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豊倉賢略歴
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2007 B-7,2:豊倉 賢  城石昭弘記−工業晶析における開発技術と学問的研究の発展経緯シリーズ第1回
       を受けた誌上討論会;
        
「晶析装置の設計理論と実装置への適用を読んで」1/1

1.はじめに:
   tc-pmtを始めた頃、このホームページに掲載された記事について討議をしていると、色々の分野で活躍している知人と都合のよい時にHP上で議論が出来て、20世紀の時代と異なったIT時代の研究生活が出来るようになると考えていた。しかし、大学を卒業して社会に出ると卒業生は、学生時代のように、仲間と同じような仕事をすることは滅多になくなって、卒業生だけの掲載記事だとなかなか共通の話題を見つけて、それに深く突っ込んだ話をすることは難くなってくるようです。昨年だったと思うがある卒業生から、自分の意見を tc-pmtに掲載して仲間に意見を求めたが、なかなか昔の仲間の意見が聞くことが出来ないと云われたことがあった。その難しさは理解できるので、HPに記事を寄稿する目的を「執筆する人が、平素考えてることを纏めるための機会」と考え、執筆当事者は「考えを整理する」ことに執筆の価値を見出して、読んだ人の意見を聞いたり、その人と討論するのはその次のステップの成果にしてはと思うようになっている。その一方、記事を読む人の立場では、研究室時代比較的近い考えを持っていた人が自分と異なる世界で活躍し、そこで触れたことを記事で読むと、自分の気が付かなかったことに気が付くことがあって、結局、研究室ホームページの別な価値を見出し、それを期待するようになっている。豊倉は、寄稿した卒業生はみな皆知っているので、それを読むと単に記述内容のみでなく、執筆者のこれまでのことや、人柄や思い出まで重なって思い出されて大きな収穫を得たような気になることもある。そのような記事が増えてくると、その内容について詳しく尋ねたい気にもなって、掲載される内容の討議への発展を期待するようにもなってくる。しかし、この討議内容が研究室卒業生に共通な記事、例えば晶析となると、内容が絞ぼられるようになり、その討議が活発になるのでないかと思うようになっている。

  今年になって、記事を執筆する人を卒業生の枠からさらに晶析に関心のある人にまで拡げたことによって、晶析およびそれに関連する工学分野・その他の記事が多くなって討論が活発になることを期待している。特に6月に掲載した原稿を受け取った時、富山大学の城石先生から、先生の書かれた記事に豊倉の意見を聞かせて欲しいという私信がついていた。それを読んだ時、本ホームページに関心のある人は晶析操作を軸にしてそれと関連のある基礎工学・現象・装置・プロセスに関心のある人が多いので、城石先生の記事を読む人の中には、記述内容・その他について種々の経験を持つ人がいて、その中に城石先生の記事を切っ掛けにコメントをお寄せ頂いたり、討論にも参加して頂ける人がいるのでないかと推察して、誌上討論を始めようと提案した。このことについては、非公式に意見の交換をしたことはありましたが、殆ど討論を行っていませんので何処まで続けられるか分かりません。しかし、一見難しそうに見えることでも、関心のある人達が前向きに意見を出し、将来に向かってポジテイブな成果がでるように活動をすることは、社会の発展、日本の発展に必要なことであると考えているので、賛同頂ける人達の理解と協力・支援を期待します。

2.掲載記事の討論を始めるに当たり:
  掲載記事の中で、特に読者の関心の高いものを選んでtc-pmtの誌上討論を行うことは、学会中心に新しい研究成果を討論して、学問・技術の発展を図ってきたこれまでの研究法に新しい刺激を与えるもので、この討論を始める以上、その討論を然るべき期間継続して行って何らかの成果をあげることは極めて重要なことと考えている。そのため、何らかの申し合わせを作ることが必要で、その前段として緩いルールを作ってそれによって自主的に運営することを提案する。ここでは、これまで学会に設置された研究会の運営等の経験を踏まえてたたき台的に提案するものです。ここでは対象にする討論に関心のある方々の意見で修正を加えて誰での気楽に討論に参加できるようにしたと思っていますのでご協力下さい。

