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豊倉賢略歴
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2007B-7,1 城石昭弘、富山大学地域共同研究センター教授

 
  城石先生は先月掲載した記事「 2007B-6,2 」工業晶析における開発技術と学問的研究の発展経緯シリーズ第1回 「 晶析装置の設計理論と実装置への適用 」 に引き続いて、同シリーズ第2回 「 晶析プロセスの開発とその設計思想 」を寄稿頂きました。城石先生の経歴等については前号で紹介してますのでそれをご覧いたくとして、ここでは、シリーズ第1回と第2回の相違点について扱います。第1回の記事では単位操作で代表される化学工学的手法による工業晶析装置・操作の設計法を中心に扱っています。その内容は20世紀後半に研究された晶析工学に基づくもので、20世紀前半に較べて、進歩の著しかった内容の一部を紹介されているが、まだ、それは完成には程遠い状況で21世紀に高度晶析技術を確立するためには、まだまだ、多くの研究課題を残している分野です。第2回は晶析プロセスに関連するシステム工学的な検討を紹介したものです。この種の検討は、晶析プロセスを提出する場合、製品に対して要望される特性を持った結晶を出来るだけ安価に必要な量生産するために行われるが、それに関する報告は殆ど行われていない。豊倉も米国TVA公社研究所の招聘を受けて燐硝安生産プロセスの開発研究を行った時、純然たる化学工学理論に基づいて検討したが、目先のプロセス提出に必要な範囲に限定したものであった。国内企業から相談を受けた場合も、同様な検討は行っているが、将来の化学産業を考えた時、一時も早く日本発信で確立されたシステム晶析工学の体系化か提出されることを期待する。   (07年6月、豊倉記)

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工業晶析における開発技術と学問的研究の発展経緯シリーズ第2回

「 晶析プロセスの開発とその設計思想 」

富山大学地域共同研究センター     
教授  城石昭弘       

  個々の晶析プロセスを開発する場合に、プロセス上の要求が晶析装置の設計理論をはずれ、装置設計理論を単純には適用することが出来ない場合が多い。今回は筆者が幾つかの具体的な晶析プロセスを開発してきた過程で、晶析理論が適用できるようにするために、何を課題とし、また何を心配し、どのように配慮してきたかについて話してみたい。

1.はじめに
  製造プロセスを開発するに際して、目的とする製品及び取り扱う物質(溶媒や反応資材)の物性の特徴を最大限利用すると共に(あるいはそれらの欠点を回避して)製造プロセスで何を最重要な課題とするか(製品結晶の粒子径、純度、色相、形状や硬さなどの製品品質の向上か、あるいは製品品質はそこそこでも収率の向上を最重要とするか、またエネルギー消費量を最小限とすることに力点をおくか、さらには設備費低減やや運転の容易さに重点を置くか、)等等、によりデザインされるプロセスが異なってくる。なぜそのようなプロセスを考えたのか、あるいはなぜそのようなプロセスを選択したのか質問されることがあるが、その答えは開発技術者がその方法に精通しかつ選択したプロセスが最も良いと考えたからに過ぎない。別の開発技術者が担当すると異なるプロセスが選択されるかもしれない。新規な製造プロセスの開発は開発技術者のロマンの具現化である。即ち開発技術者の自由裁量の中でのみ展開される。このことは開発技術者にとって実は大変重い意味を持っている。昭和30年から40年台にかけて化学品の多くは新規製造プロセスが開発された。しかしながらそれらの開発プロセスは10年もすると棄却され、さらに改良されたプロセスなどに取って代わられた。私がまだ30歳代のころ、なぜ心血を注いで開発したプロセスが10年程度の短い歳月で棄却されるのかを大学の恩師に質問したことがあった、その恩師である梅屋薫先生(窯業のご専門でいまだご存命である)曰く、それはその開発技術が所詮陳腐で軽薄だからである、工芸品としての陶器の世界では幾百年たっても良い製品はいまだ燦然と輝いているといわれ、目からうろこの思いをしたことがある。

  勿論、プロセスの開発は一人の開発技術者で完遂できるものでなく多くの研究者や多様な技術の集大成から成り立っているがプロセスのグランドデザインをする人は自らデザインしたプロセスに対して、安易に周囲と妥協してはいけないのである。

