形と題名でわかった人もいるかもしれませんね。 トリを飾るのは、玉の周辺巡りです。
周辺巡りとは、「玉が四辺・四隅を廻って元の位置に戻って詰む作品」で、神局図式第39番「鳴門」が初めての作品とされています(門脇芳雄「続詰むや詰まざるや」)。
また、象戯童翫集第100番は周辺巡りのあと都玉で詰むおもしろい作品ですが、惜しくも69と79だけ通っていません。
その後も、周辺巡りの煙詰(七條兼三(墨酔100番) 詰パラ1979年1月)、軌跡は完全ではないが5周近く回る周辺巡り(糟谷祐介「百千帰」 おもちゃ箱2014年1月)など大きな発展を見せている周辺巡り。 ここでは軌跡も完全、ノンストップで、かつ小駒無防備図式というすごい作品を紹介しておきましょう。
大西宏明、詰パラ1980年10月、65手。 なんと、大西さんの初入選作品です。
さて、菅野さんの作品は、この周辺巡りの世界に何を加えるのでしょうか。
作者 「ばか詰風の周辺巡り。ひょっとすると、この条件での合駒回数の記録作となっているかもしれません。」
四辺の移動がすべてやさしい趣向という、くるくる周辺巡り。 また調べたところ、軌跡が完全な周辺巡りでは合駒6回(上間優 詰パラ1980年9月)が記録のようなので、本作の合駒20回(+移動合1回)はダントツで周辺巡りの合駒回数の記録です。 参考作として、軌跡が不完全な周辺巡りでは、本間晨一「愛の日」 詰パラ1981年2月(余詰)があります。
それでは菅野さんプロデュースの世界一周の旅、出発いたしましょう。
99龍、18玉、19歩、17玉、
40枚配置で、後手は持駒なし。 ここから最初の趣向が始まります。
16と、同玉、18香、17歩合、 15と、同玉、17香、16歩合、 14と、同玉、16香、15歩合、 13と、同玉、15香、14歩合、 12と、同玉、14香、13歩合、
11桂成、同玉、13香不成、12桂合、
最初の旅は11玉で終着。 続いて上辺の旅です。
21成香、同玉、91龍、31香合、同龍、同玉、
今度の趣向は歩打ち送り。
32歩、41玉、42歩、51玉、52歩、61玉、62歩、71玉、 72歩、81玉、82香、91玉、
91玉で終着。 次は飛打飛合の旅、その1。
97飛、92飛合、同飛成、同玉、 94飛、93飛合、同飛成、同玉、 95飛、94飛合、同飛、同玉、 96飛、95飛合、同飛、同玉、 97飛、96飛合、同飛、同玉、
98飛、97飛合、同飛、同玉、 99飛、98飛合、同飛、同玉、
馬で歩を補充。 移動合に歩をたたいて99玉に終着です。
65馬、76銀、99歩、同玉、
最後の旅は、飛打飛合その2。
79飛、89飛合、同飛、同玉、 69飛、79飛合、同飛、同玉、 59飛、69飛合、同飛、同玉、 49飛、59飛合、同飛、同玉、 39飛、49飛合、同飛、同玉、 29飛、39飛合、同飛、同玉、
楽しかった世界一周の旅もそろそろ大団円。 あとは5手詰です。
29飛、同玉、56馬、19玉、29金 まで107手
いかがでしたか。 どの辺の趣向も悩む必要のないやさしい趣向、繰り返し回数が多くてたっぷり楽しめたのではないかと思います。
それでは、みなさんの感想を。 解答到着順です。
- 山下誠さん:
- 最後に1歩余って元に戻り、7六銀に気付く。タイトル通り世界一周の旅を満喫しました。
- 小山邦明さん:
- 玉がきれいに盤端を1周するのは見事。
- 嵐田保夫さん:
- 難解さは無く手なりで詰むが、外周を一周するユニークな作品
- ぬさん:
- くるっと回って還元玉。
- 長谷繁蔵さん:
- 76銀の妙防で歩を使う周辺メグリでした。
- S.Kimuraさん:
- 題名から予想はしていましたが,周辺巡りを自力で解くことができるとは,感激しました.
- 占魚亭さん:
- おお、周辺巡りの還元玉!最長手数記録作ですか?
32か所通過での最長手数は伊奈正夫「日輪」135手でしょうか。
- 名無し名人さん:
- これは狙いが明確。周辺巡りですね。
- 隅の老人Bさん:
- 着想も面白いが、それを実現する棋力も素晴らしい。
特に隅の回り方が上手い。表題は成る程、成る程。
- 池田俊哉さん:
- 趣向で追い回す完全周辺めぐり、曲がり角、特に左下が良くできている。ちょっと百千帰を思い出した
- 秀和歌さん:
- 100手越だが本当に易しく、主題をストレートに楽しむことができた。
- やぶいりさん:
- 世界一周お疲れ様。歩が余ると思ったらうまい銀移動合があった。
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