宴1300」シリーズで音質の問題はあっても1968年録音を採用したのは妥当だったと思います。熱心なOrmandy/Philadelpha ファンでない限り、この音源を探す必要は無いでしょう。

 ちなみに、この盤は4年ほど前にポメリーさんに譲っていただいたものです。プロモーション用のホワイト六つ目ラベルという、ちょっと珍しいものかもしれません。ようやくここにDisc Reviewとして取り上げることが出来ました。ちょっとネガティブな評価になってしまいましたが、1959年の貴重なステレオ録音ですし、1968年と比較しなければやはり素晴らしい演奏だと思います。興味のある方は探してみては如何でしょうか?(2005.7.16)



ラフマニノフの白鳥の詩「交響的舞曲」とオッフェンバックの「パリの喜び」
  米Sony Classical SBK48279 (P)(C)1992
     Smetana  : Three Dances from "The Bartered Bride" (*1963) ,  Rachmaninov : Symphonic Dances (1960)
     Offenbach : Gaite Parisienne (1963) , * George Szell and  Cleveland Orchestra 
  
  1960年になるまで、ormandy が「交響的舞曲」を録音しなかった理由はよく分からない。でも、この見事な演奏の前にそんなことはどうでも良い。しかし、この演奏を初めて聴いたときはもの足りなかった。 Ashkenazy/ACO の感情むき出しの演奏の印象が強く残っていて、それと比較すると印象が薄かった。
  ormandy は意図的に華やかさを押さえている。しかし、聴けば聴くほど曲と演奏の見事さに圧倒される。情報量が多く、一回聴いただけでは何の変哲もない演奏に思えるかも知れないけど。「Rachmaninov よりこの曲を捧げられた初演者」ということを抜きにしても、この曲のベスト演奏と思う。
  オッフェンバックの「パリの喜び」は、ormandy/philadelphia の機能美がフルに発揮された快演だ。完璧なアンサンブルの上で音楽が伸びやかに息づいている。(2001.8.19)

  
レスピーギの最美曲「教会のステンドグラス」
  米Sony Classical SBK60311 (P)1972(C)1998
    Repighi : Gli uccelli (1966) , Vetrate di Chiesa (1964) , Scarlatti-Tommasini : La donne di buon umore (*1963)
    * Louis Lane and Cleveland Orchestra  
  
 「美しい音楽とは?」と問われたら、私はレスピーギの「教会のステンドグラス」と答えたい。レスピーギというとどうしても「ローマ三部作」というイメージばかりが擦り込まれているのは残念だ。もちろん、「ローマ三部作」は素晴らしい曲だし、少なくともレスピーギの代表作の一つと考えても良いだろう。
  しかし、妻エルザ(音楽家・作曲家でもあった)の働きかけより往古の音楽(教会旋法・中世作品)に開眼し、これと近代管弦楽法(レスピーギはR=コルサコフの弟子)を融合させた彼の音楽は、イタリアの古典絵画が新しい衣を纏って現れたような錯覚にすら聴く人を陥らせる。「教会のステンドグラス」は、1921年に書かれた「ピアノ独奏の為の3つの前奏曲」(「エジプトへの脱出」・「大天使聖ミカエル」・「聖クララの朝の祈り」)に「偉大なる聖グレゴリオ」を加えて1926年に3管編成の管弦楽曲に仕立て上げられた曲で、翌年にクーセヴィツキーとボストン響にて初演されている。
  この曲は、オーケストラと指揮者にガラス細工のような繊細極まる色彩に加えて、音量的パワーを要求する非常に演奏が困難な作品であり、これはといった演奏は多くない。ormandy/philadelphia のこの演奏の水準は高く、この曲の名演の一つに数えても良いと思う。廉価盤であり、多くの人にお勧め出来る盤だ。(2001.8.13)


Ormandy/Philadelphia の一つの頂点、1959年の超絶名演「ダフニスとクロエ」
  米CBS ODYSSEY MBK46274 (C)1990 All Ravel Program
   Bolero (1960 or 1968) ,Alborada del gracioso (1959), Pavane pour une infante defunte (1963)
   La Valse (1963) , Daphinis et Chloe Suite no.2 (1959), Rapsodie espagnole (1963)
  
  評判の高いこの演奏を聴くために馴れない中学生レベルの英語を駆使してようやくオークションにて入手したものです。一聴して苦労が報われたと同時に、「40年前にこのような完璧な演奏が存在したこと」が信じられなかった。現在でもこの演奏レベルの実現は不可能だと思う。この「ダフニス」は、合唱が無い分余計に ormandy/philadelphia の物凄さを実感できる。何もかも桁違いに優れている。最初のKincade の見事なフルートから始まり、洪水のような弦のうねりが次から次へと現れ、その音を捕らえたColumbiaの録音技術も当時の最高水準に達していたと思われる。
  他の曲も名演揃いで、特に La Valse などはポルタメントを多用した弦の艶やかさが何ともいえない雰囲気を出している。IchikawaさんによるとRCAの同曲の録音も名演とのことだが残念ながらこちらはCD化されていない。(RCAステレオ録音の La Valse は Tower Records RCA Precious Selection 1000シリーズのTWCL-3012として商用CDリリースされました。)の 2006年3月に「ダフニス・・」と「逝ける女王の為の・・」のこの演奏は現在CDで発売されていないが、ぜひ再発売して欲しい。その価値は十二分にあると思う。(2001.8.27 及 2008.6.15追記)


