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2004C-4,4  秋谷鷹二 1972年大学院修士課程修了  (工学修士)


  秋谷さんは昨年7月、31年余勤めた通産省の研究機関から財団法人「造水促進センター」に転職され、1年を経過しました。この機関は私のような外の人間からみると、可成り近い関係のように見えたのですが、実際転職するとなると、色々のことがあったようで、この1年間経験したことを記述して貰うと、定年間近になって転職を考える人にとって参考になることも多いのでないかと思いお願いしました。この1年間のことは時々聞いていましたが、文章を読まして頂くと、別の目から見た話も聞けて為になることが多いと思っています。その内に何人かの人と一緒に会って話を聞けると年を忘れて新しいものに興味を感じて益々元気になると思いますので、その日の来ることを期待しながらお読み下さい。秋谷さんには2004C-1,2にも記事を書いてもらいました。その時も秋谷さんを紹介しましたので、お時間があればそれもご参照下さい。(豊倉記)

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(秋谷 鷹二)

転 職 し ま し た


 私は、平成15年6月30日付けで31年3ヶ月勤務しました独立行政法人「産業技術総合研究所」を退職し、同年7月1日より財団法人「造水促進センター」へ転職しました。早稲田大学大学院を昭和47年に修了し、ただちに東京工業試験所(その後、つくば研究学園都市に移転し、名称を化学技術研究所、化学系国立研究所の再編により物質工学工業技術研究所、省庁再編に合わせ、旧通産省傘下の国立研究所が統合し、独立行政法人産業技術総合研究所)に就職しました。その間に「海水淡水化と副産物の利用」、「廃熱回収に関する研究」、「スーパーヒートポンプ・エネルギー集積システムの研究」および「エコ・エネ都市プロジェクト」等の研究開発に従事してきました。これらの研究は、いずれも旧通産省あるいはNEDOが主体となって民間企業とともに共同で実施してきたものです。これらのプロジェクトの実施において国立研究所の役目は、研究開発の進捗に必要不可欠な基礎研究を担当するとともに円滑なる進捗を推進するための技術アドバイザー的な部分も担当します。従って、私も、プロジェクトの運営主体である経済産業省やNEDOには良く通いました。この様にして国が主導する研究プロジェクトの進め方について勉強を進めて来ました。また、担当する基礎研究の部分では、大学院終了後も引き続き豊倉先生にご指導をお願いし、昭和63年にこれらの成果を「晶析操作を用いる化学プロセスの開発に関する研究」として取りまとめ、母校より工学博士の学位をいただきました。

 この様にして、研究所の内外の研究者、技術者と楽しく過ごしてきましたが、昨年の春に、先に書きました財団への出向の話が持ち上がりました。私が東京工業試験所に入所し、その時にいただいた研究課題が「海水淡水化と副産物利用」であった事を思えば、まさにこれはご縁と思いました。また、近年の海外事情では、水不足に悩む国の様子、なかでも家庭を直接守る主婦や幼い子供たちの水への悩みを知りながら、平和な日本の中で水を大量に消費する自分自身に割り切れない感情が有った事も事実ですので、早速に承知しました。残り僅かな研究員生活における成果とこれからの財団生活で期待できる貢献を比較した結果、やはり財団活動を通じて世界の水不足の解消に寄与する事の方が大きそうだという期待も、この転職を後押ししました。

 この様にして転職してからちょうど一年が過ぎました。ここで、この一年間の生活を振り返ってみますと、まず一番大きな事は、心臓にメスが入った事です。転職後、やはり、大きなストレスがあった様です。ある日突然に、喘息の症状が出ました。何日か満足に横になり、寝る事も出来なくなりました。結局自宅近くの病院に緊急入院しました。診断の結果、心臓嚢に水が多量に貯まり、その水が肺に排水される際の影響で喘息症状を示すと云う事でした。貯まっている水が少量であれば、外部から注射針にて排水する事も可能であると云う診断もありましたが、既に手遅れで、貯まっている水が、多量のため心臓嚢に直接チューブを通し、このチューブにより排水するとの診断で、ベットが空き次第手術と云う事になりました。手術前には、担当医から具体的に手術の方法について説明を受けますが、この説明を受けながら、学生時代に化学工学の授業に出ていた内容が多く含まれていることに気がつき、手術への理解も深まり、その手術への恐怖感が少なくなりました。具体的には、心臓嚢に差し込むチューブには、その先端に細い溝があるという事の説明を詳細に受けました。チューブに溝を刻み、排水を効率良く行うというのは化学工学者にとっては、常識に近いのではないでしょうか。心臓病一般の食事については、まさに浸透圧そのものの説明でした。おもわず喘息で悩みながらも笑いがこぼれたところでした。幸い手術は順調に済み、退院後の体調も順調です。心臓というキーワードで入院すると、その時点から患者さんは車椅子に乗せられ、食事は厳しい減塩食となります。車椅子の方は、そこそこさぼり、病院内の移動は静かに歩くと云う事で対応しました。しかしながら、減塩食にはついては、入院中は当然ですが、退院後も厳しく対応しております。結果的に、退院後には体重が、およそ20kg減り、その結果、永年懸案であった高血圧症がなくなり、同時に腰痛症が消えました。10kgの愛犬を抱きながら、この2匹分が身体にまつわりついていたのかあらためて感動しております。

