前作は馬一色図式の金一色持駒でしたが、姉妹作の本作は角一色図式の金一色持駒です。
前作の解説で書いたように、両作共、無防備図式、飛び石図式、風船図式でもあり、駒位置も1段平行移動しただけで同じという、趣向性にあふれた作品。
本作は生角2枚で、前作にもまして本当に詰むのか信じがたい形ですが、こちらも作意順で端の駒が一切発生せず、中空で詰め上がります
(純風船図式)。
中空の妙技その2、こちらも是非並べてご鑑賞ください。
前作の馬引の順は生角のためできないので、もう一つの順、34角成から入ります。
45合は切って46金と押さえれば詰むので、入玉して抵抗。
57玉なら35馬で目指す形が作れます。
正解は47玉ですが、ここで57金と捨てるのが好手。
まだ金が3枚あるので逃げる手は簡単、取る一手で、待望の35馬が実現します。
34角成、47玉、57金、同玉、35馬、66玉、
35馬に対しても逃げ方はいろいろ。
変化手順は棋譜ファイルの分岐棋譜でご確認ください。
67金、同玉、68金、76玉、86金、66玉、
67金捨てから68金が、脱出を防ぐ決定打。
これに66玉なら44馬から下に追って21手。
76玉が最長です。
ここからは馬の大追跡。
最後はもう1枚の角も馬に成ってとどめをさします。
44馬、56玉、55馬、47玉、37馬、56玉、46馬、65玉、
55馬、74玉、73角成 まで23手
作者 「初手は▲3四角成から入ります。
これに対する▽4五合は、いずれの合駒の場合でも▲同馬が成立し、以下取られた駒を活用され早詰みに至ります。
そこで▽4七玉となりますが、ここで▲5七金が小気味良い捨て駒第一弾。
やむを得ぬ▽同玉に対し、▲3五馬、▽6六玉を経ての▲6七金が追い討ちの一撃となり、玉を掌中に収めることに成功します。
最終形は馬2枚、金2枚から形成される平行四辺形の檻の中に玉を捕えた形になりますが、初形との対比も良く、
アートとしてふさわしい形になったのではと自負しております。」
角一色図式、馬一色図式はたくさん作られていますが、その中に端を一切使わない純風船図式はほとんどありません。
- 西亀健太 詰パラ1999年5月 3手 22馬26馬|24玉|香 (端に行く変同あり)
- eureka アート展 No.31 15手 52馬58馬|55玉|金銀3
初の20手台の作品が2作も登場したことは、まさに中空の妙技。 趣向にあふれた初形とあいまって、奇跡的な姉妹作といえるでしょう。
以下は蛇足(参考)。
実は、2016年に対称な角一色図式を探したとき、本作に類似した手順の作品がありました(右図)。
34角成、57玉、47金、同玉、25馬、56(48)玉、57銀、同玉、
58金、66玉、76金以下63角成まで23手。
この図は持駒金金銀銀でも成立します(47銀、同玉、25角成以下21手)。
それでは、みなさんの感想を。 解答到着順です。
- 山下誠さん:
- 馬が角に代わった前局との姉妹局。 こちらは6四角と馬の連携で詰める。
- S.Kimuraさん:
- 64の角は成れそうにないのに,これで玉を追い詰められるものだと思いました.
- 蛇塚の坂本さん:
- 変化手順多く自信なかった。
28馬まで21手詰解。 惜しい。
- 市橋宗士さん:
- 角だと(55番より)全体に一路下げないと詰まないんですね、
55番との対比が鮮やか、詰手順がやや複雑になり、時間がかかりました。
- おかもとさん:
- え、これ詰むの? その2。 これまたすごい。
- 小山邦明さん:
- 6手目58玉の変化も楽しめました。
35馬に58玉は68金、49玉、59金、同玉、37角以下19手。
- 池田俊哉さん:
- 生角二枚のため前題よりやりにくい。
こう言った作品は読みもそうだが、空間認識力が問われるように思える。
解答選手権等で出題したらどうなるか、と思わせてくれる作品
解答選手権も参加者が増えてきたので、詰将棋の魅力を広める意味でも、なるべく多様な作品を出題できるといいですね。
- 占魚亭さん:
- こちらの方は、64角の睨みを活かして馬で追い込んで行く感じ。
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