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豊倉賢略歴
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2005C-6,3 島田修二 1973年大学院修士課程修了  (工学修士)

 
  島田さんは豊倉がアメリカから帰国した翌年の4月に化学工学コース3年生に進級し、化学工学コースに設置された科目の講義で顔を合わせるようになった。当時は日本の大学も学生運動が活発で、理工学部キャンパスもその影響を受けていた。しかし、応用化学科の高学年は工化、化工の両コールに分かれた関係で化工コースは少人数クラスの講義が多く、豊倉が帰国早々の講義では学生と密な対話が出来、学生運動の影響を受けることなく良い雰囲気で講義を進めることが出来、その当時の島田さんのことは今でもハッキリ覚えている。4年生進級時の卒論配属で豊倉と一緒に研究活動をするようになり、それは3年間続いた。その時の研究テーマはそれまでよく行われてきた立方体形状結晶の晶析を一歩前進させ、工業操作でしばしば晶析する柱状晶や針状晶の晶析特性をMSMPR型装置を用いて行った。この研究成果は化学工学論文集:1,No.2,223(1975)に発表した。この研究はこれからの工業操作で対象になる新しい現象解明を目的にしたもので、その後長期に亘って豊倉研究室で行われた研究の先駆的成果をあげた。このグループの研究成果を考えた時、島田さんの奇知に富んだ発想とそれを発展的に考えて常に前向きに進めた研究態度の貢献が大きかったと思う。今回寄稿された記事を読むと島田さんの学生時代の良い面が卒業後の活動に大いに寄与していたように思えた。

  今回島田さんにお忙しいところ、研究室の同窓生に卒業してからの状況や後輩に参考になるようなことを執筆して研究室のHPに寄稿して頂くことをお願いした。早速頂いたこの記事を読んで、豊倉はいろいろのことを楽しく思い出した。後輩にとってもこの記事は参考になることが多いと思う。島田さんの卒業後の略歴は以下に掲載しますので、今後島田さんにご連絡を取りたい方々はご参考にして下さい。  (05年11月 豊倉記)


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(島田 修二)

S.48.04.01 東燃化学社 川崎工場勤労課
S.48.10.01 東燃化学社 川崎工場製造技術課
S.55.05.16 東燃化学社 川崎工場樹脂技術課
S.58.06.01 東燃化学社 川崎工場ポリプロピレン課
S.59.03.28 東燃化学社 技術部樹脂技術課
S.60.03.28 東燃化学社 樹脂事業本部樹脂第二部工業材料課
S.61.04.01 東燃化学社 樹脂事業本部樹脂第二部生産管理課長
H.01.03.29 東燃化学社 技術部樹脂技術課長
H.04.09.01 東燃化学社 千鳥工場樹脂技術部長
H.05.03.29 東燃化学社 技術部副部長
H.10.11.01 日本ポリケム社 川崎工場製造部長
H.11.03.29 日本ポリケム社 川崎工場長
H.14.11.01 日本ポリケム社 生産管理部 部長
H.15.09.01 日本ポリエチレン社 生産管理部 取締役 部長


卒業してからのこと・・近況から遡って

近況から遡って、どのような考え(ポリシー)で職場、職場で仕事を進めてきたかをまとめて見ました。特にストーリーはありませんが、皆様のご参考になれば。

現在は、日本ポリケム社で統括部を管轄しております。(05年6月末異動)統括部では、物流、購買、システムを担当しており、今まで担当した生産/技術とはかなり毛色の変わった職務です。ただし、論理的に仕事を進める習慣が身についていますので(学生時代には考えられない!)、業務を図解したり、作表したりであまり苦にならずに済んでいます。工場長時代は、新しい考え方、アイデアを推進しようとすると「全員迷惑ですから」とかなりの抵抗を受けましたが、本社ではどしどしアイデアを実行できますので、本社勤務のほうが向いていそうです。

日本ポリケムでは、日本ポリエチレン社(後述)と日本ポリプロ社(三菱化学とチッソ社の合弁ポリプロピレン製販会社)から、上記業務を委託されております。物流では約200万トンの樹脂販売に伴う物流、購買では主原料(エチレン、プロピレン)を除く全ての副資材の購買を任されており、取り扱う数量が多いことから、業務効率化はアイデア勝負であり、コスト削減額も巨額になります。

この業務で心しているのは、取引関連会社とのWin-Winの関係を如何に気配るかです。社内を説得するには、ステークホルダー論、社会状況などを取入れ将来に亘ったストーリー性が必要です。また、時間はかかりますが社内の根回し(特に社内の論客とは事前にじっくりと話しを聞いてもらいます)が特に重要で、是が非でも経営会議の承認を取るのには必須要項です。(現在、燃料高騰によるトラック業界の問題、副資材の逼迫など頭の痛い事項が山積みです。)

