晶析分科会は、第2回工業晶析国際シンポジウムを下記の通り開催いたします。
主催:社団法人 日本粉体工業技術協会 晶析分科会
日時:2004年11月10日(水)11日(木)
場所:日本コンベンションセンター(幕張メッセ)国際会議場
概要:(日)米欧亜を代表する晶析研究者が一同に会し、ラウンド・テーブル・ディスカッションを行い、将来の晶析技術について展望する。晶析装置設計に関する専門的な講演会、ナノテクノロジー、結晶多形に関する講演会も開催する。
今回の投稿では、このような国際シンポジウムを主催するに至った経緯について、ご説明したいと考えています。
日本における晶析の研究者・技術者の集まる会は、化学工学会、分離技術会にあり、すでに長期間活動していて、海外からの評価もありますが、豊倉先生が退職される直前に、社団法人日本粉体工業技術協会の井伊谷鋼一初代会長からの提案があり、同協会に晶析分科会を設置することになりました。この辺の経緯は、晶析分科会のホームページにも記されています。(http://www.crystallization.orgを参照)私がかかわった経緯については、同協会の会報「会員の声」に掲載しました。(APPIE NEWS:p.5,vol.12 ,No.177, (2003)会員以外は入手が難しいでしょうから、下記に再掲しました。)
この新しい「晶析分科会」の特徴付けについて、当時は、次のように考えました。
(1) 企業の技術者とくに初学者を対象とした会であること、
(2) 最新情報だけにとらわれず、重要な技術や手法に重点をおくこと、
(3) 国際的なレベルであること
といったことだったと思います。このアイデンティティを確立するには、分科会の幹事、協会役員などとの長い長いディスカッションが必要でかなりの時間を要しましたが、2年くらい前からは落ち着いてきたように感じられます。技術的な面からの会の特徴は、晶析装置設計理論(いわゆる線図を用いたもの)を基本として繰り返し取り上げ、結晶形態や多形など結晶構造を制御するためのパラメータを考える、というところでしょうか。また、従来の化学工学を学んできた方よりも、実際に(現場での)晶析装置で苦労されている分野の方(例えば、医薬品工業とか)にターゲットをおいた講演会を企画するなどしているところもあげられるでしょう。
この分科会の活動は、実質的には1998年から開始され、豊倉先生の退職を記念したシンポジウムが早稲田大学で開催されたときには、Nyvlt教授、Fischer氏、Kratz氏をお招きして、国際シンポジウムを併催しています。その後も、できる限り、海外の講師を招聘するようにしていますが、2002年に幕張メッセで工業晶析国際シンポジウムを開催したことは、晶析分科会にとって大きな転換期であったかもしれません。(「粉体と工業」晶析特集号,vol.36,No.8(2004)を参照してください。)
この「工業晶析国際シンポジウム」は、第1回でもあり、協会の内部には、「国際化」に対して理解できないムードもありましたが、豊倉先生とは、「とにかく3回はやってみよう。それから考えればいい。」ということで、「まず実行、それから考える」とチャレンジ精神でスタートしました。本ホームページをご覧の方の中にも、(無理やり)参加さ(せら)れた方もいるかもしれませんが、そういった全関係者のご協力によって、内容的に成功だったと思います。中でもJ.Ulrich教授の全面的な協力には、感謝しています。
国際交流のあり方については、いずれ述べたいと思っていますが、国際的でなくても交流ということは、重要だと感じています。複数の人間、特に専門家が集まると、必ず討論が始まります。うまく運営すればそれが新しい考え方に発展して、それまでには、思いもつかなかった考え方、概念が誕生するわけで、誕生の場に立ち会えたときは大いなる感動をともにすることができるでしょう。
さて、現在は、晶析分科会のコーディネータ(城石昭弘富山大学教授、尾上薫千葉工業大学教授)と幹事に加えて、ドイツからUlrich教授、米国からは、Dan Green博士といったメンバーで、Scientific Committeeを組織し、2004年の会議プログラムの検討を行っています。研究者・技術者を寄せ集めるというだけではなく、2006年そしてその後に産業が必要とする、晶析技術とは何か、それに対して現在開発・解明しなければならない技術・研究はどのようなものなのかを考えています。DuPont社のDan Green博士の主張するように、「高度に専門的な知識に基づいて検討された将来技術は、現在では夢のようであっても必ず実現し普遍的なものとなるが、同時に地域の特産物を生産する産業が必要とする技術にも注目しなければならない」ということを考えると、単に普遍的で専門的な技術を追求するだけでなく、なぜその地において、高度な技術を構築することになったのかその背景を知ることも重要であるということであるわけです。
今回の国際シンポジウムでは、晶析についてもディスカッションしますが、化学工学が産業を通じて全世界に貢献できることは何なのかを考えてみたいと思っています。