Columbia Masterworks Recordings - 4

<Table of Contents>

・Complete piano music of Maurice Ravel by Robert Casadesus
・Gershwin's and Ravel's Piano Concerts
・The Original Jacket Collection
・TWILIGHT CONCERT NO.2
・Stravinsky:Suites from "The Firebird" & "Petroushka"
・Haydn: Wind Concertos
・美演!「タイースの瞑想曲」
・Rachmaninoff:Symphonic Dances
  -Dedicated to Eugene Ormandy and The Philadelphia Orchestra.
・Tchikovsky:Symphony no.7(reconstructed by Semyon Bogatyreyev)
・Tchikovsky:Piano Concertos no.2 & 3


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Complete piano music of Maurice Ravel by Robert Casadesus.
 Sony Classical Masterworks Heritage MH2K 63316 ((C)(P)1998, 2CD)
 仏Sony Classical  −a legend of the piano SERIES− 5033892 ((P)2001, 2CD)
 Ravel:Piano Works(recorded 1948 & 1952) , Piano Concerto for Left Hand for Paul Wittgenstein (recorded 1947)

  
 left:MH2K 63316, right:5033892

 Robert Casadesus
 Eugene Ormandy/The Philadelphia Orchestra

 前回取り上げたラヴェル「左手のための協奏曲」の1947年の古い録音の復刻CDがこちら。弊録されているラヴェルのピアノ作品集の録音もモノラル期なので、協奏曲もその当時の録音に合わせた?ということだろうか・・・

 私の手持ちは Masterworks Heritage の方。Masterworks Heritage は当初紙のダブルジャケット仕様だったが、コストが嵩んだ為か、後にジュエルケース仕様に変わった。私が持っているのもそのジュエルケース仕様。ただ、ブックレットは紙ジャケットとほぼ同じようだ。

 協奏曲はフィラデルフィアのアカデミーにて収録。この曲とピアノ曲1曲のみ、プロデューサーは Charles O'Conellが担当。(あれ、この人RCAのプロデューサーだったはずだけど・・・)その他のピアノ曲は Howard H. Scott のプロデュースとなっているが、一部の曲は "not documented on available sources." とあり、この当時の録音となると記録が残っていないこともあるようだ。

 1947年の録音なので78rpmワックス録音かと思っていたが、細部まで非常にクリアに録れているので磁気テープ録音なのだろう。バランスの良い録音で、音のよい客席で聴いているような感じがする。ピアノもオケもオンではなく距離をおいた鳴り方で、この当時は複雑怪奇なオンマイクアレンジはしていなかったのだろうと思う。補助マイクは使っていると思うが、それを感じさせないのはプロデューサーとエンジニアのセンスの良さであろう。デッド気味で音響の美しいアカデミーのアコースティックを上手く捕らえた録音だと思う。

 カサドッシュのピアノも1960年のステレオ録音より若々しい。ステレオ録音の貫禄をとるか、1947年モノラルの若々しさをとるかは聴く側の好みだろう。オーケストラはステレオ録音の方が雄弁だけど、モノラルのオーマンディのキビキビした指揮ぶりも捨て難い。ファンなら2種類とも持っていたい音源だ。

 ヘッドホンで聴くとテープヒスの変化や音のドロップアウトに気づくが、普通にスピーカーで聴く分には申し分無い。耳障りなノイズを除去しつつ、過度なノイズ除去で音の生気を失うことを避けるというのは難しいことで、特に古い録音の最近のCD化では上手くいっていないことが多い。これはプロディーサーとエンジニアのセンスが物を言う世界で、労多くして報われない類の「仕事」だけど、ここがきちんと為されているCDは聴く人にとっての福音となる。機器が進歩した現在の復刻より、CDが出た当初の復刻の方が良い(必ずしも全てがそうではないが・・・)というのは皮肉な話ではある。オーマンディとフィラデルフィアの録音に関しては、Sony Classical, RCA Red Seal(BMG Japan)の復刻とも上手くいっている方でファンとしては嬉しいことではある。