一方、システムでは06年1月に販物系の基幹システム更新プロジェクトリーダーを担当しています。独SAP社のERPを導入いたしますが、てんやわんやの忙しさです。(このくそ忙しい時に(失礼)、豊倉先生から直々の投稿依頼のお電話を頂き、脈絡のない投稿でよければとの断りで引き受けた次第です。)単なるシステム更新ではなく、事業管理、採算管理、データ解析に一工夫したシステムを構築いたします。自分から言うのも変ですが、よく出来たシステムであり(来年1月に稼動出来なければ、巷で騒がれているシステム障害ということで、社内外から袋叩きになりますが)、システム稼動のゴタゴタがひと段落すれば、システムを使い倒して、色々な業務改善を実現したいなーとアイデアを暖めています。

このシステム更新PJには、システム会社の人も入れると約150人の人が関わっており、システム更新作業も本当にシステマティックなものだなーと一人感心しているこの頃です。一番重要な点は、厳しいスケジュール管理と、問題が生じた時のプライオリティー付け及び割切り(決断)ですが、物事を複雑に考えられない私にとっては、毎日が大変でもありますが、やはり向いているのかも。(単純が一番ですよ。また物事を前向きに考えること。失敗したら、やり直せばいいさ、との割切りが出来る訓練を積んでください。いざという時に助けてくれる人を、何人持つかもポイントですが)

日本ポリケム異動前は、日本ポリエチレン社(三菱化学、東燃化学(PO事業を三菱化学に売却)、昭和電工、新日石化学の合弁ポリエチレン製販会社)で生産統括を担当しました。三菱化学は三菱油化、三菱化成の合弁会社でありますから、5社のカルチャーを持った6工場(生産拠点)の生産統括及び生産技術センターを担当いたしました。

2社の合弁でも(だから)難しいのに、5社のカルチャーを持った工場を同じ方向のベクトルに合わせることが一番心を砕いた点です。公明、公平を基本にし、透明性を徹底しました。一番心強かった点は、各社、工場には長年築き上げた技術があることです。各種情報が集まって知識となり、知識の上に知恵が生まれる。この知恵が一番大切であり、この知恵を集約して、Best Practiceを構築し、これを全ての工場に展開する。この為の仕組みとして、以下のことを実行いたしました。(大変なお金がかかりましたが、社長から積極的にバックアップしていただきました。) 工場長、工場管理課長、製造課長、製造係長、製造係員それぞれのネットワークを作り定期的な会議を開催し、情報交換する。情報交換は各場所で開催し、会議後は懇親会で、顔を覚えてもらう。

製造係員は互いに工場訪問し、現場レベルでの情報交換、運転ノウハウを議論する。(今まで製造係員が他工場を訪問する機会は全くなく、係員のモラールアップに非常に寄与) 工場管理課長、製造課長の他工場への異動を積極的に実施。などなど。

また、製造のステータスをあげるために、各種表彰制度を立ち上げ、製造現場で社長直々に表彰をして頂く。(ちょっと浪花節的ですが)これは、経営会議などで、製造トラブルなどを報告する機会がありましたが、他部長から文句ばかり言われ、これでは製造現場が浮かばれない。製造現場では、運転、保全、品質保証、協力会社などの業務が全て問題なく、かつ愚直に規程・規則遵守を継続しなければ、安全/安定運転は確保されないが、これは気が遠くなるような努力の結晶であり、目標を達成したら皆で感謝するようにしなれれば、現場はやってられないと、社長に直訴して、表彰制度設立にこぎ着けました。現場からは大変感謝され、現場の意識高揚に寄与していると、自負しております。(ただし、マンネリ化に陥らないように気配りする必要ありますが)

また、業務をなるべくIT化することを推進し(人はもっと価値のある仕事をすべきであり IT化、自動化できるものは出来るだけそのようにするための金をかける。)、またIT化達成のスピードアップのためには、人を集中投入して早期に完成させる。人はタイトですが、全工場からかき集めれば、なんとかなる、という点も強みになりました。生産技術/運転技術データベース、品質データベースなどなど、大変役に立つものが出来ましたが、使いこなさなければ、宝の持ち腐れ。如何に簡単にアクセス出来るかに知恵を絞りました。会社の基盤は出来ましたが、今後、厳しい生き残りの戦略を実行していく段階です。これは後任に任せるとして。

東燃化学時代を振り返って。

千鳥工場長時代。
  千鳥工場長時代にTPM(Total Productive Management)活動を導入しました。
TPMとはなんぞや?の説明は省きますが、有名な活動ですのでインターネットで調べて見てください。この活動の功罪はありますが、なんとかとはさみは使いよう。