  さて筆者は、化成品のひとつであり、比較的溶解度の小さいメラミン、磁性材料の一つであり機能性微結晶であるゲーサイト(オキシ水酸化鉄)及び、多形を有する有機結晶であるキザロフプエチル(除草剤原体)の晶析プロセスの開発に携わってきたが、それぞれの晶析プロセスを開発する過程で何を課題とし、また何を心配し、どのように配慮してきたかについて、出来上がったプロセスとは別の観点で話してみたい。

2.メラミンの新規な晶析プロセスの開発
  メラミンの需要は世界中で年間数10万トンにおよび、熱硬化性樹脂の原料として使用されている。メラミンは水に最もよく溶けるがそれでもその溶解度は30℃で0.5wt%、100℃でも5wt%d止まりであり比較的溶解度の小さい晶析系である。従って、水溶液系でこれを通常の操作条件(常圧下、100℃〜0℃)で再結精製しようとすれば溶質に対する必要なワンパスの溶媒量は20倍以上となり、母液中に含まれる溶質の溶存ロス(収率ロス)も10%を超えてしまう。母液を循環再使用すれば溶存ロスは上述より少なくなるがその分不純物の濃縮が起こり精製効果が減少する(不純物の溶解度以下であっても、また遠心脱水ケーキを水洗しても純度が99.8%から99.6%程度に低下する)また20倍以上の溶媒を加熱するためのスチーム量も膨大となり、更に高温(90℃以上)で原料供給液をハンドリングするとメラミンの加水分解反応が進行し、事態は更に悪くなる、どう転んでも納得のいく晶析プロセスが設計できないのである。

  さてメラミンは尿素を原料とし、100気圧、400℃で合成され、反応系で得られるクルードメラミンの純度は98%程度となり、残りはトリアジン系不純物である。別の研究者達はこの反応生成物を60気圧、180℃で30%のアンモニア水に溶解すれば不純物の大半がメラミンに変わることを見出していた。即ち、高温の水溶液中でメラミンが加水分するどころか、溶媒をアンモニア水とすれば逆に不純物がメラミン化し、上述の操作条件下でのアンモニア水に対するメラミンの溶解度を実測すると30%以上に及ぶことが判ったので、この濃厚で高温高圧のアンモニア水に溶解させたメラミン溶液を直接結晶槽へのフイードとして使おうということになった。結論的には160℃、15Wt%のアンモニア水に20%ほどメラミンを溶解させたものをフィードにし、これを殆ど常圧で操作される結晶槽へ直接導いてメラミン結晶を得ようということにした。当時、筆者は開発技術者の一人であり、ましてや晶析技術についてはほとんど素人であった。

  そこで、早稲田大学豊倉教授のご指導の下で、上述のプロセス思想を具現化すべく,以下の開発テーマと取り組むことになった。

2.1結晶槽への供給液の組成と条件
  まず当時の社内の晶析技術者達からは上述のプロセス自体に大反対された。そもそも結晶槽へ供給するフィードは結晶槽の操作条件と大きくは偏移させず、通常はフィード自体に予めある過飽和を付けたものを結晶槽に導くものであり、上述のようなとてつもない濃厚な溶液を結晶槽に導くと核発生ばかり起こって結晶成長など望むべくもないというものだった。事実、晶析装置設計理論でも運搬層型晶析層にたいしては供給液の過飽和度を独立操作因子として取り扱っており、供給液の必要十分条件については現在までもあまり議論されていない。そこで基礎実験、パイロット実験でステップを踏んでしっかり確かめることにした。

2.2 DTB型結晶槽におけるドラフトチューブ内循環量又はクリスタルーオスロ型結晶槽における外部循環量の考えか方
  実際にパイロット装置で連続晶析実験をしてみると結晶槽での結晶の滞留時間を基礎実験で得た滞留時間と同じとすれば、それに見合って結晶はちゃんと成長することがわかった。但し供給液が結晶槽に導入されるや否やドラフトチューブ内を循環する流れ(または外部循環流)に供給液が直ちに十分混合されることが肝要で、必要十分な循環量をどのように設定するか課題となった。供給液が循環流と混合して発生する過飽和度が結晶成長に費やされ、塔頂でその発生過飽和度が全て費やされ、飽和溶液になると仮定した場合は、便宜的に結晶生産量を内部(外部)循環流量で除したものを操作過飽和度と定義する場合があるが、これは単に物質収支上得られるものでW/dθ=K0ACavで示される結晶成長の推進力としての過和度Cavとは意味が異なる。但しこの循環量を十分大きくし、完全混合層(混合マグマ)型が実現していれば、Cavと一致する。