 Sony Classical の Masterworks Heritage は作りがしっかりしていて、カサドッシュ夫妻・ロベールとオーマンディの写真、カサドッシュの来る70歳の誕生日に宛てたオーマンディからのお祝いの書簡(フィラデルフィア管弦楽団からの公式レター)の写真、当時のLPジャケット等が掲載されている。

 
 Original LP design(from  MH2K 63316 inner booklet)

 また、当時のLPレーベルデザインもCDレーベルに可能な限り取り入れているのも嬉しい。

  
 left:CD Label, right:LP Label

こういうのは見ていて楽しいし、趣味の商品として所有したいと愛好家に思わせるものだと思う。残念ながら Masterworks Heritage はコストが嵩む為か、2000年に入ってからリリースが激減してしまい、最近は完全に休止してしまったようである。中古で見掛けたら入手しておいて損は無いと思う。(2008.8.25,8.26追記)



Gershwin's and Ravel's Piano Concertos
 Sony Classical Essential Classics SBK46338 (CD, (C)1990,(P)1972)
  1.Gershwin:Piano Concerto in F (recorded 1967)
  2.Ravel:Piano Concerto in G (recorded 1964)
 米Columbia MS 6274(LP), CBS/SONY 50DC 941-2 (CD, (C)(P)1987)
  3.Ravel:Piano Concerto for Left Hand for Paul Wittgenstein (recorded 1960)

      
 left to right:SBK46338, MS6274(Jacket & Label),  50DC 941-2

 Philippe Entremont(1,2), Robert Casadesus(3)
 Eugene Ormandy/The Philadelphia Orchestra

 ガーシュインは1898年生まれの1937年没、ラヴェルは1875年生まれの1937年没、生まれは23年も違うけど没年は同じ。二人とも没年が同じ(しかも不慮の死)というのは因縁めいたものを感じる。

 この3曲はジャズという共通因子はあるものの、それぞれ個性的で非常に面白いピアノ協奏曲だ。ポピュラーの作曲家がクラシック音楽に挑む(?)と堅苦しくて面白くないことが多いように思える。このガーシュインの協奏曲もそういう面が無きにしもあらず(特に1楽章)だが、2楽章・3楽章に入ると本分発揮(?)で面白くなる。

 アントルモンのピアノは大人しいというか、もっとハメを外してもいいんじゃないか?という堅実な弾き方をしているが、オーケストラが雄弁なのでちょうどいいバランスかな?ただ、一番新しい録音なのに、音は今一つ。オーケストラの音は弦が荒れる。RCA Red Seal 移籍前時期の録音で、マルチマイクの弊害が出ているような感じがするのが惜しい。

 ラヴェルのト調の協奏曲、これは落ち着いた録音で安心して聴ける。ガーシュインではノリが今一つのアントルモンもこちらではツボにはまっていて過不足無くピアノを奏でている。伴奏は見事の一言で申し分無い。

   
  Entremont & Ormandy, Entermont (from CBS/SONY SOCL1115, LP)

 左手の協奏曲、これは特筆に値する名演。カサドッシュとオーマンディ/フィラデルフィアががっぷり4つに組む・・・といった堂々たる演奏で、3曲のなかで最も古い録音だが皮肉にも音はこれが一番良い。ピアノはオン気味で、オーケストラの音は力感があり、この曲が持つ華麗さとグロテスクが奇妙に混じり合ったさまをじっくり堪能できる。

 残念ながらこの演奏、1987年に日本でCD化されているが、それっきり再発されていない。カサドッシュとオーマンディによるこの曲の1947年モノラル録音は Masterworks Heritage Series(MH2K 63316)及び 仏Sony Classical 5033892 Robert Casadesus , the complete piano music of Maurice Ravel でCD化されているの。しかし、ステレオで音も演奏も良いこの録音が未だCD再発されていないのは不可解かつ勿体ない。

 このステレオ録音はこれまで6eye LP盤で聴いていた。音そのものはしっかりしているがノイズが多く、ノイズのないCDで聴きたかった。最近ようやくオークションでこのステレオ録音CDを入手、透明な音でセッションの雰囲気をも見事に再現しているこのCDは文字どおり福音と言える。サン=サーンスのピアノ協奏曲4番、ダンディ「フランス山人の歌による交響曲」、フランク「交響変奏曲」も併録されているので、中古屋かオークションで見掛けたら入手しておいて損はないが、やはりちゃんとした再発を希望するや切なものがある。(2008.8.22)



