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■伏線
改めて全編をとおしてみると、いろいろな伏線があったのが分かる。私が気が付いた伏線とは。

あの人のためにできることがきっとある
 

三樹子はフロノスの空き瓶を見せて小橋先生から直江の病気を聞いた。
「どうしてこんなことに」動揺する彼女。うれしそうな倫子と対照的に、彼女は直江のことが心配でたまらず、父親に相談しようとしたり、直江自身に何ができるのか教えて、と詰め寄る。小橋先生に「僕たちにできることは誰にも何も言わないことだけ」といわれたにもかかわらず。
彼女がこんなにあがくのは、もちろん今更ながら自分は直江のことを愛しているのだということに気づいたからだが、小橋先生が「彼を動かせるのは志村くんだけかもしれない」と言われたからだろう。
彼女よりは確かに自分のほうが彼に近い存在だったはずなのに、いつのまに。三樹子にはショックだったろう。しかし、彼女は「何かきっとあるはず。あの人のためにできることが」と言い放つ。

彼女が直江のために「したこと」。それは

  • 彼に最後の手術をさせること
  • 医者としての彼に最後の引導をわたすこと

だった。
手術の前に、直江は最後のフロノスを使用する。そして手術に臨む。しかし、ふらつき、気を失いそうになる。やっとの思いで手術を終えて、ロッカーに倒れ掛かる。首を振る。直江は自分の限界を感じたのだろう。自分の医者としての人生はもう終わりなのかもしれない。

そして、彼はこの夜、倫子に北海道行きを切り出すのだ。

 

「私じゃだめだったの?」と泣いた彼女
 

謹慎中の直江の様子はおかしかった。
その状態に、倫子はつい「三樹子さんなら先生を救えるんですか」と言ってしまう。
そして、その三樹子に「あなたにあの人は無理よ」と言われる。
『あなたはあの人に不釣合い』
『あなたの手に負えるような人じゃない』
そういう意味。
これが「私じゃだめだったの?」という泣いた理由。

直江に拒絶された三樹子は彼の態度が変わったのは倫子のせいだと思い、倫子を呼び出す。
「プライベートなことですから」と「愛されてるならそれでいいじゃないですか」と
三樹子に強気に立ち向かった倫子だったが、去り際の「あなたにあの人は無理よ」は心にグサリと突き刺さった。

ただ直江のそばにいたいと願っていた倫子は、この前日、この思いを直江に拒絶されている。
「何を勘違いしてるんだ」
「そんなこと言われてオレが喜ぶとでも思ったか」
「オレは君が考えているような男じゃない」

倫子は直江が何かを抱えて苦しんでいることを知っている。
でもそんなことを微塵も見せずに何もなかったかのように振る舞っている彼を知っている。
多分倫子は自分がそばにいることで、直江の張り詰めた気持ちが少しでも楽になればと
ただそれだけを願っていたんだろう。でも、拒絶された。
三樹子のいうように、『私なんか先生を救えないかもしれない』と思ったはずだ。

その後、直江が自分を受け入れてくれても、二人で北海道に行っても、
「私がそばにいることで先生の負担になってはいないか」
「私は先生のために何かしてあげられているのか」
という不安はいつもあった。
一緒にいられて幸せだと思う裏で、何か言いようのない不安にかられる。
そしてその不安は的中し、直江はたった一人で逝ってしまった。
ああやはり、私ではだめだったのだ。私は先生を救えなかったのだ。
「私じゃだめだったの?」と泣きじゃくる彼女は、自分の存在が彼の救いにならなかったと思ったんだろう。

 

たとえ嘘でも、今だけの幸せだったとしても 私なら感謝するかもしれない
 

石倉の手術には納得していなかった倫子が、直江の「嘘の中に入ってくる」という話を聞き、また石倉が直江の言ったとおりに一時的にせよ元気になって笑っているのを見て、直江の言う「すべての嘘が不幸とは限らない」ということを理解するようになる。
実際には、それからの直江と倫子の関係はまさに直江の嘘で成り立っている関係だった。直江は倫子に自分の病気のことを隠し、最期は支笏湖で身を沈めようと決めていることも隠す。倫子が感じている幸せも後になってみれば今だけの幸せなのだ。

