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豊倉賢略歴
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2007C-2,1 金子 充良 1974年学部卒  (工学士)

 
  金子さんは学生時代から、豊倉の自宅がある小田急線の鶴川駅を利用していたので、何となく身近に親しく感じていた。しかし、金子さんの通学時間、通勤時間は豊倉と少し違っていたためか、電車の中で会ったことは数回しかなかった。それでも、会ったときは何時も元気に活躍しているようで、頼もしく思えた。金子さんは化学工学在籍時の成績はトップクラスで、大学院推薦入学を受ける資格はあったが、実家は町田市の由緒有る旧家の長男で、自宅から通勤できる一流企業に就職したいと云う希望を持っていた。丁度その頃、研究室に来ていた荏原製作所の化工機部から、そのような人が入社を希望しているので有れば、是非入社して頂きたいと嘱望されて就職を決めた。

  金子さんは東京郊外の南多摩郡鶴川村〔現町田市〕生まれの田舎育ちの学生で、性格は真面目で着実に筋を通して研究課題を考えて、研究を進めていた。金子さんの就職直後に直系上司であった早稲田大学機械工学科卒業の部長から、金子さんは本当に優秀な人ですねと云われて豊倉が褒められた気がしたことがあった。当時豊倉が荏原製作所のお手伝いをしていたことは晶析からみの環境技術で、金子さんの仕事とは直接関係なかったので、金子さんがどのような仕事をしていたかは知らなかった。今回の寄稿記事で排煙脱硫装置の応用開発を研究していたことを知りました。その後環境関連技術の開発と販売・建設を30数年続けてきたようで、苦労して立派な装置を立ち上げても、思うように売れなかったことも有ったようで、現実の社会の難しさを充分味わったように読みとれました。しかし、金子さんは辛抱強く頑張った甲斐があって、自信を持って建設出来る技術を完成することが出来たようで、金子さんの技術者人生の話は将来を夢見る若い技術者に希望と勇気を与えると感じています。金子さんは最後に
 「 私のモットーは現場主義です。泥臭く地道に裏付けされたものが実を結んでいます。 」と纏めてますが、自分を信じて真面目に努力し続けると誇れるものが見えてくるものだと感じています。   (07年3月、豊倉記)

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(金子 充良)

略歴
1974年 3月 早稲田大学応用化学科化学工学科卒
1974年 4月 (株)荏原製作所化工機部入社 化学チーム勤務
1995年 4月 (株)荏原製作環境プラント事業部 燃焼技術センター勤務
2006年 6月 (株)荏原総合研究所 燃焼ガス化プロジェクト室勤務


「 環境関連の仕事 」

  小職 昭和49年に荏原製作所に入社し、以来環境プラント事業部の環境関連の業務をしています。以来、33年が経ち定年まで3年近くになってしまい、とくにこれといった実績もありませんが、いままで行ってきた仕事で印象的なことを記述します。
しあわせなことは研究室で行ってきたこと及び化学工学的手法がそのまま会社の業務に生かせることでした。

  入社1年目に当時盛んであった排煙脱硫装置の応用開発を行いました。実験装置を組み立てて、湿式排煙脱硝が可能かどうかテストしました。結果はNOの吸収が低く、また、吸収されたN分は窒素に還元されることはなく、窒素化合物として吸収液に残ることが判明、失敗し、同期が活躍しているのを見て落ち込みました。

  しかし、入社3年目で製紙工場の黒液回収ボイラの排ガス処理で、SO2とH2Sを同時除去するスクラバーのコンペがあり、吸収したH2Sを速やかに酸化する触媒を偶然発見、実機テストを経て1号機を受注しました。この触媒は鉄化合物ですが、たまたま実験装置の充填物に付着していました。実験の始めはH2Sが良く除去されていたのにテストを重ねて吸収液を交換して行くうちH2Sの除去効率が低下し、おかしいと思い、残しておいた吸収液の分析を行ったところ鉄ではないかいうことになりました。実際に鉄塩を吸収液に添加するとH2Sの吸収が非常によくなり、鉄化合物の有効性が確認できました。

  実機は処理ガス量20万Nm3/h規模の大きいものでしたが、パイロット試験機の500Nm3/hからスケールアップしました。化学工学の力と思いました。
しかし、このスクラバーも2件売れただけで終わってしまいました。

  その後、化工機部は環境プラント事業部になり、都市ごみや産業廃棄物の焼却施設を建設するようになりました。1983年頃から焼却処理に伴い発生するダイオキシン類が注目されるようになり、1990年の旧ガイドライン,1997年の新ガイドラインにより対策は集約されています。焼却炉の安定燃焼を図ること以外に排ガス処理装置においてもダイオキシン類の除去や触媒の分解が必要となります。集じん器をバグフィルタにして粉末活性炭の添加、活性炭充填層の設置、脱硝触媒によるダイオキシン類の分解等が対策になります。ここで問題になったのが活性炭充填層、脱硝触媒の寿命と性能です。そこで、実ガスによる長期暴露試験を行いました。1993年〜1997年の4年間 継続して焼却施設に通い確認しました。脱硝触媒はSO2が少ない場合、性能劣化しない。活性炭充填層も除去率は良好な状態を維持する。新設焼却施設の場合、触媒は常設であり当社が建設した焼却施設では約30施設が触媒付です。排ガスダイオキシン類の規制がEU諸国の1/10の0.01ng-TEQ/m3Nの上乗せ保証がある場合があり、脱硝触媒によるダイオキシン類分解は必須となっています。

  実施設が稼動した頃は、触媒でダイオキシン類が本当に分解できるのだろうかはっきりいって不安でした。結果が出るたび、合格発表を見るようなどきどき感を味わいましたが、膨大なデータに裏付けされたいまでは心配していません。

  化学は奥が深く、COの酸化には脱硝触媒はまったく効果がないのになぜダイオキシン類が分解できるのかわかりません。

  私のモットーは現場主義です。泥臭く地道に裏付けされたものが実を結んでいます。


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