The Original Jacket Collection

  2008年6月〜7月にかけてリリースされた限定盤です。10枚組のボックスセットで、ステレオ録音時代のLPオリジナルジャケットを再現したというのが売りのシリーズです。ただ何故かThe Original Jacket Collection のサイトにこのCDの紹介はありません。

 

 Respighi: Pines, Fountains & Festivals of Rome
 Mussorgsky: Pictures at an Exhibition
 Rimsky-Korsakov: Scheherazade
 Rachmaninoff: Symphony No.2, Vocalise
 Tchaikvosky: Symphony No.5, Serenade for Strings
 Bartok: Concerto for Orchestra; Miraculous Mandarin; 2 Pictures for Orchestra(Brusilow)
 Mendelssohn: Violin Concerto(Stern)
 Tchaikvosky:Violin Concerto(Stern)
 Shostakovich: Symphony No.1 & Cello Concerto (Rostropovich)

 J.S.Bach: Orchestral Transcriptions(9曲)
  Toccata and Fugue in D minor, BWV 565 by Johann Sebastian Bach
  Minuet in G major, BWV Anh. 114
  Musette in D major, BWV Anhung 126
  March in D major, BWV Anhung 122 by Johann Sebastian Bach
  Herz und Mund und Tat und Leben, BWV 147
   Jesu bleibet meine Freude "Jesu, joy of man's desiring" by Johann Sebastian Bach
  Fugue in G minor, BWV 578 "Little G minor"
  Passacaglia and Fugue in C minor, BWV 582
  Suite for Orchestra no 3 in D major, BWV 1068: Air
  Toccata, Adagio and Fugue in C major, BWV 564 by Johann Sebastian Bach

 J.C. Bach : Overtures
 W.F. Bach : Sinfonia
 Mascagni : Cavalleria Rusticana: Intermezzo
 Barber : Adagio for Strings
 Sibelius : Valse Triste(Kuolema)
 Grieg : Nocturne(Lyric Suite) ; Last Spring(Elegic Melodies)
 MacDowell : Woodland Sketches, Op. 51: no 1, To a Wild Rose
 Vaughan Williams : Fantasia on a theme by Thomas Tallis & Fantasia on Greensleeves

 表裏表紙を含めて68Pの冊子が付いてます。Richard Freedによる4Pの序文"THE BOSS"(英語・ドイツ語・フランス語だから計12P)と、あとはアルバム毎に写真を含めて5〜6Pの簡単な解説が付いています。Richard Freed は RCA Red Seal のアルバム(オーマンディとフィラデルフィアのLPですが)に解説を良く書いていた方だと思います。

 序文には特に目新しい記載はありません。アルバムの解説もLPの解説の抜粋程度の簡単な解説です。ブックレットにちりばめられた写真が、多少目新しいかなあ・・・という程度。(夫婦の写真のクレジット、グレーテル夫人が前の奥さんのステファニー=ゴールドナーになっているのは悲しい・・・ちゃんとチェックして欲しいなあ・・・)

 
 maestro at backstage?

 オリジナルジャケットは裏表LPの複写。状態の良いオリジナルLPを探すのは大変なのでしょう。ラフマニノフのLPの裏の写真などは擦れた跡がついてますが、まあこれは仕方がないでしょう。

 CDラベルデザインは、6eyes でも 2eyes でもない、CBS COLUMBIA が2eyesの後、LP最後まで使っていた Gray Label(ラベル周りのCOLUMBIA と eye マークを並べたデザイン)で、これもオリジナル復刻としては物足りない。Masterworks Heritage はそこまで忠実に復刻してましたから残念なことです。

  
 left:The Original Jacket Collection CD Label(CBS Columbia Gray Label Design), right:Columbia Original LP Gray label

  
 left:Columbia Original LP 6Eyes, right:Columbia Original LP 2Eyes

 細かいことを言うと、レスピーギのローマ三部作アルバム、First Stereo LP MS6001(これはCOLUMBIAのクラシックの最初のステレオLP番号だと思いますが)ではなく、その後再発した MS6587(個人的にはこれは初めて見たアルバムなので、へ〜?と思いましたが)です。最初のアルバムは「泉」「松」のみ収録ですが、後発のアルバムMS6587は"Respighi's Roman Trilogy for the first time on one LP."というのが売りで、このコレクションにはそちらを採用したということなのでしょう。ブックレットにMS6001の写真もあるし、これはなかなか面白い。

