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2006C-2,2 佐藤晶英 1980年大学院修士課程修了 (工学修士)
略歴 | |||
1980年 3月 | 早稲田大学大学院理工学研究科卒 | ||
同年 4月 | 三菱化成工業株式会社入社・三菱モンサント化成(株)名古屋工場へ配属 | ||
1985年 10月 | 三菱モンサント化成ビニル(株)四日市研究部へ転勤 | ||
1989年 4月 | 同名古屋工場へ転勤 | ||
2098年 1月 | 三菱化学MKV(株)本社へ転勤 | ||
2005年 9月 | 丸井加工(株)へ出向 |
「 大学での経験と会社の仕事の関係について 」
現在私は樹脂加工の仕事をしています。大学を卒業してからずっと汎用樹脂の加工それも業界用語ではフィルムと呼ばれている厚みが薄い膜状のものに携わってきました。このようなものの用途は、農業用・工業用・土木用・包材などと幅広く使用されていますが、通常は直接目に触れるものはあまりないかもしれません。しかしながら、色々な製品を作る上で、大切な役割を果たしています。例えば携帯電話・パソコンなどの電気製品に使用される半導体を生産する工場では、私が関係したPVC製のフィルムがその工程に使用されています。また自動車にも同様に外装部品として使用されています。また、今は農業用のマルチと呼ばれるポリエチレン製の薄いフィルムの生産に携わっておりますが、広く農家では野菜を生産する上では大事な資材です。
今までの仕事を振り返ってみますと、直接に大学で学んだことがそのまま役に立つこと
は多くはなかったかもしれませんが、化学工学という学問は色々な問題に対して広く対応が可能な考え方を提供してくれたと感じています。
樹脂加工の分野のうち、フィルムの表面処理を行う分野がありますが、これなどは私が卒業してから日本化学工学会にその分野の専門の分科会が発足しています。私が会社に入ってから勉強した時、アメリカでの研究成果に基づいての話が大変役にたちました。アメリカでは1970年代に多くの研究が化学工学の手法によりされていました。日本では当時はその分野では研究はあまりされていなかったようです。そのため日本にはあまり良い研究はなかったのですが、アメリカの研究が進んでおり、それを実際の仕事の場面で理解でき活用できたのは大学で化学工学を学んでいたからだと思います。
その当時は不安定なエマルジョンをフィルムに均一に塗布することはかなり難しい仕事とされ、また会社の他の開発者により塗布液は完成していたのですが、手作業でフィルムに塗りつけるような状態でした。そこで安定的に塗布ができるようなプロセスを考案しました。その結果会社はその仕事でかなり利益を上げることができました。最近特許により利益を上げた場合会社より多額の表彰金を受ける制度ができましたが、その第1号の対象になりましたので間違いありません。私個人は製法にまつわる仕事であり、ノウハウのかたまりでもあり、あえて特許をださなかったので、表彰対象からもれてしまいました。今から振り返ると残念な気持ちもしていますが、製品は特許だけではできないものであるということだと思います。数年前話題となった中村さん発明の青色発光ダイオードの件も、発明者に限らず私のようなプロセス技術者も関与していたものと思います。その人たちの気持ちが良く理解できます。話がややそれましたが、まとめふうにいいますと、大学で学んだ直接の知識ではなく、手法ともいうべき点が役にたった事例ではないかと思っています。
以上は私個人のささやかな事例ではありますが、化学工学の基本的な考え方である物質収支は色々な場面で役に立つ考え方であると思います。会社を経営する上で、いわゆるお金の収支を取りますが、これは物質をお金に換えたと思えば良く、このお金がどのように変化していくかが重要な経営テーマです。会社は適正な利潤を上げていくことを考えることが重要ですが、その入出を検討することは、物質収支を検討することと同類と言ってもよいかもしれません。よって経営を考えることにも大学で学んだことが大いに役にたっていると言えます。
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