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2007C-1,2 河間 博仁 1998年大学院修士課程修了  (工学修士)

 
  河間さんは豊倉が早稲田大学を退職する一年前に大学院博士課程前期を修了した卒業生です。豊倉はその翌年1999年3月に早稲田大学早期退職制度の適用を受けて退職を予定でいたので、その前年の97年4月から98年3月の一年間、(河間さんが修士論文を纏めていた年) 早稲田大学国内研究員制度の適用を受けた。この制度は専任教員が長期に亘って早稲田大学で行った研究・教育等の活動成果を纏めるために、学内のおける講義や会議などの通常の業務を離れてよい制度で、大学教授として行ってきた成果を纏めることを主にし、そのために必要な国内外の出張等に使用する時間は教授会承認の得られる範囲で本人の裁量に任されていた。このような期間であっても大学院学生の研究指導を行うことはできた。それでもどちらかと云えば、修論テーマの関係で、河間さんと膝を交えてじっくり討議をする時間は少なかった。そのため、通常年度に直接指導した研究室所属の学生に対するのと異なって少し距離を置いて比較的冷静に接することが出来た。当時の研究室生活で河間さんについて記憶していることは、同時期に所属していた他の大学院学生と異なり、自分の立場や自分の得意なものをよく心得ていて、豊倉が意見を求めた時など常に自分の個性ある意見をしっかり発言していたことなどであった。

  河間さんの修論研究そのものについては直接指導していなかったので、研究上の個々の問題を討議したことは少なかったが、いつの日か具体的なことに対する河間さんのしっかりした意見を伺えることがあろうと期待していた。今回昨年末にアメリカからクリスマスカードを送って貰い、その中で昨年は殊の外忙しくて研究室のHPに寄稿出来なかったが、今年はアメリカ生活で自分なりに感じたことを書いてもよいとの話を伺い、早速依頼してここに掲載する記事を執筆頂いた。それを読むと、現在河間さんが生活しているノースキャロライナ州は丁度40年前に豊倉が家族で2年間生活したアラバマ州のFlorenceに近く、当時私の上司がノースキャロライナ出身でよくそちらの話を聞いていたのを思い、当時のアメリカ生活を思い出している。また、豊倉が勤務していたアメリカの研究所は大統領直轄の機関で、アメリカ人によるアメリカ的な研究所であった。しかし、河間さんの記事を読むと、日系アメリカ企業とも相通じるところがあるような気がした。過去にアメリカ生活を経験した卒業生はこの記事を読むと、アメリカ社会の動きを感じることでしょうし、将来アメリカ生活を経験したいと考えている卒業生にとっては参考になることが多いことと思う。この記事の内容から、河間さんの鋭い観察力とそこで見たものから得た種々の事柄をこれからの活躍に生かそうとしている姿勢が伺え、なかなか読み甲斐のある記事であった。  (07年1月、豊倉記)

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(河間 博仁)

略歴
1998年 3月 早稲田大学理工学研究科修了
1998年 4月〜 呉羽化学工業(株) [現 (株)クレハ] 入社 錦総合研究所 配属
2004年 5月〜 錦工場機能材製造部
2005年 9月〜 フォートロンインダストリーズ(アメリカ)出向 現在に至る


「 アメリカで感じること・考えること 」


  豊倉・平沢研究室の皆様、こんにちは。1998年修了の河間博仁と申します。私は(株)クレハに入社後、研究所から製造現場、その後はアメリカの子会社と異動をしましたが、携わっている製品としては、一貫してとある同一のプラスチックに関する業務に就いています。そして、現在所属しているアメリカの子会社はジョイントベンチャーで、会社の運営面は提携先の会社として経営されているので、プロセスエンジニアと言う立場から同じ製品を作るプラントを通して、日米のシステムの違いを体感しています。この度、豊倉先生よりHPへの執筆する機会を頂戴致しましたので、アメリカで感じること・考えること、私の近況を報告させて頂きます。

アメリカに来て実感するのは「アメリカのシステムは性悪説がベース、日本は性善説がベース」と言う事です。この言葉は、アメリカ赴任以前にも聞いた事があったのですが、実感している範囲で別の言葉で言い換えると、アメリカはシステマチック、日本はファジー(古いですか?)、とも表す事が出来ると思います。具体的には…