2話での倫子のこの言葉を直江は知らない。確かに直江がいなくなれば倫子は悲しみにくれるだろう。直江がこれまで語ってきたいろいろな言葉を思い出しては泣き,直江が恋しくて泣くだろう。
しかし、その涙の果てに倫子は直江に感謝するのだ。最後に幸せな日々を私に残してくれたと。きっと病気のことがあって人を遠ざけていたんだろう。そんな先生が私を愛してくれた。短かったけれど、私たちは幸せだったのだ。
直江は倫子なら愛する人のために嘘をつく、そんな『死に逝く人』の気持ちを分かってくれると信じた。直江が信じたことは間違いではなかったのだ。

 

倫子の告白
 

「先生が見えるものを見て、先生が感じることを私も感じて、もし見えるものが違うなら教えてほしい。 私、先生が何を感じたのか知りたい。」
倫子が直江に告白するとき、彼女は自分の気持ちをこう伝えた。さらにこう続ける。
「先生のそばにいたいんです。先生が苦しいときも悲しいときも一緒にいられればいいんです。 いつもそばにいたい。この気持ちには嘘をつきたくないんです。」
このとき、直江は彼女を拒絶して追い返す。

この言葉は、北海道での朝の二人の会話につながっている。
「私たち今同じものを見てる」
「ああ」
「同じことを感じてる」
「ああ 同じだ」
自分でも何か苦しみを抱えながら、それでも人に優しくできる人。この人のそばにいて同じことを感じている幸せ。。。
倫子は確認せずにはいられなかったのだろうなぁと思った。

 

直江のレントゲン写真
 

直江は痛みに襲われると左腰を押さえていた。直江がその左腰(骨盤)のレントゲン写真を見ているシーンが何回も出てくるが、始めはまだ白かった骨に、小さな黒い影ができ、黒い影が広がっていき、7話では黒い影の部分のほうが多くなり、原形もとどめていないかのような状態になっていた。このレントゲン写真の進行によって、直江の病状が悪化していく過程を見せている。
小橋が「痛みと貧血の連続で歩くことも苦痛になる」 と言い、直江自身も「もうすぐ歩くこともできなくなる」というのは、一番の病巣が腰にあったからだろうか。

 

フロノス場面
 
1話 ラスト、フロノスが床に転がっている。直江は苦しそうだが、多分打ち終わった後。
2話 三樹子がたずねてきたときも、床にフロノス。ここも注射の後。
3話 倫子との食事が終わった後、マンションで激痛に襲われる。このとき、机から注射器とフロノスを取り出す。注射器は密閉されたもの。ここでは激痛に耐えかねて大声を出すが、注射を打つ場面はない。
4話 院長室で激痛に襲われ、席を立った後、会議室に鍵をかけ注射を打つ。このとき初めて袋から注射器を取り出し、注射を打つ場面がある。
5話 ベッドで苦しむ直江。フロノスが転がる。ベッドには倫子のガラスのボート。
6話 ポケベルが鳴るマンションの部屋。直江はまた激痛に襲われている。病院に来てくれないかと言われるが、行けるかどうか分からないという。5話の段階でフロノスの量を2倍にしているので、かなりの激痛と思われる。
7話 レントゲン室、三樹子の前で激痛が。医局に鍵をかけフロノスを打つ。そして、ラスト、激痛をこらえ医局でフロノスと注射器を取り出し、やっとの思いで人気のない屋上にたどり着きフロノスを打つが、三樹子に見られる。
8話 医局でレントゲンを見ているときに激痛に襲われる。今までで一番激しい激痛。フロノスを打とうとするが、狙いが定まらず打てない。そこにいた三樹子に打ってもらうしかない。
9話 小夜子との取引が院長にばれて、フロノス受け取り中止。
三樹子の手術の前に打ったのが最後の1本。しかし、打つ場面は見せず。
10話 既にフロノスはなく経口モルヒネ服用。

1話から徐々にフロノスの存在、注射を打つ場面を見せていき、8話の場面が最後。その後は注射器すら画面に出てこない。まさに「フェードインフェードアウト」。

 

直江の死を暗示させるもの
 

その1
教会をイメージしたという映像がメインのタイトルバック、その中に水中に佇む直江の映像がある。これは支笏湖に身を沈める直江を暗示したもの。同じく倫子が水中に佇む映像もあるが、彼女は水から出ていく。

その2
部屋に広げられた大量のレントゲン写真の上に倒れ込む直江の姿。湖に飛び込む姿を彷彿とさせる。

 

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