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2010 S-4,7: 特集( 城塚正先生を偲ぶ ) -4,7
           「 城塚 正先生の訃報に接して 」
        山崎 康夫;1986年早稲田大学大学院博士後期課程修了 工学博士

  城塚正先生の訃報に接し心よりお悔やみ申し上げます。私が早稲田大学理工学部に入学した昭和56年ころは城塚先生に直接お目にかかる機会もなく、大学院の講義の記憶くらいしかないのですが、亡父が資源工学科の教授であり城塚先生と1歳違い?であったことから、そのころの亡父との会話では、城塚先生の話題は豊倉先生のそれよりも多かったと記憶しています。「資源工学で取り扱う物質は自然界で生成されたもので、当時の工業装置内での条件に比べて高温高圧で長時間かかっているから、物質の性質もおのずと異なる。今後は、反応工学が重要になるだろう」と言われたのを思い出します。私は、色々考えましたが、結局豊倉先生の研究室で晶析を研究することになりました。その後、大学院修了・助手を拝命してから、日本化学工業株式会社への就職が決まったときには、「そういえば城塚先生もこの会社に関係があるんじゃないかなぁ」と言っていたことを思い出します。

  現在の我が国産業の状況について、私見を述べたいと思います。2008年の米国の金融危機に端を発した不況は、我が国産業にも大きな影響を与え、2010年の今もまだ不況から回復しきれずに、それどころかさらに大きな産業構造の変化に繋がってきているようです。その原因としては、第一に、景気を米国の消費に頼ってきた我が国産業であるが、長い米国の消費低迷に方向性の変更を考えるようになってきたこと、第二に、中国の体制に変化はないものの消費市場としての可能性が高まってきたこと、第三に、各資源国が資源ナショナリズムに意義を見出しつつあること、第四に、日本の創造や生産のコストとスピードが他国に比べて高コスト低スピードになってきたことがあげられると思います。またそれに加えて、日本の重工業を通じて日本経済を支えてきた産業もエネルギー消費の観点から国内存続の意義が問われるようになってきたことも大きな転機であると思います。

  いずれも国際社会における日本の役割分担の変更が求められた結果であると思います。過去にもおよそ10年ごとに日本を取り巻く環境の大変化が起こってきましたが、今回のパラダイムシフトはかなり大規模であるように思われます。これを乗り切るには、少なくとも産学の連携が必須であるように考えています。

  わが早稲田大学は、オックスフォード大学やケンブリッジ大学のような壮大な歴史はありませんが、早稲田大学の化学工学の歴史は、他国・他大学のそれに比べて決して短いものではありません。これは、ひとえに城塚先生の先見の明であるといえ、我々はそれをますます発展させる役割を引き継がなければならないと思います。このところ、学術界は合理的な評価のためか、論文になりやすく評価の高いマテリアルサイエンスに傾注し、化学工学特に反応工学や移動速度論などの研究は過小評価されているように見受けられます。やはり、基本に立ち返って、産学の連携を基本に進めていかれることを提案したいと思います。

  例えば、OBの側から産業界の第一線で活躍している方を推薦し、現役の学生諸君に講演をする機会を提案するなど、やり方はいろいろあるように思います。城塚先生の墓前において先生にご教示いただければ幸いです。                            

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