 ところで、肝心の財団生活です。

 財団は、日本名では造水促進センターと称しておりますが、まだ我が国には「造水」の概念が育っていない状況にあると認識しております。英文では、「Water Re-Use Promotion Center」と称しますが、こちらの方が理解しやすいと思います。Re-Useの概念は大きくとっております。そもそも財団のスタートは、海水の淡水化技術の開発・普及を目的としておりましたが、Re-Useとして排水の処理・再利用も積極的に対応しております。水というキーワードには、水道、下水道、農業用水そして工業用水等が含まれますが、我が国では、それぞれの所管官庁が異なっていることから、経済産業省所管の当財団としては、貢献できる分野が限られてきます。海水の淡水化は我が国では、工業的には通産省が始めて担当したことから、当財団の所管となりますが、水道、下水道については、所管官庁が異なり当財団の貢献は厳しきなっており、それを反映して海外での活動がメインになってきております。小生も国際協力部長を併任していることから、国際研究協力事業としてサイトがある東南アジア諸国や中近東諸国へは出張が続いております。

 財団は、昨年で創立30周年を迎えました。数ある財団の中では、歴史がある方に分類されます。この様に長い歴史を有する組織には、その伝統があります。この様な組織に外部から急に新人が加わると、その伝統ともろにぶつかります。この点については、充分に注意しているつもりですが、やはり職員との軋轢はあり、スムースな関係を構築するには、もう少し時間がかかりそうです。 

 現在の政治・経済状況のもとでは、財団活動は、どちらの財団においても必ずしも順調という訳ではありません。残念ながら、当財団においても同じ悩みを抱えております。幸い活動の基盤となる財団を取り囲む社会情勢については、「21世紀は水の時代」のかけ声もあり、追い風になっております。何とか、世界の水問題の解決に向けて、少しでも貢献していきたいと願っております。

 転職後の一年間の活動の概要を書かせていただきました。国家公務員から関連財団への出向などと云う事は、入所以来考えたことも有りませんでした。定年を静かにつくば研究学園都市で迎え、その後は自宅で貯まった資料の整理、若い頃からためていた蔵書の愛読と整理、老犬との散歩等で余生を送ることを考えておりましたが、妙な具合で財団へ出向、そして海外への展開となりました。未来永劫財団職員と云う事は有りませんが、事情の許す限り、世界の水不足に対応し、苦労を重ねている老人、主婦や子供たちのお役に立ちたいと願っております。出向を斡旋いただきました関係の皆様には厚く御礼申し上げます。 

 海外協力事業においては、現地スタッフに、如何に問題点を説明し、その解決の方法について適切なモデルにより説明する事の大切さを、サイトに出る度に痛感しております。豊倉研におけるゼミでの先生からのご指導、細かい点についてはすでに残っておりませんが、今小生にとって一番の財産になっております。今までのご指導の数々に厚く御礼申し上げますとともに、今後もよろしくご指導お願い申し上げます。

 最後になりましたが、ホームぺージをごらんいただきました方々で廃水処理でお悩みの方がおられましたら、以下のアドレスまでお問い合わせ下さい。財団のプロジェクトとして検討し、関係の政府機関に提案していきたいと希望しております。もちろん開発資金を関係機関にお願いするとの趣旨です。秘密保持には十分に配慮します。最近の関連会社との情報交換については、従来とは異なり、全て秘密保持契約の締結を前提としております。ご安心下さい。

秋谷 鷹二
(財)造水促進センター 常務理事
〒160-0013
東京都中央区日本橋人形町3-5-4
MS−ビル 5F
(地下鉄日比谷線人形町下車、5番出口が至便です。お近くまでお出かけの折りはお立ち寄り下さい)
tel 03-5644-7565
fax 03-5644-0686
e-mail:akiya@wrpc.jp




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