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豊倉賢略歴 | apppendix | 新規掲載記事
2006C-4,4 加藤昌史 1990年学部卒 (工学士)
略歴 | |||
1991年 4月 | 早稲田大学理工学部応用化学科卒業 | ||
1991年 4月 | 東レ株式会社入社 名古屋事業場 ケミカル技術部に配属(吸着分離プロセスの開発・設計) |
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1997年11月 | 名古屋事業場 製造部 第3合成課(合繊・プラ原料の製造) | ||
2002年 7月 | 滋賀事業場 生産技術第1部(ケミカル生産・技術全般の統括、企画・管理) 現在に至る。 |
「 近況報告 」
豊倉先生、平沢先生、研究室および卒業生の皆様、大変ご無沙汰しておりますが、お元気ですか?
豊倉先生から折角、機会を頂きましたので、私のような者が何かお役に立てるか?と思いつつ、卒業後の状況等をご報告させて頂きます。
私は1991年に学部を卒業し、東レに入社しました。東レへの就職を希望したときには豊倉先生に大変ご心配を頂きました。入社して2〜3年経過し、重要な仕事も少しずつ任されるようになった頃、「大学院に進学して、先生の考え方やアプローチの手法をもっと勉強しておけば良かった!」と漸く気付き、後悔もしましたが、職場環境や運にも恵まれ、また自分なりに(多少は)努力し、今は東レの一員として一応は責任を果たせているのではないかな??と思って居ります。
私は入社後、技術部に配属され、擬似移動床による芳香族異性体の吸着分離プロセスの開発・設計を担当しました。自ら設計したプロセスを建設し、立ち上げる機会に恵まれ、ケミカルエンジニアとして非常に貴重な経験(後述する数々の失敗も含め)をしました。
その後、製造部勤務となりましたが、世の中の環境に対する関心が益々高まり、環境規制も急速に厳しくなる中で、合繊・プラ原料製造工程の環境対策に明け暮れました。またこの間に何度か恐ろしい事故・災害も目の当たりにしました。製造業はやはり防災・安全・環境を最優先しなければならないことを再認識しましたし、オペレータや工事作業者一人ひとりの安全に対する感受性の維持・向上を図ることは非常に難しいことも痛感しました。
2002年から滋賀事業場の生産技術第1部に異動となり、ケミカル生産・技術のHQとして企画・管理に携わっています。会社の経営方針や担当役員の戦略を具現化し、工場へ発信するという重要な任務であり、時には胃を痛めつつも、やり甲斐を感じて居ります。
入社後の状況は以上ですが、これから企業に就職しケミカルエンジニアとして活躍される研究室の方々に何かご参考になりそうなことをと思い、技術部時代、特に入社直後の設計における失敗談をご紹介します。いずれも今思えば非常に初歩的でお恥ずかしい限りですが・・・。
(1)メーカーのデータは鵜呑みにしてはダメ
ある不規則充填物を使用して蒸留塔を設計しました時の話です。そこそこ名の知れた充填物でしたのでメーカーのカタログに記載されていた充填物特性データをそのまま設計に使用しました。しかし実際に設備が完成し、運転を開始すると設計条件に到達する前にフラッディングが発生!! 最初は充填の仕方が悪かったのではないかと思い、メーカー立ち会いで充填をやり直したり、充填物を支持する多孔板の開孔部に充填物がはまって塞ぐのではないかと考え、少しサイズの大きい充填物を多孔板の上に敷いてみたりしましたが、殆ど効果がありません。ところがメーカーのテスト装置(アクリル製で内部が見える)を借りてモデルテストを行ったところ、カタログ値の約80%でフラッディングを起こすことが判明!! 結局、充填層を数メートル継ぎ足し、還流比を下げることで一件落着しました。メーカーカタログにあるデータや設計計算式は、鵜呑みにせず確認テストを行うことをオススメします。また設計の安全率や、万が一計画通り性能が出なかったときの次の手を考えておく必要があります。
(2)対流は曲者
横型で内部に垂直バッフルがある電熱ヒータを設計したときのことです。「通常のS&T型熱交換器は総括伝熱係数により熱交換量が決まるが、電熱ヒータは投入電力分は確実に温度が上がる筈」と安易に考えていました。一応ヒータ表面温度を計算し、流体の分解温度以下となるよう設計しました。しかしこの電熱ヒータがある日、突然漏電を起こしました。緊急停止し冷却後に内部を点検すると、上部のヒータが炭化して真っ黒焦げになっていました(危うく大事故を起こすところでした)。その後、アクリル製のシェルを製作し、モデルテストによりヒータ内部の流動を観察したところ、対流により横型ヒータの上部と下部で大きな温度差が生じることを確認しました(いわゆる風呂釜現象)。シェル内の流速が温度差による浮力に負けたため、流体がバッフルに沿って流れず、上部に高温の滞留部分が生じて分解温度を超えてしまったのです。流体の分解により生成したカーボンは当然ながら伝熱を阻害します。それでも電力が供給され続けたため、ヒータ表面が過熱して孔食が発生し、短絡したのです。
同様に発熱反応を伴う触媒反応装置でも対流によるショートパスを見落とし、大変苦労した経験があります。今後も対流には注意したいと思います。
これ以上書きますと、「どこが東レの一員として責任を果たしているのか?」ということになりますので今回はここまでにしたいと思います。失敗談なら最近でも山ほどありますが、さすがに年齢的にも洒落にならない立場となってきましたので割愛させて頂きます。
このHPで研究室卒業生の皆様の近況報告等を拝見させて頂きましたが、皆様がそれぞれの立場にて、本当に寝る時間も惜しんで目標の実現に向けて大変な苦労をされ、更なる向上を目指して努力しておられることを再認識し、大変刺激になりました。今後も時々このHPを訪れ、この刺激を自分のエネルギーに変えていきたいと思います。
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