 バッハの作品を集めた2枚組アルバムも初期のMS番号ではなく、後に編集してまとめたMG30072 "The Bach Album" 、これは 編集物の special price アルバム で、出来れば初出LPを採用して欲しいものですが、これはこれでジャケットデザインに時代性を感じることが出来ます・・・が、「オリジナル」という観点では?と言わざるを得ませんね・・・10枚目の"The Romantic Philadelphia Strings"も編集・再発のアルバムと思われるので、これも「オリジナル」かなあ?

 
 The Bach Album & The Romantic Philadelphia Strings

 といっても、オーマンディ/フィラデルフィアの「バッハ」と「弦」を楽しむにはうまいまとめ方だなあと思ったのも事実。(「タイースの瞑想」が入っていないのが惜しまれますが・・・)

 Masterworks Heritage 等の見事な復刻アルバムに比べると細部の作り込みが足りないと思いますが、今はあれだけのアルバムが作れる時代では無いということでしょうか・・・とはいえ、コアなファン向きとは言えませんが、普通のクラシック音楽愛好者にとっては、このコンビの美質を不足無く楽しめるよう上手くまとめたボックスだと思いますよ。

 最後に肝心の音について。これまでのCD(Essential等)と同じマスタリングの音源を採用しているようです。マスターテープの音を過度にノイズ除去せず素直にディジタル化したもので、下手にリマスタリングして音を台なしにする例が多いのでこれは有り難いことです。(2008.8.12)




TWILIGHT CONCERT NO.2
 蘭PHILIPS Favourites Series S 04643 L (LP-mono)
  Weber:"Der Freischutz" Overture, Saint-Saens:Introduction and Rond capricioso, Chabrier:Espana Rhapsody
  Bach:Air on the G string, Tchaikovsky:Waltz from "The Sleeping Beauty", Suppe:"Poet ant Peasant" Overture
  Liszt:Hungarian Rhapsody no.1
 
  Zino Francescatti(violin)
  Eugene Ormandy & The Philadelphia Orchestra

 オーマンディとフィラデルフィア管の蘭PHILIPS盤です。当時(1950-1960年代?)、蘭Philipsと米Columbiaは原盤提携をしていたようで、お互いの録音をお互いのレーベルでかなり出していたようです。米Columbiaは蘭Philips原盤をEPICレーベルで出していたようですが、その辺りの詳しい事情は知りません。

 で、何故この盤を取り上げるかというと、ジャケットのカバー写真が美しいからなのです。最近のCDジャケットデザインとは月とスッポン。この蘭フィリップスのFavourites Seriesを知ったのは、季刊アナログvol.15(音元出版)の江夏俊太郎氏の記事がきっかけです。氏の連載記事「方形の宇宙(クラシック編)」−「カバーガールの功罪」で、この蘭フィリップスのFavourites Seriesを取り上げていたのです。

 それによると、このシリーズはLP発売間もない1956年に蘭フィリップスが企画したもので、それまでレギュラー価格でリリースしてきた録音の中から有名曲をピックップしビギナー向けの(恐らく)廉価盤アルバムとして出したものだそうな。で、装丁に、当時売れっ子の実力写真家 Paul Huf 氏に新規デザインを委ね、その結果この麗しいアルバムが世に出たとのこと。全部で52種類。カバーガール(?)は英国の Ann Pickford嬢。

 んでもってこのシリーズ、セールスは好調で結構結構なのだけど、一部評論家の顰蹙を買ったそうな。ま、どこの国でも余計なお世話のクラシック評論家や愛好家がいるんでしょうな。「カバーガールを使って購買意欲をそそるとは何や!」「楽曲とモデルの間になんの関係もないやん」等々・・・