2.1)討論の議題について:
  今回始める討論は城石先生の申し出を受けて豊倉がたたき台として提案します。実際活動を開始するに当たっては、その標題とその内容を明らかにすることが必要で、「晶析装置の設計理論と実装置への適用」討論標題?1)を標題として提案します。しかし、誌上討論はこの標題だけで活動するものではなく、近い将来別の標題を次々設定して並行に走らせて、誌上討論を拡大し易いように組織化した方がよいと思っていますので、メンバー数名の賛同する標題を立ち上げていただいたら、追加しして「通し番号」を付して、活発にしていただけたらと期待してます。

2.2)討論標題ー1)の内容と分類に:
  今回は城石先生の寄稿記事を受けて、豊倉がそれに加わって最初の討論標題を立ち上げます。それはどちらかと云えば広い範囲をカバーするのがよいと思うのですが、何もかも入って焦点がぼけたり、討論が発散しないようにすることも必要です。しかも、その内容は日本の晶析研究を担ってきたメンバーに相応しいものにすることも必要ですので、城石先生の記事の内容を討論し易いように次の4項目に分けた分類を提案します。

  ここでは標題から考えられるキーワードとしてまず、1ーi)「設計理論」と1−ii)「実装置とその操作法」に分けて考えたらと思います。そのことだけではまだ中味の検討は不十分ですので、さらに、設計理論を使った実装置の設計を制約条件に加え、その制約を i)& ii) とは別に考えて、1−iii)「原料と製品の特性と評価」を考えてみました。これらの各因子は単独にもそれぞれ重要な意味を持っていますが、実際にはそれぞれ相互に影響しますので、それらの係わりを充分検討して結論を出さないと、生産プロセスとして評価を受けることは出来ません。その検討を行うのに極めて重要な項目は1−iv)「装置内晶析基礎現象」です。それを列記すると以下のようになります。

  討論標題−1−i)装置設計理論
  討論標題−1−ii)実装置と操作の設計
  討論標題−1−iii)原料・製品の特性と評価
  討論標題−1−iv)装置内晶析基礎現象


  20世紀の晶析研究で明らかになったこれらの各項目内容は、20世紀初頭の晶析研究成果では全く考えられないことであった。しかし、20世紀末に明らかになっている研究成果からどのようにして市場のニーズに応える高品位製品結晶を生産できるかを考えると、この100年間の進歩とは裏腹に、多くの未解決課題も明らかになっている。一方これからの晶析工学の進歩は、20世紀後半のIT 産業の進歩が20世紀後半の世界の生産技術や種々の技術の驚異的な進歩をもたらしたように、近未来の化学産業の発展に大いに寄与すると期待されてます。しかし、そのためにはここの i)〜 iv)に記述された項目内容を大いに研究発展させることが必要があり、このHPの記述内容がこれからの研究者・技術者の刺激になればと密かに願っている。

2.3)総括的晶析プロセス設計:
  工業晶析生産プロセスの評価は、装置設計理論で設計された単位操作機器を総括して立ち上げられた晶析プラントで生産された製品の特性・コスト・生産量によって決定される。それらは2.3)に示される中分類を構成する因子の最適条件によって規定される。城石先生が2007B−6,2で記述された内容はその全がほぼ総括的立場で討されたものと考えられるが、その記述は特定の系を対象に所定製品を生産する上で重要な因子に着目している。その扱いは特定の生産工場における狭い条件下の生産を対象に検討したもので、それは極めて重要であるが、その扱い方を一般的な方法として種々の系・操作条件に対して使用できるようにするには、まず、適用する系・操作条件を拡大して、その考え方は何処まではそのまま適用できるか? その条件をさらに拡大した場合、どのような修正をすれば適用範囲を拡げることが出来るか徐々に明らかにしていくことが必要で、そのような研究をこの誌上討論を通して発展させ、纏められたらと期待している。今回は第1回の討論として、早稲田大学豊倉研究室で1961年以降研究されてきた設計理論の概要を紹介し、それに晶析基礎理論を集約して提出される厳密な?設計理論と工業晶析装置の設計に簡便に適用でき、しかも多くの企業で使用されてる簡便設計理論に対する評価等、これからの結晶生産技術の発展等について検討する。

