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2006C-3,4 齋藤 貢 1993年大学院修士課程修了  (工学修士)

 
  齋藤さんは学部・大学院とも豊倉研究室に所属した。学部を卒業した時コンピューター関係の企業に就職したが、その後再度大学院に入学し、1993年3月博士課程前期を修了し、旭硝子株式会社に就職した。日本では、学部を卒業して就職し、その後その企業を退社して大学院で再度勉強する例は余り多くない。豊倉の場合も齋藤さんと同様学部を卒業して2年後大学院に進学したが、それはそれでまたいろいろの意味があると経験している。外国ではこのような経歴は珍しいことではないが、これからの日本においては齋藤さんのようなケースは多くなることと思う。1980年代の初、ドイツのアーヘン大学で博士号を取得し、豊倉研究室にフンボルト派遣研究員として留学したJ.Ulrich博士は、豊倉研究室の学生に大学は最短年限で卒業することは必ずしも良いことではなく、自分の納得のいく大学院生活をすることが大切であると話していた。その時ドイツでは博士論文は制度的に4年で作成することは出来たが、博士に相応しい大学院生活をするためには5〜6年を掛けて論文を仕上げることが良いと話しており、彼自身も5年掛けて博士になっていた。齋藤さんは日本における通常の最短年限で学部を卒業したが、その後齋藤さん自身の考えで同じ研究室に戻り大学院で研究生活を送ったが、その研究姿勢は学部時代とは全く異なっていた。今回の記事は旭硝子に就職してからのことを中心に書かれているが、その内容は真面目に活躍している様子が手に取るように分かり、将来が期待される。
 (2006、05, 豊倉記)

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(齋藤 貢)

略歴
1993年 4月 旭硝子株式会社入社
    10月 中央研究所
1999年 4月 千葉工場開発部
2003年 4月 中央研究所


「 近況報告 」

  93年修士卒業の齋藤貢です。お世話になった豊倉先生、平沢先生にはご無沙汰しております。豊倉先生よりご連絡いただき、近況報告を書かせていただきます。

  旭硝子に入社以来、開発に携わってきております。苛性ソーダ製造の電解槽に用いられるイオン交換膜用フッ素樹脂について、製造プロセス開発や新品種スケールアップなどを行ってきました。2003年に研究所に戻ってからは燃料電池用高分子電解質の開発です。 修士の学生時にMM21の地域冷暖房に蓄熱剤が用いられているのを見せていただきました。昼と夜のエネルギー消費の違いから、最大消費量に合わせた供給能力が必要とされるため、供給の平坦化、費用低減のために、夜間に夏は冷熱を冬は暖熱を、潜熱蓄熱剤を入れたカプセルに蓄えるもので、カプセル内の現象が晶析でした。10cm位のカプセルは大きな塔内に多数充填されクリーンなものでした。化石燃料は20年、30年で尽きると言われ、これからはエネルギー産業の時代だと当時感じました。

  新しいエネルギー供給関連の開発に携わりたいとの思いが、最近繋がっているところです。昨年、1号機が総理官邸に設置され新聞などで報道されたように、東京ガスから家庭用燃料電池がモニター販売されました。都市ガスを燃料に、改質器で水素を取り出して供給するものです。電力売電が可能になる環境の中、オール電化で囲い込む電力会社と、都市ガスを用いていずれは定置用燃料電池普及をにらむガス会社とのエネルギーをめぐる競争が垣間見える気がします。

  旭硝子では燃料電池用の膜電極複合材料を開発しており、一昨年には世界で始めて120℃連続2000時間運転達成しています。定置用が80℃付近なのに対して、自動車用は冷却効率から100℃付近の高温運転が望まれています。水素は直接搭載する形式が多くなっており、理論上は水素はガソリンの2倍以上のエネルギー効率で自動車を動かすします。しかし水素を得るためのエネルギー効率が悪く、現状では総合的にはハイブリット方式がもっとも優れているシステムといわれています。

  水素などの燃料を陰極側に、酸素を陽極側に供給して、水素イオンだけ膜内を通過させ、陽極で酸素と反応して電気と水をつくります。燃焼させないのでCO2などの排気がなく、水排出だけのクリーンなシステムです。水素イオンだけを透過させるイオン交換膜は耐久性からフッ素樹脂が用いられ、Dupont、旭化成、3Mなどが開発競争を行っています。安価な水素の供給が確保できれば、10年、20年先には燃料電池車の時代が来るものと確信して日々の開発に携わっております。

  開発の役割の一つとして、新しいビジネスに繋がる新商品の開発を行い、プラントでの製造を行い、新しい価値をお客様に提供することがあると思います。

  プラントへのスケールアップを何度か行ってきましたが、ラボスケールと異なり大型化すると予想もしない現象が起こります。例えばラボスケールで反応速度を少し上げたぐらいでは問題ないものが、大型化すると温度分布を生じ品質の不安定化になったことがありました。均一化する改良を加えて、しばらく後には逆に増速、品質向上を両立することができました。

  この他にも、予想しない驚く現象で悩まされたり、検討時間の限られた中で大型槽を実施する必要に迫られたりとありましたが、そのような中で、製造課とともに何とか問題解決できたり、新品種の製造でオンスペック品ができたときは、やりがいを感じます。

  入社以来、寮・社宅の統廃合、転勤、結婚と6回引っ越しましたが、現在は千葉市に住んでおり、勤務先の横浜まで通勤は片道に約2時間です。いかに心にゆとりを持ち、時間を有効利用し、できるだけ短時間になるように心がけてはいますが。

  豊倉先生の奥様の後輩でもある家内は、毎週土曜日だけ薬局勤めをしており、私は2歳、4歳の息子たちと過ごしますが、平日は子供たちとあまり会えないので大切な時間です。日曜は家族そろいますが、いずれ子供が成長し親と一緒に行動しなくなるかと思うと、貴重な時間に思えてきます(そのように心にゆとりがない場合も多いのですが)。たまにカレーライスを作ると一応は喜んでくれているようです。

  春は近所の公園の桜の下で、自作のお握り入りのお弁当作ってピクニック、夏は筑波山、御岳山、高尾山の低山やプールへ、秋は紅葉を見に秋川のほうへ行き、冬は温泉やソリ遊びを、と屋外活動を一緒にして過ごすことが多いです。

  入社後数年はリクルーターとして研究室を訪れる機会はありましたが、その後は機会が少なくなり、あっという間に時間が流れてしまう日々を過す中で、いつの日か研究室の方々といろいろな話をできる日を楽しみにしております。

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