 季刊アナログvol.15の「カバーガールの功罪」では、このシリーズの内、氏のコレクションである21枚が掲載されているが、惚れ惚れするような写真とデザインで、確かに氏ならずとも全52枚コンプリートコレクションを目指したくなるではないか。

 なお、このLPは最近とある中古レコード屋(といっても中古オーディオがメインのお店で、その2階が中古レコード売り場になっているが)で見掛けたモノ。割高だし録音は知っているものばかりだけど、麗しいジャケット(ペラジャケだけど、ビニルコーティングされて光沢がありマス)に一目惚れ、割高値段にも関わらず即決購入してしまいました。(男って馬鹿ねえ・・・)

 さて、肝心の音ですが、正直あまり冴えません。録音(というかカッティングとプレスかな)のせいかな?米Columbiaより落ちるという印象。またこの盤、見た目はまあまあですが、溝がゴミだらけで、トレースする度に盤面にゴミの山を築いてくれます。ノイズは少ないので、なんか静電防止の為にスプレー等の薬剤でも使ったのかなあ・・・。まあ、あと数回トレースしてゴミを吐き出せば出なくなると思うけど・・・

 

 これはレコードラベルとジャケット裏の写真。ラベル下の"Minigroove 331/3"  の文字が時代を感じさせますなあ。ジャケット裏面は我らがマエストロの写真がチラリ、そしてこのシリーズの紹介がジャケット下に。



 なお、このシリーズについて紹介しているサイト(Easy on the Eye のPaul Huf Album )にこの麗しいジャケットの数枚を見ることが出来ますので、宜しかったらどうぞ。(2008.3.26)




Stravinsky:Suites from "The Firebird" & "Petroushka"
CBS/Columbia Masterworks M31632((C)(P)1972,StereoLP Gray Label)
"The Fabulous Philadelphia Sound Series"
 Stravinsky
  Suite from "The Fire Bird"(1919 Version?, rec. 1967)
  Suite from "Petroushka"(Original 1911 Orchestration Version, rec. March 23,1964)
  "Petroushka" Originally released as Columbia MS6746(LP)
  ※"Petroushka" also available on CD as Sony Classical Essential Classics SBK 47664
  
 Eugene Ormandy & The Philadelphia Orchestra.

 1964年録音の「ペトルーシュカ」はCD化(SBK 47664)されていますが、1967年録音の「火の鳥」は残念ながらCD化されておりません。「ペトルーシュカ」のCDには「火の鳥」が組み合わされていますが、演奏はセル&クリーヴランド管弦楽団です。(これはこれで良い演奏ですが、やはりファンとしてはオーマンディとフィラデルフィアの演奏を組み合わせて欲しかった・・・)

 私が持っているLPは、既にMS6746で発売された「ペトルーシュカ」とRCA移籍前の駆け込み録音と思われる「火の鳥」を組み合わせて1972年に発売されたものでしょう。「火の鳥」は恐らくこのLPが初出と思います。

 この「火の鳥」が未だにCD化されないのは惜しいことです。1973年RCA録音を上回るブラスの迫力と緊張感溢れる好演だから・・・。"The Fabulous Philadelphia Sound Series"として発売されたLPで、マルチマイクによる近接録音のせいか、音は高域が荒れ気味で、特に内周は内周歪みも加わり歪みが目立ちます。Essential Classics盤のリマスタリングは大抵上手くいってるので、この録音がその恩恵を受けられないのは残念なことです。「ペトルーシュカ」も同傾向ですが、こちらはCD化によりクリアな音質で素晴らしい演奏を楽しめます。

 この「ペトルーシュカ」組曲版とありますが、通常演奏される1947年版(3管編成)ではなく、1911年初版(4管編成)の抜粋版です。LPの解説は下記の通り。

   In 1946, the composer rescored Petroushka for a smaller Orchestra, with radically altered instrumentation.
  The suite performed here by Eugene Ormandy and the Philadelphia Orchestra is made up of excerpts from original 1911 orchestration.
  It includes the complete first and second scenes, the Dance of the Ballerina, the Waltz and the Quarrel of the third scene.
  The last scene is represented by its opening music, the dances and The Maskers episode. 
  - from Columbia M31362 LP Notes.