3.粘性流に基づく2次核化現象:
  化学工学分野の晶析研究者は、自分が化学工業界からどのような活躍をすることを期待されてるか考えて研究しているのか? 伺ってみたい気がすることがある。晶析関係の研究を行っている研究者や技術者が世界にどのくらいいて、自分はその中のどのような立場で研究しているかを考えてみることも、時には必要だと思っている。ヨーロッパのWPCが中心になって開催しているISICの参加者は、初めて開催された世界規模のシンポジウムと見なされた1972年チェコスロバキヤ・プラハの会議では、70〜80名くらいであったが、それからシンポジウムの回数と共に増加して1990年頃には200名くらい、そして前回2005年のドレスデンで開催された会議では300〜400名くらいの参加者がいたようだった。この数からも研究者自身は何を研究したらよいかを考え、それから5年、10年ごとに世の中の変化を振り返って、自分が考えたことでよかったか?修正する必要があるかを検討してみることはどこまで行われているのであろうか?と、疑われることもある。 研究者、技術者は自分の年齢・立場を考えて、かくかくしかじかの研究して今までにどのような成果をあげ、これから(・・・)を明らかにしようと考えて研究していることなど話し合えると、お互いに信頼し合えるようになって、長期に亘たる共同研究もし易くなるのでなかろうか?と考えて実行している。

  このように書くのは、最近晶析装置・操作の設計を研究している研究者・技術者が少なくなっていて、これからは新しく開発した装置・操作法を用いて世界のどの企業より良質で安価な結晶製品を生産できるのか気になっているからです。城石先生が先月の記事で紹介した、CFC設計理論は1947年Saemanによって発表された理論をその他の研究者らと同様に豊倉も独自に研究して提出したもので、Randolp & Larsonの設計理論と基本的には似ているが、1980年代に豊倉がドイツのMesso社にいた時提出した設計線図理論は実用の簡便さがあって、より広く企業技術者によって使用されるようになっている。しかし、その適用法については未だ課題も残っている。

  以上の設計理論は20世紀半ばから、世紀末にかけて研究されたものであるが、20世紀末から21世紀に掛けてはそれまでに研究された結晶成長速度式、結晶核発生速度式などの晶析基礎因子の関係式を用いた設計式が提案され、コンピューター使用による設計が行われようとしている。2006年に幕張メッセで開催された粉体工業技術協会晶析分科会主催の晶析国際会議でRohani は最近の設計理論式と晶析装置・操作の経験豊富な技術者のみが適用して工業晶析装置を設計している簡便晶析装置設計の話がでていたが、これからの人はどちらの方法を使用して、工業晶析装置設計を行ったらよいかよく検討して、自分の方向を身につけておくことも必要がある。

4.むすび:
  今回誌上討論をtc-pmtで始めるに当たり、豊倉が平素考えてることを記述した。しかし、この討論はどのように発展するか、暫く続けてみなければ分からないことですが、二度とない人生の一コマとして大切に進めたいと思っている。城石先生が寄稿した記事2007B-6,2の内容は、20世紀後半の晶析装置設計理論とその適用法を中心に扱っている。今回はそれとの関連で豊倉が討論してみたい晶析装置設計理論のサブタイトルを列記したが、それらの詳細を次回の2007B-8以降のHPに掲載して、関心のある人々と討論することを期待してます。

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