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2006C-5,4 石井明久 1988年学部卒  (工学士)

 
  豊倉研究室の卒業生は、研究室に配属されてから卒業するまでに豊倉の家で開催したコンパに少なくとも数回は参加している。石井さんは早稲田大学理工学部を卒業したら商社に就職したいと云う希望を持っていて、研究室には1年間の在籍で卒業した。そのような関係で石井さんも豊倉の家に数回来たことがあったと思う。豊倉が、研究に配属された学生を会食に呼んだ理由は色々あったが、その中の一番の理由は、卒業してから何かに成功して嬉しいことがあったときや、何かに失敗して誰にもそのことを話せなくて困ったときなどに、何時でも気楽に来て、何でも話せるように豊倉の家を覚えるためであった。豊倉の家のコンパでは、仲間に迷惑を掛けないのであれば、何を話しても、何をしてもよいと言うことになっていた。石井さんも学生時代に豊倉の家に来たとき、自分が育ったのは商家で、父より商人の心構えを教えられていると云う話をしてたことがあった。卒業生は皆知っていることと思うが、豊倉は大学4年在学中に父を亡くし、その一週間後から家業呉服商を継ぎ、大学院に入学するまでの2年間余商品の仕入れを行ったので、商取引をした豊倉の経験と対比しながら石井さんの話を聞いた。また、大きな商社の商取引の話は1966〜68に米国TVA公社にいたとき、研修に来ていた燐鉱石輸入大手商社の三井物産・三菱商事・住友商事の担当者から聞いたこともあったので、その時の話なども含めて豊倉の商取引についての話をしたことがあった。その時石井さんから受けた印象は、商社マンに対する自分のしっかりした考えのある理工学部の学生で、卒業して一流商社に就職できれば立派な商社マンになる学生と思い、長瀬産業に推薦したことがあった。卒業後はニューヨーク・マンハッタンで会い、ウエストポイントへのドライブに案内してくれたことがあった。この時学生時代と異なった商社マンとしての心構えが出来た石井さんに接することが出来た。最近は誰でも何処でも 「identity」の重要性は強調されるが、同じ目的で仕事をしている競争相手が認めるような「identity」を持つことが必要であり、石井さんが記述した「商社マンのidentity」は我々、化学工学技術者・研究者の「identity」を考える上で参考になることと思う。  (06年9月、豊倉記)

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(石井 明久)

略歴
1988年 3月 豊倉研 学部卒
1988年 4月 長瀬産業株式会社 入社
化学品第二部 精密化学品部(大阪) 配属
(医薬業界向け原料販売を担当、その後所属部署名の改称はあったものの職務は変更なし)
1996年 3月 ナガセAmericaに6ヶ月研修
2005年 4月 ファインケミカル事業部 有機ファイン部東京営業第二課 転勤
(現職は、欧米製薬メーカーへの原料販売の専任Teamを統括)


「 流通業(商社)のIdentity 」

  豊倉研を卒業し、早、18年が経ちました。卒業後、化学品の専門商社である長瀬産業に就職し、専ら、医薬業界で原料販売の仕事に携わってきて、現在は欧米の製薬会社への医薬品原料の販売をアサインされた部署に所属しております。当ホームページにて偉大な卒業生方々の寄稿を拝見し、幅広い業界、業態でご活躍ぶりに触発された思いでございます。残念ながら我が身に立ち戻ると、モノ作りの立場で皆様に披露する業暦、実績もございませんが、斜陽業種と呼ばれて久しい商社業に身を置いている別の立場から自己アピールも兼ねて思うところを述べさせて頂きます。

  化学品(ケミカル)は、概して、最終消費材となるケースが少なく、結果、企業間取引“B To B”が主体です。このような環境下での流通業の存在価値について考察すると、Sourcing(調達)、Logistic(物流)、Financing(金融)の3つのFunctionが一般的に挙げられます。SourcingはNeedsとSeedsをマッチィングさせることであり、それには品質や価格だけでなく、需要のライフサイクル、供給のフレキシビリティーが合致したものでないといけません。Logisticには、地理的な運送だけでなく、輸出入の場合、輸出入会社が消費国内ではP/L(製造物責任)等の責任を担います。Financingとは、製造業者が原料購入から完成品販売までの製造期間の代金の立替で、俗に、商社金融と呼ばれてます。

  これらの基本業務に加え、今般、コンプライアンス(法令遵守)、CSR(企業の社会的責任)が不可欠な要素となっており、それらに関連する関係法規の適法を確認する作業が加わっております。弊社が取り扱っている化学品に限定した国内法規だけでも、数10件以上の法律/政令が関与しており、海外各国でそれぞれ同様にルールがあり、それらを網羅しなければなりません。

  歴史を遡れば、新大陸発見も貿易が動機付けであり、国内でも「北前船貿易」は“B To B”流通業の初期段階でしたでしょう。その後、輸送、通信技術の向上〜ITによるボーダーレス化によって、情報流通の価値が相対的に低下し、「商社不要論」が叫ばれて久しいです。しかし、大海の荒波を越えて物品を運ぶ事と同様なレベルで、各国法令への遵守や社会的責任を全うするという新たな波を超える事が、新たな責務であり流通業のひとつのIdentityになり得るではと考えております。少々、手前味噌な記述ですが、滅び行く業態と言われながらも生き残っている現実を勘案すると、存在意義の世間認知の有無は別とし、どのような業態でも「存在」した時点で既に「価値」があるのではと自負しております。尤も、弊社は科学技術振興財団などでの社会貢献も目指しておりますことを加筆致します。

  最後に、「研究室ホームページ」の貴重な紙面に投稿する機会を頂けました事を感謝申し上げます。

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