録音当時は、初版の演奏というのが「売り」になったのでしょうか?どちらの版が良いかは聴いて判断するしかありませんが・・・。「火の鳥」は特に版の記載がありませんが、恐らく1919年版をベースに、部分的に全曲版を採用したり独自の改訂をしたり・・・というところかと思いますが。(2008.1.7)




Haydn: Wind Concertos
 米Sony Claasical Essential Classics SBK62649(C)(P)1996
 Haydn:Trumpet Concerto(*1), Sinfonia Concertante(*2), etc
 
 *1:Gilbert Johnson(Tp)
 *2:John de Lancie(Ob),Bernard Gaefield(Bassoon),Jacob Krachmalnick(Vn),Lorne Munroe(Vc)
 Eugene Ormandy/The Philadelphia Orchestra
 
 なんと、ハイドンのトランペット協奏曲はこのCDが初リリースとなるもの。録音に難があったか(ちょっとトランペットの音にビビリが・・・録音時のクリップ?マイクのセッティング加減か?・・・といっても大したことはないのでご安心を)適当なカップリング曲が無くて塩漬けにされていたのだろうか?今は市場から姿を消しつつあるSMEのEssential Classicsだが、米Columbiaに遺されたこのコンビの良質なステレオ録音を結構良い音質で埋もれた音源も含めて大量にCD化してくれた功績は大きい。

 さてこの演奏、名フィルで聴いたこじんまりした快速演奏とは正反対の落ち着いた重厚な演奏。オーケストラは分厚いphiladelphia sound で Johnson のソロをサポートする。実にゆったりした演奏で、恐らく今流行のスタイルとは相容れないだろうが、それが逆に貴重でもある。皆が皆「右向け右」ではつまらない。そろそろこういう「重厚な演奏」が復活して欲しいと思うのは私だけでは無いと思うが。協湊交響曲も良い曲だし演奏も素晴らしい。これまで「ハイドン」というだけで敬遠していたが、これからは色々聴いてみるかな。なお、このCDはオーボエ協奏曲とフルート協奏曲も併録されているがそれはPhiladelphia以外の演奏なので悪しからず。(2007.4.23記)




美演!「タイースの瞑想曲」

 正確には、「歌劇「タイース」から瞑想曲」 というんでしょうが、面倒なので「タイースの瞑想曲」と書かれています。退廃的な生活を送っていたタイースが神の道(尼寺へ行くのだろうか?)に入ろうとする心境の変化を描いたと言われる「間奏曲」だからおかしくはないでしょう。ちなみ、私はこの歌劇を観ておりません。

 この曲には、オーマンディとフィラデルフィアによる秀逸な演奏があります。1966年のコロムビア録音で、phladelphia orchestra の素晴らしい弦セクションを堪能することが出来ます。 Brusilow のソロも見事ですが、バックの弦セクションの厚みがなんとも・・・美しすぎる・・・・・。「オーマンディ・サウンド、それはなんと言っても、途方もなく大きな、美しい弦の音なのです。」とJay David Saks氏が語ったその片鱗を垣間聴く(?)のに外せない必須アイテムなんですが、残念ながらこれまでCD化されたという情報は聞いたことがありません。

 さて、オーマンディファンが長い間CD化を期待していたこの曲ですが、残念ながら期待外れの形で2月にCD化されました。

 "Love Story" Sony Music Direct DYCC-1091(3CDs) がそれです。どうやら韓国映画(勿論、Love Story関係でしょうな)で使われたクラシック音楽をSony Classical の音源を使って3枚組みのCDとして纏めたものです。Sony Music Direct が発売元で、オンライン(Sony Music Shop)による直接販売品ですが、タワーでも扱っており、タワーのオンラインで購入も出来ます。それにしても、CD化されないよりはマシですが、もうちょっとなんとかきちっとした形でリリースされないかなあ・・・と思いますが。

