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2006C-4,2 榎本康宏 1987年大学院修士課程修了 (工学修士)
略歴 | |||
1987年 4月 | 修士課程修了後 古河電気工業(株)入社 産業機材事業部LPプロジェクトチームに配属され PP発泡シートの製造ライン立ち上げを行う。 | ||
1990年 7月 | 産業機材事業部生産技術課(在平塚工場)へ転籍 | ||
1997年 10月 | 生産技術課所属のまま、3ヶ月出張しハンガリーで増産設備の立ち上げを行う。 | ||
1998年 7月 | 製造課 製造課長 | ||
2002年12月 | 天津工場へ赴任、新工場の立ち上げを行う。 | ||
2006年 1月 | 帰国、産業材事業部技術開発部で現在にいたる。 |
「 天津で感じた中国 」
みなさんは天津というと何を思い浮かべられますか。「天津丼」「天津甘栗」「租界」最近だと「トヨタの進出」というところでしょうか。(ただし、天津丼は中華料理ではありません。天津にきても本場の天津丼というのは有りませんからお間違えなく。これは純粋な和食です。)北京から約150kmのところにある、渤海湾に臨む港を含む東京都とほぼ同じ面積の地域が天津です。大陸性の気候のため気温が夏は35℃前後まであがり、冬は氷点下10℃以下まで下がります。ただ、空気は乾燥しており体感的には、実際の気温に比べて多少過ごしやすい感じはします。
ここに新たな工場をつくるため2002年12月から今年の1月まで約3年赴任しておりました。この3年間の中国の変化は非常に激しく、さらにSARSや抗日デモなど世界的なニュースとなる事件もありました。。
2002年に初めて天津に行ったとき、なんてホコリっぽくてきたない町だと思いました。誰かが「偉大なるいなか」と言っていましたが、まさしくその通りと思いました。煉瓦作りの古い建物が多く、大きなスーパーなどもほとんど無く、町中の空き地では自由市場が開かれ、自転車も多く、のどかなところもありました。でも今はぜんぜん違います。トヨタが進出したのと併せて自動車関連の日系企業が増え、2008年北京オリンピックを控えていることもあり、町の再開発が2003年後半から急激に始まり、大型スーパーができ、車の通行量も増えてきました。でも、そんな町中を歩いて見ると、まだ日本の昭和30年代前半のような景色もあり、現代と混在したような状態になっています。。
その中でいろいろな中国と日本の政治的な違い、国民性の差、言葉の壁などを痛感しました。。
1.人治の国。
ご存じの用に中国は共産党支配の国で行政が非常に大きな権限を持っています。その中でまだ法整備が十分ではないため役人個々の裁量権が大きく、工場建設や設備の輸入などを行う際の許認可をスムーズに行うには関係する役所に顔が利く人がいた方が非常に好都合です。自分でも設備の輸入の際に仲良くなった役人に便宜を図ってもらったこともあり、まさしく人治の国だなということを何度か体験しました。。
2.少ない人材、高いプライド。
広い国土に公称13億の人口がいることから、人の能力の差がとても大きく、人はいても人材は少ないという状態だと思います。優秀な人はどこの企業でも引っ張りだこであるのに加えて、最終的には社長になって金持ちになることを目標にジョブアップを考えています。したがって優秀な人は給料がどんどん上がってきています。逆に学歴も能力も無い人は給料の安い単純労働しか仕事が無く、貧富の差も非常に大きくなっています。この中で大変だったのは採用の際の能力の見極めでした。履歴書に書いてある内容と面接での受け答えで判断するのですが、実際に仕事をさせてみると面接の際にできると言ったことが実はできないということがよくありました。でも、そういう人でもプライドだけは高く、できないとは自分からは決して言いません。
これは、会社同士の交渉でもよくありました。設備の製作を依頼する際には大丈夫と請け負いながら、実際に作った設備ではトラブルが頻発し、何度も修理させているうちに、よくよく確認すると依頼したタイプの設備の製作は実は初めてだったというようなことです。本当に能力の有る人もいます。でも、知っているふりをする人も多いのも事実でした。
3.情報統制。
SARSが発生したときに中国政府が情報を隠したため被害が大きくなったのはよく知られていることですが、中国政府に都合の悪い情報は徹底的に隠されます。教育でも、共産党の方針に沿った人材を育てるため、歴史などは脚色されているようです。でも、これはインターネットの発達により崩れてきています。ただし、インターネットにも検閲があり、都合の悪いHPは強制的に閉鎖させられることがあるようです。
4.コピー天国。
社内情報の漏洩にも注意が必要です。中国は海賊版の天国です。コピーすることに何も抵抗が無く、町中で日本のドラマの海賊版DVDなどが平然と売られています。そんな中で社内情報を管理には十分な注意が必要と思っています。
5.言葉の壁。
中国語は発音が難しく、仕事で使えるレベルまでの習得は難しいのでどうしても通訳に頼らざるをえません。しかし、通訳では伝えたい内容の50%が伝わればよしと思って指示をしなくてはならず、これはかなりのストレスになりました。
現在、中国は世界の工場として欧米や日本にたくさんの工業製品を輸出しております。それに伴って国内も豊かになってきており、日本の高度経済成長時のような状態になっております。このように非常に変化が激しい時代の中国で実際に仕事をし、生の中国の実態に接することができたのは非常に貴重な経験だったと思います。
中国での生活の中で感じたこと、経験したことを思いつくままで書いてみました。今は研究生活とは離れた現場中心の仕事をやっておりますが、早稲田大学や研究室での実験などを通して学んだことが、いろいろなことの根底にあると思っています。
今は平沢研となっていますが、ますます精力的に研究活動を行い、よい成果を出されるのを祈っております。
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