この活動で、目からうろこが2点ありました。一つは全ての活動を、工場全員に「見える化」すること。当たり前のことですが、なかなか思う様に行かないものです。ここでの教訓は性善説に立ち、出来る限りの情報は工場全員に「見えるようにする」。これは、日本ポリエチレンの生産統括担当の時に、大変役に立ちました。
また、3現主義(現場、現物、現実)も。 日本ポリエチレンでは工場トラブルは、その工場の人だけでなく、全社の中で有識者を募り、その工場の現場、現物、現実で議論する習慣を作りましたが、この3現主義も大変役に立ちました。

技術部長時代
ある製造ラインの生き残りをかけて、大胆なプロセス転換を立案。触媒転換まで遡る計画でしたが、投資額が大きいことから中途半端な計画を立ててしまい、だいぶ回り道をしてしまいました。あるべき姿を描き、少々のおいしい話に振り回されることなく、信念を貫くことの大切さを学びました。

この時、最終絵姿でのプロセス転換を、当初計画の投資額の40%削減でやれ、と怖い本社役員から言われ、その削減計画を作りましたが、工場から総反発。出来るわけがないとそっぽを向かれました。削減案を練りに練りましたが、目標削減額に到達せず、唯一の味方のメカ課長と「地震でも起これば可能になるさ」と諦めずにいましたが、それこそ神風が吹いて、目標値をやや未達のところで完成。褒められたことがなかったその役員から「よくやった」と言われた時には本当にうれしかったことを覚えております。人間諦めてはいかんと思いました。この経験が、現在も一つの強い地震(自信の間違え)となっております。

研究開発計画で、毎年盛りだくさんなプログラムが作られ、1年後のフォローアップで成果が出ていない状況にありました。研究開発会議で、「総花的なプログラムはいい加減にやめ、3テーマに絞って、成果を出すべき。どうしてもやりたい研究があるなら、3テーマの成果を出しつつ、アンダーグラウンドでやれ」とけしかけ、次年度は、成果が得られました。 この体験があり、目標管理は3つに絞る手法を現在も出来る限り踏襲しています。3つは 多くもなく、少なくもなくなかなか薀蓄のある数字です。

樹脂技術課時代
ポリプロピレン新設ラインの設計プロジェクトに参加できる機会に恵まれました。私のエンジニアーのバックボーン形成を醸成した大切な時期でした。

ちょっと書くのに疲れてきましたので、はしょります。

一つだけ、若いエンジニアーの人の記憶に留めて欲しいのは、設計に自信を持つのはいいのですが、プロセスの一箇所に必ず余裕(設計見込みより大きな外乱があっても吸収出来る)をどんな形でもいいですから、プロセス設計に盛り込んでください。10年に一度でも役に立てば、めっけもの。

製造技術課時代
次回の執筆にしたいのですが、いつになるか分かりませんので、これもはしょって書きます。担当するプラントが事業撤退をするかどうかの瀬戸際に立たされました。毎月親会社から独人のエンジニアー(彼は新設プラントを運転することなくスクラップ化することを提案し、大変なプロモーションがあった強持ての人)が来て、コスト削減の実績をフォローされた。拙い英語での説明もさることながら、決定的なコスト削減策が無ければ、プラントを停められてしまう危機感で一杯でした。この時、上司が社内レポートを読んでいて、こんなアイデアがあるぞ、プラントテストしたらどうか?との提案がありました。その提案は、常識的には品質を悪化する条件であり、研究者(所長クラス)に相談したら、馬鹿なことを言うな、とケンモホロロ。製造からも反対されましたが、条件を少しずつ変更してフォローすることを条件にテストを開始しました。結果は、気にしていた品質の悪化はほとんど無く、かつ特性のひとつである品質が飛躍的に向上しました。この結果、プラントの小改造は必要になりましたが、今までこのプラントが抱えていた問題点をすべて解決することが出来、大変なコストダウンが図られ、プラントは現在も運転されていますし、能力増強もされました。研究者の言葉を信じてテストを中止していたら、プラントは停止されていたと思います。反対があっても、まずやってみること。そこから道が開けます。

研究者に馬鹿にされたが、エンジニアーの直感で、しつこく研究?し、最終的にはこちらが正しいことを証明し、特許化したものもあります。これは上記の体験があったから頑張れたと思います。研究者と対立する必要はありませんが、やはり疑問に思ったことは取り敢えず、やってみることが大切だ、というバックボーンが出来あがったエピソードです。

以上、拙い経験を羅列的に書かせていただきましたが、少しでも皆さんのお役に立てたらと思います。

  以上

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