1) ジョブディスクリプション(職務記述書)
アメリカでは、自分の仕事の範囲はどこまでか、自分の職務の報告をしなければならない人は誰と誰なのか、職場の1人1人が職制図でどのような位置関係になっているのか、非常に明確に記述されています。 また、各ポジション(部長・課長・職長・プロセスエンジニア・プロダクションエンジニア・メンテナンスエンジニア・品質検査者・原料受入/製品出荷担当者…)の役割/責任範囲が社内で統一された規格になっていて、どの現場でも共通化されています。
デメリットとしては、あまりに業務の線引きがシッカリしている為、トラブルでプラントが止まっていても、自分の担当外の原因であれば帰ってしまう事もあり、融通が利かない様にも感じましたが、メリットとしては、仮に誰かが異動して新人が入って来ても、業務引継ぎがスムーズで混乱が少ないです。また、人の入替りが多いから職務の規格化を行ったのか、職務の規格化がされているので人の入替りが簡単なのか、異動/転職は頻繁にあります。そして、有能な人は、異動/転職を繰り返しながら、キャリアアップをして行く人も居るようです。

2) プロジェクトの進め方
アメリカでは、工程変更や新設備導入の手続きも全社的に規格化されていて、上記の各ポジションが、どの様に関わるのかフローチャットになっているのと、時間軸でも環境審査・経済性審査・運転性審査・安全性審査 等々のスケジュールチャートが定められています。大規模な工事ともなると多くのステップを踏み、多くの人のチェックを経ながらプロジェクトが進んでいきます。審査項目も仔細に渡るので、多少モタモタする感じも受けるのですが、とにかく検討の漏れが無いように、各項目が網羅されているのに感心します。

3) プラント制御システム(DCS)
アメリカでは、オペレーターの判断に任せるよりも、プログラムで処理させてしまう事を優先します。自動化の思想が強く、オペレーターがなるべく楽できる様に、そしてミスの起こらない様に、細かい所までプログラムで組まれています。人の手の介入を極力減らしたシステムにしています。

以上の例は、アメリカで体験しているたった1つの職場と、日本の1つの職場(しかも特にファジーな職場であった恐れもあります…)の比較ですので、それを日米の代表として、両国の特徴として論じてしまうのはいささか乱暴ではありますが、現在の私の立場から見える範囲では、以上の様な切り口から「性悪説のアメリカ、性善説の日本」を体感しています。

以上の様な異なるシステムを目にしていると、どちらが優れているのか?と自然に比較してしまうのですが、それぞれの国民性に合ったシステムがあり、一概に、片方で上手く行っているシステムを他方に丸ごと移せば良いとは限らないでしょうから、私自身は、お互いの良い所の抽出をして、消化し易い形にして、両者が共に向上するのに役に立ちたいと考えています。

また、このアメリカのシステマチックな社会の背景の一つには、移民国家であるアメリカは、各々で”常識”が異なる為、明文化しないと土台/前提が一致していない事があるかもしれません。私の職場でも、英語の通じない工事現場のメキシコ系の人から、若くして会社の経営陣に名を連ねる人まで、様々な人が居ます。そんな環境の中で、自分のセールスポイントは?進むべき道は?そして飛躍はしますが、世界の中の日本のセールスポイントとは?進むべき道は?と考えるのですが、この答えについては、アメリカ赴任中にもう少し時間をかけて考えて行きたいと思っています。

最後に、現在 私の住んでいるノースカロライナ州ウィルミントン市について紹介させて頂きます。ウィルミントン市は、アメリカ東海岸の真ん中のニューヨークとフロリダの中間に位置する、人口約10万人の街です。日本人は30人程度なので、街で偶然会う事も無く、英語が上達するには絶好の環境(のハズ)です。気候は温和で、春〜秋にかけては大西洋の砂浜で海水浴をしている人を見かけます。片田舎で治安も良く、ノンビリと時が流れています。

アメリカ赴任中には、アメリカについての勉強だけでなく、幸運にも日本を外から見る機会を得ましたので、日本の事についても勉強しながら過ごそうと思っています。昨年結婚した(クレハの同期の)妻と、アメリカ人の家庭に招かれては、寿司の種類と歴史や、ひらがな・片仮名・漢字の3種類の文字があるのは何故?と、色々な質問をされて、鍛えられています。

それでは、日本に帰国後、豊倉・平沢研の皆様と、またお互い元気にお会い出来る事を楽しみにしています。
                 

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