万年天才少年(?) Levant のピアノでガーシュウィンを
  米CBS MK 42514 Levant Plays Gershwin (C)1987 recorded 1944-1949
   Rhapsody in Blue, Second Rhapsody for Piano and Orchestra* ,Concerto in F**, I got Rhythm "Variations"*
   Preludes for Piano, * Morton Gould and His Orchestra, ** Kostelanets and NYO
  
   "An American in Paris"で芽の出ない天才ピアニストを演じるだけでは無く、夢で「ヘ調の協奏曲」を全部自分の分身で演奏(指揮者・ピアニスト・オーケストラ・聴衆まで・・・)するシーンを可笑しくやっていたOscar Levant. 彼がピアニストであることは知っていたが、レコーディングまでしているとは知らなかった。でも、映画の中の演奏は見事だった。あまりに見事だったので、他の演奏を聴いても欲求不満になること著しく全くもって困った。そんな彼の Gershwin の演奏を集大成した CD がこれ。ormandy/philadelphia は Rhapsodyin Blueのみの伴奏。
  ちなみに、Geroge Gershwin の本名は Jacob Gershvin でロシア系ユダヤ人。あの洒落た歌はロシアの歌かも知れない。
"White Christmas" の Irving Berlin も本名は Israel Baline でロシア系ユダヤ人。"Rawhide","Gunfight at the O.K. Corral","High noon" の Dimitri Tiomkin も 本名 Dmitri Temkin とこれまたロシア移民。あの ウェスタン の見事な旋律はコサックに着想を得た彼の旋律だったとは・・・・。才能あるロシア移民がアメリカを代表するメロディメーカーだったというのは実に面白い。(2001.8.13)



雄大な音絵巻"GRAND CANYON"をスケールの大きい Ormandy/Philadelphia の演奏でどうぞ。
   米Sony Classical SBK62402 (P)1969(C)1996
    Gershwin : An American in Paris (1967) ,  A Symphonic Picture of Porgy and Bess(Arr:R.R.Bennet) (1967)
    Ferde Grofe : Grand Canyon Suite(1967)
    
  音楽の授業で、この曲と「不幸な」出会いをしている人が多いのではないだろうか。確か、「山道をゆく」を小学校か中学校の音楽の授業で聴かされた記憶がある。この「音楽の授業」でクラシックが嫌いになった人が多いのではないだろうか?聴いた後で「感想文」を書かせるから余計厭になるのだ。最近、「ビートルズ」が音楽に授業に組み込まれた、と聞いているので「ビートルズ嫌い」な人が将来増えてしまうのではないかと「余計な」心配をしている。
  ヨタ話はこの辺で棚上げして本題に入りましょう。この曲、本当に泣かせるメロディーが一杯詰まっています。Sunrise,
Painted Desert, On the Trail, Sunset, Cloudburst の5曲全部をちゃんと聴いている人は意外と少ないのでは? どの曲も、何か人を懐かしい気分にさせる雄大で温かいメロディーに満ちており、グローフェが偉大なメロディーメーカーであることを確信させる。とりわけ、叙情的なクライマックスと言える Sunset は胸にぐっとこみ上げるものがあり、食わず嫌いの人には本当に「もったいない」と同情してしまいます。スコアが無いので楽器編成規模は分かりませんが、4管編成のオーケストラでの生演奏で一度聴いてみたいもんです。Ormandy/Philadelphia だったら失神するほど興奮すること請け合いなのですが・・・・
  日本のオーケストラはこういった名曲をバンバンやらないと人が入らないと思うのですが、如何でしょうか?パンフレットを見ても近寄りがたい雰囲気のコンサートプログラムが多く、こういう誰でも楽しめる曲のコンサートが本当に少ない。たまにやっていても、「親と子の・・・」と言うのが多く、「独身男性(女性)」が堂々と行けるのが無いじゃないか〜。Svetlanov/NHK SO がやったような、オールロシアものとかいうのをやって欲しいですね。 "All Leroy Anderson Program" とかの大胆なコンサート、誰かやってくれないかな・・・・
  ちなみに、Ferde Grofe はアメリカ流に改名した名前であり、本名は Ferdinand Rudolph von Grofe で、ドイツ系の貴族を思わせる名前です。といっても、生まれも育ちもアメリカ(生まれは New York)で、少年の時に音楽の道に進むために家出をしたりと色々と苦労もしているようです。「アメリカ横断!ウルトラクイズ」の "Mississippi Suite" も彼の曲で "Grand Canyon" には及びませんが雄大な雰囲気のある曲です。
  肝心の演奏ですが、文句のつけようがありません。これだけ雄大で歌心に溢れた演奏を他に求めることは出来ません。Sunset での Lancie の泣かせるOboe Soloがたまりません。騙されたと思って、家族に文句の言われない程度の大音響で聴きましょう。騙されても千円前後の廉価盤です。"Mississippi Suite"もNaxosよりお買い得盤が出ているので(Naxos 8.559007)こっちもどうぞ。(2001.8.18)

  「パリのアメリカ人」「ポーギーとベスから交響的印象」も同様の秀逸な演奏。特に後者は舞台の情景が目に浮かぶようなアレンジと演奏が出色の出来。最初この曲を聴いたときはそれほどの印象は無かったのですが、New York Harlem Theatre の舞台を観てから、このオペラの素晴らしさとこの演奏の素晴らしさをようやく理解した次第。(2004.9.14)


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