 で、肝心の音ですが、残念ながらNG。曲が始まるとテープ・ヒスノイズが一瞬聞こえますが、すぐさまふっと消え、明らかに音質調整していることが分かってしまいます。ノイズ・リダクションを効かせすぎてヴァイオリンの高音域もカットされてしまった結果、音から生気が消え失せベールを一枚被せたような音に変貌しております。まあ、イージーリスニング用ということでノイズ消去が最優先になるのでしょうが、残念な結果となってしまいました。

 国内盤LPとオリジナルLPを改めて聴いてみると・・・


これは音の饗宴1300シリーズの一枚。"The Romantic Concert"(日CBS/SONY 13AC281)テープ・ヒスは目立ちます。恐らく米Columbiaからのコピーマスターを使用しているため、ダビング時にヒスノイズが増えたのでしょう。高音域のカットはしていないようで、CDの音からベールを一枚剥いだような印象がありますが、高域はフォルテで多少ヒステリックに聴こえます。状態の良い国内盤LPがあれば、敢えてCDを買う必要は無いでしょう。米コロムビア盤と較べて曲のバンド幅が狭いのですがA面の中央辺りでフォルテでも音のビリツキが無く安心して聴けます。


米コロムビア盤MS7103です。テープ・ヒスは国内盤より目立ちません。また、低音域のノイズ(空調や屋外の自動車と思われます)も感じられ、高音域・低音域をあまりカットしていないことが分かります。音はこれが一番でしょう。高域は国内盤程ヒステリックではありません。ただ、残念なことにB面最内周でカッティングされているため音質的に不利で、大概の盤でフォルテがビリツキます。私が入手した3枚とも(一枚は未開封品なのに)ビリツくんですな。

簡単にまとめると、米コロムビア盤と比較して、低音域をカットした国内盤LPとそれからさらに高音域をカットしたCD・・・ということになるでしょうか。一度(恐らく)3チャンネルテープで収録されているオリジナルから変に加工しない素直なリマスタリングでCD化して欲しいと願うこと切でございますよ。ホント。(2006.6.18記)



Rachmaninoff:Symphonic Dances
 -Dedicated to Eugene Ormandy and The Philadelphia Orchestra.
米Columbia MS-6205(6eyes Label LP)
  Rachmaninoff:Symphonic Dances(recorded 1960, also available on CD 米SME SBK-48279)
  Casella:Paganiniana(recorded 1960)
  
  Eugene Ormandy/The Philadelphia Orchestra

 1940年8月、ラフマニノフは作曲中の「交響的舞曲」の進行状況をオーマンディに伝えています。

「先週、新しい交響的な曲を書き上げた。もちろん、君と君のオーケストラに受けとって欲しい。それには「幻想的舞曲」と名付けたんだ。これからオーケストレーションに取りかかるんだが、残念ながら10月14日から始まるコンサートツアーの練習に多大な時間を費やさざるを得ず、11月末までに終えられるかどうか・・・・」

  初演は1940年1月3日、音楽アカデミーで行われました。4日と6日にも同じプログラムで演奏が行われ、ブクステフーデのパッサカリアとシゲティをソリストに迎えてブラームスのヴァイオリン協奏曲も合わせて演奏されています。(下記は当時のプログラム)
     

 最初この演奏をCDで聴いたとき、アシュケナージとコンセルトヘボウオーケストラの激情的な演奏が頭の中にインプットされていたので、それと比較して「地味な演奏だなあ」と思ったのが偽らざる心境でした・・・が、何か引っかかるものがあり、気になって何回も聴く内に、これは凄い演奏だと認識を改めることになりました。やはり、このコンビは只者ではありません。今では数あるディスクの中で私にとってベスト・ワンの存在として君臨しています。

 LPはカップリングの「パガニーニアーナ」を聴きたくて入手しました。40年以上前に製造されたものですからノイズは多いですがまあまあの状態で、今では「交響的舞曲」もCDではなくこのLPで聴いています。当時のLP製造には技術的な制約が多く音はCDの方がクリアで良いのですが、このLPの音も捨て難いものがあります。

