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2005C-3,3 松田文彦 1976年大学院博士課程前期修了 (工学修士)

 松田さんは卒業論文では鵜池さんが始めたスルファミン酸反応晶析に関する研究を仕上げ、その成果を1975年にチェコスロバキアのウスチで開催された国際晶析シンポジウムで発表した。大学院では研究室で新たなテーマとして始めた尿素アダクトに関する研究を行っていた。この時期の研究室は豊倉が米国から帰国して5年余り経過した時期であり、新規テーマも軌道に乗って活気にあふれていて、松田さんは研究室の発展に大いに貢献した。研究室時代の松田さんはどちらかと云えば物静かで落ち着いた、冷静に考えて研究を進めるタイプであった。仲間には親切で物分かりのよい、仕事の出来る学生であった。卒業後も中央研究所に所属していた関係と思ったが、国内の学会にはしばしば参加して元気な姿を見せていた。
 今回はオルガノに就職してから20余年を経過してから、特許部門に移りそこで活躍している経緯等を記事にしてもらった。近年特許に関する係争は各方面で話題になっており、これから技術に拘わる人は避けることが出来ない分野である。研究室の卒業生もそれに関する分野で活躍する人が増えてきており、同門卒業生は仲間意識を持って大いに知恵を出し合い、助け合って行かねばならないことと思いながらこの記事を読んだ。   (05、5 豊倉記)

(松田文彦さん略歴)

S49(1974)3月 学部卒業 卒論テーマ「スルファミン酸の反応晶析」
S51(1976)3月 修士課程終了 修論テーマ「尿素アダクトの反応晶析」
同4月      オルガノ株式会社入社、新人研修後10月より中央研究所勤務
S56(1981)4-9月 工業技術院微生物工業研究所(つくば)で固定化酵素の研究
S59(1984)4-10月 米国ローム&ハース社スプリングハウス研究所で弱塩基性アニオン交換樹脂の研究
H10(1998) 総合研究所特許部課長
H16(2004) 法務特許部長

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(松田 文彦)

「研究から法務特許へ」

 オルガノ株式会社に入ってすでに28年が過ぎました。今は入社した時には考えも及ばない法務特許部におります。この間いろいろなことがありましたが、皆様のお役に立ちそうなことについて書かせていただきたいと思います。

 まず最初にお断りしなければいけないのは当社は一体何をしている会社なのかということです。通常の当社のイメージとして一番大きなものは「公害防止」「環境保全」かと思います。しかし、当社の創業はイオン交換処理が原点であり、現在でも、イオン交換樹脂を使った純水装置やさらにRO膜等を使った半導体産業向けの超純水装置事業が大きなウェイトを占めています。もちろん、近年の環境問題に対応すべく、排水処理、地下水・土壌処理等の研究に注力しており、今後さらに環境関連事業が拡大することと思います。

 さて、21年間研究所に在籍しましたが、私の研究テーマは環境とはほとんど関係なく、活性炭による吸着処理、イオン交換樹脂による糖液(ショ糖やブドウ糖)の精製、イオン交換樹脂による発電所排水中のCOD成分の除去、イオン交換樹脂を担体とする固定化酵素バイオリアクター、クロマト分離装置(擬似移動層、3成分分離等)などでした。3成分分離装置は吸着学会で表彰され、例えば、甜菜糖搾汁液や糖蜜からのラフィノースやベタイン等の有効成分の分離や医薬品原料の分離精製に使われております。

 私が特許部に移った時の特許部は研究所の組織の一部であり、比較的簡単に異動となり、移ってすぐは、特許出願が主業務でした。そのうち、特許部が総合研究所から切り離され、法務室と合併して法務特許部となりました。法務に関わるとは夢にも思いませんでしたが、そのころ他社から特許侵害訴訟を提起され、この訴訟に関わらざるを得なくなりました。

 その特許係争の経過と現状は次の様になっております。原告の特許は無効であるという弊社の主張に対して、特許庁の無効審判では特許有効とされ弊社の負けでしたが、東京地裁では、特許には無効理由があるので特許侵害を主張することは権利濫用であるとして、弊社の勝ちとなりました。すなわち、特許庁の審決と地裁の判決とのねじれ現象となりました。弊社は無効審判で負けたため、東京高裁に審決取消訴訟を起こしました。一方、原告側は、地裁で負けたため、高裁に控訴すると同時に、訂正審判により特許を訂正しました。その結果、高裁における審決取消訴訟では、訂正したということは訂正前の特許が無効であると特許庁が認めたのであるから、『訂正前の特許は有効であるという特許庁の審決』を取消すということになりました。現在は、侵害訴訟の方は高裁で控訴審の審議がなされ、特許庁における特許の有効・無効については訂正後の特許について無効審判のやり直しとなっております。

 ところで、なぜ法律の素人の技術屋が法務関係までやるのかという疑問について、私は最近次のように考えています。法律は人間が考えたものであるのに対し、科学・技術は自然法則に従うものであり大きな違いがあります。しかし、両者には『証拠と論理が必要』ということでは共通点があるのではないかと思います。

 最後に、弊社の環境関連技術の一つを紹介させてください。PCBは絶縁物質としてトランス等に広く使われていましたが、昭和47年に製造が中止され、製造メーカーや工場などに長期間保存されたままになっています。紛失事故や容器破損事故などが出ており、その処理が必要な事態になっております。このPCBなどの有害な難分解性物質を分解処理できる技術として超臨界水酸化があります。水を374℃、22MPA以上の高温高圧下におくと水は超臨界状態となります。この超臨界水には

@油や溶剤が溶ける
A分解に必要な空気・酸素が自由に混ざる
Bどんな有機物でも完全に酸化分解できる

等の特長があります。したがって、この超臨界状態の水を使用してPCB等の難分解性物質を分解できます。この技術の特許について、弊社は米国の会社から基本特許の実施許諾を得ておりますが、周辺特許については弊社の多数の特許出願があり、徐々に特許査定を得ている段階です。

以上、取りとめもないことを書きましたが、多少なりとも皆様のお役に立てれば幸いです。

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