解説: 2スリット型干渉計の回折・干渉 ―(3)
― 全体の光強度分布 ―



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回折と干渉を合わせた2スリット型の強度分布

 2つのスリットで回折した光が干渉して強め合ったり弱め合ったりするわけだが,それぞれのスリットで回折した回折光の強度が回折角の関数になっていることが理解できたであろうか。

  結局,2スリットによる回折光が干渉したときの合成光波 $\varPhi(\theta)$ の光強度は,$\maru{3}$ 式で示したように, $\maru{1}$ 式の $f(\theta) と $$\maru{2}$ 式の$g(\theta)$ との積で表されることになる。したがって,かりに2つのスリットを通過した光線が干渉による強め合いの条件を満たしていたとしても,その回折光自体が回折の条件で強め合いの条件を満たしていない限り強い光とはならないことになってしまうことになる。

  ◎合成光波の強度:\[\color{red}{\bun{I(\theta)}{I(0)} = f(\theta)\times g(\theta) \\ \quad\quad\quad = \bigg[\bun{\sin\bigg(\bun{\pi a \sin\theta}{\lambda}\bigg)}{\bun{\pi a \sin\theta}{\lambda}}\bigg]^2 \times \cos^2\bigg(\bun{\pi}{\lambda}d\sin\theta\bigg) }\] これが先のシミュレーションで示したグラフである。

 下のグラフは, $d=5\lambda$ ,$a=d/4$ の場合のグラフである。
 この場合,たとえば \[d\sin\theta=\lambda\quad\therefore \sin\theta=\lambda/d \] であれば, $g(\theta)$ 式に代入して, $g(\theta)=1$ となり,この $\theta$ の方向に干渉での最初の(1本目の)明線ができることになるが, \[a\sin\theta=\bun{d}{4}\sin\theta=\bun{\lambda}{4}\] となるので,この値を $f(\theta)$ の式に代入すると\[f(\theta) = \bigg[ \bun{\sin\bigg ( \bun{\pi}{\lambda}\bun{\lambda}{4}\bigg) }{\bun{\pi}{\lambda}\bun{\lambda}{4}} \bigg ]^2 \kinji 0.81 \]となり,この方向の回折光の強度は, 上式より,\[\bun{I(\theta)}{I(0)} =f(\theta)\times g(\theta) \kinji 0.81\times 1=0.81\]となって, $\theta=0$ 方向の光強度の8割ほどの明るさにしかならないことになる。



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