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豊倉賢略歴
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2004C-5,2  渡沼幸弘 1960年大学院修士課程修了  (工学修士)


  渡沼さんは1957年4月より3年間学部の卒業論文研究から大学院修士課程修了まで豊倉研究室に所属し、当時博士課程に在籍していた山崎康夫さん(現在日本化学工業在職)と共同で晶析による精製分離法の基礎的研究を行った。私は渡沼さんが学部高学年在籍時のクラス担任であった関係で、3年次生対象の中国地方工場見学旅行を渡沼さんと一緒に行った。その時、一緒に旅行した学生の意見集約や種々のことで相談に乗ってもらって大いに助けられた。卒業後は正月に山崎さんらと一緒に私の自宅に来ていろいろ意見の交換をしている。渡沼さんの性格は明朗・闊達で、目標に向かって建設的・積極的に行動する人物で、その上種々のことに幅広く・良く気が付く頼もしい卒業生です。卒業後直ちに東洋エンジニヤリングに就職して活動し、厳しい時代のエンジニヤリング会社で貴重な経験をした。最近はボレロ株式会社で時代の先端を行く新しい仕事で活躍してます。この間種々の業界で幅広く大勢の人達と交流を重ねており、それらの経験を通して如何に産業界の荒波を乗り越えて来たか、そのベースにある哲学と平素の努力をHPに記述しているので、それは大勢の卒業生の参考になると思う。また、渡沼さんは種々のことで同門の仲間と意見を交換し、協力して進むことを期待しているので、渡沼さんの記事に関心のある人は渡沼さんに直接連絡して下さい。渡沼さんと面識がなく、直接連絡取りにくい人は豊倉に相談下さい。
( 豊倉記   2004、11 )

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(渡沼 幸弘)

「 早稲田大学大学院修士課程修了からの20年を振り返って




 早いもので1985年3月に修士を終了してから、20年になってしまいました。自己紹介も兼ねてこれまでを振り返ってみてみたいと思います。私にとってのこの20年間は、大きく3つの期間に分けることができます。
最初は修士修了後、東洋エンジニアリング株式会社に入社してからの約7年間です。この期間は化学プラントのプロセス設計をしていました。主として石油精製プラントの設計を担当していました。大学では化学工学を専攻していたはずなのに、伝熱計算や蒸留計算にとまどい、避けていたはすの物理(流体力学)にはまってしまった時期でもありました。とはいうものの、研究室時代の知識が最も適用できた時期ではなかったかと思います。

  二番目は、プロセス設計の現場から研究所(化学会社の研究所とは異なり、設計に必要な情報の収集や新しい技術の導入が主たる業務です。)に移籍してから2000年末までの8年間です。この期間には、情報技術をベースに様々な経験をしました。プロセスシミュレータの導入・検証、多相流体の流動特性、ピンチテクノロジーを利用したプラント改造、線形計画法によるリファイナリー建設のフィージビリティスタディ、用役系・プロセス系の動解析、ニューラルネットワークや制御系のシミュレーションなどです。ようやくプロセスエンジニアとしてひとり立ちできかけた時期での転籍でしたので、それまでの知識や経験を土台に、様々な事を経験することができました。自分自身としても、それぞれの仕事の結果について相応の自信と満足感を得られるようになったのもこのころでした。

 三番目は、現在働いているボレロ株式会社に来てからの4年余りです。ここでは、これまで大学やTECでの知識はまったく役に立たたず、ほとんどゼロからの出発でした。ボレロとは、貿易(物流・決済)にかかわっていらっしゃる方はご存知の方も多いかと思いますが、電子化した物流や決済で必要な書類をインターネット上で安全に配信するためにPKI(Public Key Infrastructure)に基づいた基盤を作成し、船荷証券についてはその権利・義務を電子的に管理するシステムです。1990年代半ばから開始された欧州共同体でのプロジェクトにその端を発し、数年前から実用化が開始されています。私の仕事は当初、このシステムの顧客への技術サポートでしたが、数年間の紆余曲折があり、現在は一般企業への営業、関連省庁対応、そして最も大きな割合を占めるのが導入企業先へのコンサルティングです。詳細について興味のある方は私にご連絡いただければ結構ですので、細かい話はこの位として、ここで言いたいことは、今の仕事の内容は、晶析どころか化学工学とすら全く関係ありません。(ただ、営業活動などもしてはいますが、自分自身のマインドとしては常にエンジニアであり続けていますし、本来の業務もそうであると信じています。)

 これを読まれている方は、脈略の無い仕事をしていると感じられるかもしれませんし、実は良くあることだと思われるかもしれません。確かに仕事をする上での知識という面で判断すれば、かけ離れているものが多く、結晶の粒径分布を議論できても流動解析はできませんし、プロセスシミュレータで、常圧蒸留塔のシミュレーションができても貿易実務には何の役にも立ちません。ですが、仕事への対し方という観点から考えると、実はそれほど変わらないのではないかと感じています。私の場合には、仕事の内容や周りの人にも恵まれて、非常に運良く、いろいろな良い経験をさせてもらいながらここまでたどり着いたと思います。その土台となったものはやはり研究室での3年間にあったと思います。研究のアプローチの方法、考え方は何も大学や研究所で研究している技術者だけが必要なわけではなく、おそらくありとあらゆる仕事に対して適用できるのではないでしょうか。その中核となるのは先生の言われる“オリジナリティ”だと思います。

  今の仕事では、道具や手段を変えること(情報技術の利用)をきっかけにして、業務自体を変えてしまう、さらには、取引関係や関連会社との関係まで手を入れることがあります。従来の業務や手段にとらわれている間は大きな変化は期待できないのは実業の世界も同じではないでしょうか? 現状を打破できない壁を乗り越えていくには、それまでの常識や考え方を超えたものが不可欠だと思います。

 一方では、仕事柄かなり多くの企業の方にお会いしますが、その中で時々感じることがあります。それは、与えられている、あるいは指示されていることに対して必要最小限の範囲の仕事しかしていない人が多いのではないか、また一方では、日常業務に忙殺されてしまい、業務をこなすことで精一杯という人も多いということです。
こういった状況では新しいもの、より効率のよいもの、付加価値の高いものを生み出す余地はありません。現状に甘んじてしまい、疑問や問題意識を持たなくなっています。ここで必要なのは目的意識と問題意識を持ち、良い意味で現状を否定することです。その目的を達成するためには、必要な技術や情報等を集め、試行錯誤や検証を行い、実行に移し、その結果を評価しノ、ということが必要で、これらのプロセスは研究であっても、プラントの設計であっても、貿易業務であっても何も変わらないと感じています。
私自身、これから先、どのような仕事をしていくかはわかりませんが、このことさえ忘れなければ、自分なりに納得できる仕事ができると思っています。

  最後に、貿易にかかわる物流・決済で問題を抱えている方がいらっしゃいましたら、ぜひ声をかけてください。よろしくお願いいたします。

渡沼 幸弘
ボレロ株式会社
TEL : +81-(0)3-3277-2610
FAX : +81-(0)3-3277-2619
Mobile : 090-3098-6309
Mail : yukihiro.watanuma@bolero.net
URL : http://www.bolero.net/
http://japan.bolero.net/



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