 ちなみに、「パガニーニアーナ」は1942年のウィーンフィル100周年記念の為の作品で、カール=ベームの指揮で初演されています。パガニーニの(当時)未発表スコアなども含めた「変奏曲」(いや、編曲か?)で、フィラデルフィアの弦セクションのヴィルトゥオージティを堪能できる曲でもありますが、残念ながらLPでしか聴くことは出来ません。LPはたまにebayのオークションで見かけますし、確かOdyssey盤でも再発されておりこちらなら状態の良い盤も入手しやすいと思いますので、興味がある方は探してみては如何でしょうか?(2005.9.4)



Tchikovsky:Symphony no.7(reconstructed by Semyon Bogatyreyev)
  LP:米Columbia MS6349(6eyes&2eyes Label, regular ML5749)
  CD:米CBS Masterworks Portrait MPK 46453 (C)1990's
   
  Eugene Ormandy/The Philadelphia Orchestra(recorded 1962)

 Semyon Bogatyreyev 再構成版による世界初録音。西半球初演(東西分裂時はこういう言い方だったんですなあ)も Ormandy/Philadelphia が行っています。Columbia時代はマーラーの10番といい、RCA後期とは違う意味で色々意欲的に問題曲(?)を取り上げていたんですねえ。

 さて、この交響曲7番なる代物、作曲者が書きかけて断念した交響曲の草稿・破棄されたスケッチ・他の似たような曲からの転用という「ごった煮の継ぎ接ぎ」以外の何物でもなく、試みとしては面白いしその努力は「ご苦労様」と肩を叩きたくもなりますが、はっきりいって後世に残るものではないでしょう。チャイコフスキーも草葉の陰で「こんなシロモノをワシの交響曲といわれても困る・・・」と苦笑しているのではないでしょうか。

 とはいえ、メロディーメーカー「チャイコフスキー」のメロディー断片が素材ですから「ごった煮の継ぎ接ぎ」でも結構聴ける物になっていますし、なかなか美しいメロディーが随所に現れてきます。素材が良いので調理法に問題があってもまあ食える・・・とはチト言いすぎか・・・。オーマンディーとフィラデルフィアによる素晴らしい演奏もこの問題作を救済するには至っていません。まあ、こういう試みもあった・・・くらいで聴き流すのがよろしいかと。

 ちなみにCD(CBS Masterworks Portrait)も出ていますが15年前のもので入手は困難です。ときおりオークションで見かけますが競争が激しく(?)てなかなか落札できません。LPの方は未開封新品を格安で入手できましたが・・・。(2005.7.26)



Tchikovsky:Piano Concertos no.2 & 3
  LP:米Columbia MS6755(regular ML6155)
  CD:加SME/CBS Maestro LM2YK46460(2CD's, (P)(C)1990), also available on Sony Classical SK 94737(2005/08/30 release)
    
  Gary Graffman, Eugene Ormandy/The Philadelphia Orchestra(recorded 1965)

 グラフマンとオーマンディー/フィラデルフィアによるチャイコフスキーの2つの協奏曲です。1番はイストミンと録音しています。チャイコフスキー協奏曲全集という2枚組CDにこの2曲が復刻されていますが、1番の協奏曲はソリストをグラフマンで統一するためかバックはセル/クリーヴランドという組み合わせ。(このイストミンとの1番協奏曲もCDが入手できず、結局オリジナルのステレオLPを入手しました。CDよりLPの方が入手しやすいというのも奇妙な話ですが、それだけ沢山売れたんでしょうね)

 ま、それはさておきこの日陰者(?)の2曲ですが。2番は1番ほどの華やかさはありませんが、まあ悪くありませんし、2楽章はなかなか美しい・・・がやはり1番の協奏曲のイメージが強烈すぎて、冴えない感じが否めません。「最初の作品を越えられなかった」という典型的なケースというやつですか・・・。3番に至っては、断念した7番交響曲の1楽章を転用しており、それすら未完成で結局他の作曲家により補筆されたものです。これも「駄作」とまではいいませんが、やはり「捨てられた」だけのことはある作品と言わざるを得ません。肉・野菜くずを使えば美味しいスープが出来ますがそれはメインディッシュにはならないわけで、それを音楽で証明した・・・といっては酷かもしれませんが・・・。これも演奏は素晴らしいのですが、曲そのものの出来という劣勢を跳ね返すには至っておりません。まあ、興味のある方はどうぞ。(2005.7.26)


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