たんぽぽを抱える倫子を見て心を奪われる直江 |
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倫子は川原で必死にたんぽぽを探していた。そしてたんぽぽを見つけ、胸に抱えてうれしそうに笑う顔を見た直江は、くいいるような瞳で倫子を見つめる。くいいる、というより心奪われて呆然といったような表情。
私はそれを見て「直江先生、ハマったな」 と思った。ああこれで倫子が好きになっちゃったのね、と。
もちろん、それ以前にも倫子のことは気になっていただろうけど、『好きになった瞬間』 はあのときじゃないかなぁ。
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倫子の肩を抱く直江 |
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倫子を迎えた直江は、「もしかしたら彼女に知られてしまったのか」という不安な気持ちになる。
しかし、彼女は「一緒にいるんだなぁって」と幸せそうな顔をしている。それを見て、「彼女は何も知らない」ことが分かり、直江は安心して彼女の肩を抱く。寄り添う倫子のうれしそうな笑顔を見て、直江も安堵の表情を浮かべる。そして、遠くを見る目。
安堵しながら、でも、いずれくる別れを、彼女に与える悲しみを考えてしまう、なんともやりきれない表情をする。
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北海道に行きたいと言った倫子を抱きしめる直江 |
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雪が降ってきて、倫子は「北海道もまだ雪なんでしょうね」とつぶやいた。
折しも支笏湖へ行く時期を考えていた直江は、
「夜に降る雪が好きだった。真っ暗な中に降る雪を見上げてた。雪の音しか聞こえない。聞きに行くか?雪の音。北海道に帰ってみようと思っていた。一緒に行かないか。君と行きたい」
と倫子を誘う。
倫子は「行きたいです。先生の生まれたところ」と言う。
直江がそんな倫子を抱きしめると、 倫子は直江の胸の中で
「発見 幸せすぎると涙でますね」と言う。
ただ、純粋に自分を愛してくれる倫子。幸せだと泣いている倫子を、自分が悲しみに突き落とすのだ。もうすぐその涙は悲しみに変わる。ほんのあと数日で。
倫子の言葉を聞いて、直江はなんともやりきれないような顔をする。本当のことは何も言ってやれない直江には、彼女をやさしく抱きしめることしかできなかった。
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意識を失ったことを説明する直江 |
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北海道に行く約束をした後、直江は病状が進行しているため意識を失ってしまう。倫子には隠し通すと決めているので、この状況を説明しなければならない。フロノスは手に入らないので、痛みを抑えるためだけに経口モルヒネを調達し、その薬を「学生時代に痛めた腰椎の痛みをやわらげるため」と説明して服用する。
彼女は不安も疑問も持っていただろう。しかし、
「君と旅行に行きたいからだ」
「僕のことはなんでも君に話すと約束しただろう」
と言われて、納得してしまう。
「ありがとう、話してくれて。でも、お願いだから無理はしないで」
というのが精一杯だ。
彼女のこの言葉を聞いて、直江は安堵する。彼女に気づかれないようにため息をつくかのようにほっとした表情をする。
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