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2005C-5,1 岡本和男 1963年学部卒 (工学士)

 

私のサンデー毎日(4)

 前回は旅行の話で寄り道してしまいましたので、2回目からの続きとして「地方史(郷土史)とこれからの自分の生活との関わり」についてお話したいと思います。

 我孫子市史の近世篇執筆に関わったことを前に触れましたが、その出版後、市史研究センターで市民向けに「市史を読む講座」を開いて各執筆者が担当部分を解説することにしました。10回に分けて第1回を行いましたが、一月おきに開くので2年近くかかります。それが終わったら、既刊の近現代篇に移ろうという気の長い話です。今年はまた、市史の発刊を記念して講演会を開き、戦国時代のこの地域のことを話してもらおうと企画を進めています。これらは、市教育委員会の後援や共催といった形をとりますが、みな自分たちの手作りのものになります。講演会や史跡見学会は毎年1回ずつ開いています。会員は80人くらいですが、活動中心は10人ほどでいつも進めることになります。僅かな会費のみの運営のため、四苦八苦しています。

 われわれの市民団体は日頃は古文書講座2つ、石造物などの金石文を調べるグループや自由に歴史研究を進め検討しあう研究講座グループなどにそれぞれ参加して研究を楽しむ、いたってマジメな会です。私は会報とホームページを担当しています。ご興味あれば覘いてみて下さい。

 HP Address:http://www.geocities.jp/abikosisiken/

 今、私は仲間と協同でこの地域の江戸時代後期に生きたひとりの俳人の句帖を見つけ、持主で子孫の方とこれを解読して(なにしろ筆で書かれた変体仮名ばかりの、しかも虫食いの多い文書なので)、活字にして自費出版しようとしています。俳句というと私たちには手におえませんが、意味を知ろうとするといろいろ調べる必要が出てきて、これが実に楽しいのです。

 例えば、「鞠に行沓さけてよる菊見哉」(まりにゆく、くつさげてよる、きくみかな) 菊見というのは今もよくある菊の品評会のようなもので、昔から盛んだったことは分かりますが、「沓避けて」か「沓下げて」か問題で、はじめは蹴鞠(ケマリ)をしている菊人形のそば近くに寄って見る、と言っているのかと思いましたら違いました。当時は将軍の御前で蹴鞠の会が披露されています。庄屋や分限者は蹴鞠の飛鳥井家から免許をもらったりして盛んだったようで、江戸の料理屋には鞠場を備えているところもあったといいます。蹴鞠を楽しんでいる人々の絵も見つかりました。当時の人はいろいろな遊びを持っていたことを知りました。句はたいしたことはなくとも、我孫子あたりの百姓が江戸の文化を伝えてくれた訳です。

 この人は当地の百姓で組頭の家の生れですが、将軍吉宗の享保時代に、当地に摂津国の(今の神戸市の)方からやってきて酒造を始めた人の2代目にかわれて養子となり、分家をした人です。若い頃から俳句が好きで、やがて師匠から俳諧秘伝を授かったのですが、財を多く蓄えたわけでもなく、村の子供たちを教える手習い師で一生を終えました。百姓俳諧ともいえます彼の作句からはしかし、当時の人々の生活---質素でも「信」を大切にして、共に講を組んで信心深く、友や組中と交わり、村人の行事(民俗といいます)を楽しむ、といったゆとりのある日々を送ることもできた生活を知ることができます。

 ところで、郷土史というのはそこに生まれ育った人が郷土自慢をするものと思ってしまう面があります。私は31年前にそれまで全く知らなかったこの地に移り住んで、大正時代に作られたこの地の郷土史を出発点に、様々な村の歴史や人々の具体的な事跡を調べ、学ぶうちに、自分の住んでいる土地への愛着も芽生え、何よりも自分の‘いるところ’を得た思いがしています。つまり、アイデンティティを見出し得たという事でしょうか。狭い範囲の土地の歴史は素人でも発掘や新発見ができる可能性をもっています。そこからより大きな地域や国のことを自分で考えることができ、その結果、それが自己を見出す場ともなるように思います。今の世の中は複雑でグローバルにものを見なければならないといいます。しかし、年くった今、人の言葉を鵜呑みにしたくない思いを、こんなところから追いかけてみたらと思う次第です。結局は郷土バカになってしまうのかも知れませんが。私としては、今後も自分の眼で自分の周りのことどもを調べて行きたいなと思っています。時代の範囲をできるだけ広げて。

 次回は、街道歩きと散歩エクササイズについて書いてみたいと思います。


岡本 和男
〒270-1132 千葉県我孫子市湖北台5-15-17
Mail Address: kaz_.okamoto@nifty.com

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