  従って、設計上の配慮としては局部的に過大な過飽和は生じないように出来るだけ大量の循環流量を確保し、濃厚な供給液であってもこの大量の循環流に円滑に混合できれば、供給液に予め過飽和をつける必要はなくなるし、また供給液が濃厚であっても結晶成長の推進力は同じように確保できると考えた。

  更に濃厚なアンモニア水を溶媒としたことからアンモニアの一部がドラフトチューブの途中でフラッシュすることにより異常な核発生を起こさないためにも十分な内部循環量が必要であった。その結果100T /D程度の晶析装置における内部循環量を10,000m3/H(操作過飽和度としてはKg/m3)とし、そのインペラーは渦流の発生を防止するため船のスクリュータイプのものを採用した。

2.3 母液中の溶質の溶存ロスの低減と多段晶析(三段)プロセスの採用
  前述したように結晶槽への供給液中の溶質濃度を十分高めたので、溶質の溶解度が十分低くなる常温で結晶槽を操作すれば、母液の循環使用をしなくとも収率は十分高くなる(98%以上)、しかしながら結晶の成長速度係数K0φはアルレニュウスのプロットを満足し、90℃と30℃では一桁以上の差があることら、高温で結晶を析出することが極めて有利であり、また溶解度が低い条件化では大きな操作過飽和度が取れない事から、結晶槽の操作条件を90℃、60℃、30℃と三段に分割し、第一晶析槽での析出負荷を全体の85%とし、残りを第二晶析槽(60℃)及び第3晶析槽(30℃)で析出させることにした。

  各晶析槽の詳細な設計と操作については豊倉教授から懇切で丁寧な指導を頂いたことは言うまでもない。出来上がったプロセスについては以下の文献で発表しているので参照されたい。

連続三段晶析法:最近の化学工学43・晶析1991年10月

連続多段晶析法における核化速度と結晶成長速度の算出方法:化学工学論文集22巻6号
このプロセスは昭和51年から稼動しており、その後、幾たびかの能力UPのための手直しを経て30年以上経過した現在も立派に稼動していると聞き及んでいる。

3.機能性微粒子としてのゲーサイト製造法の開発
  昭和48年秋のオイルショックを契機として我が国の化学工業はその産業構造を変革し、基礎化学製品から機能製品指向へ方針変換を迫られた。磁性粉事業はその典型的な例であり、当時の主要な化学会社はこぞって磁性粉等の新規材料開発を取り組むことになった(最盛期には20社に及ぶ化学会社が磁性粉事業を新規な研究開発テーマとして取り上げていた)磁性粉は酸化鉄系のものとメタル(鉄粉)に分類されるが、磁気特性の大小はともかくいずれもサブミクロンレベルの針状のゲーサイト(FeO(OH))を中間生成物として得、この粒子の表面にニッケルやコバルトあるいはシリカやアルミナを被着させたのち之を加熱、脱水し酸化鉄(αFe2O3)とし、更に水素ガスを用いてFe3O4, Feと順次脱水するものでメタリックなFeを一旦高温で酸化させて得る製品が酸化鉄系磁性粉(γ-Fe2O3)でありメタリックなFe粒子の表面のみを酸化処理したものがメタル磁性粉となる、いずれもオデオ、ビデオ用の磁気テープの材料である。

  テープメーカーではこの磁性材料に樹脂、溶媒、分散剤、助剤を加え、ビヒクル(塗料)とし、これをポリエステル等のフィルムに1〜2ミクロン厚さでコーテングし、乾燥して溶媒を除去したのちテープ表面をカレンダリング(鏡面仕上げ)スリッチング(所要幅に裁断)し、カセットへの巻き取り装着してカセットテープのできあがりとなる。

  テープの性能(磁気特性)は材料である磁性粉からしか発現しないので、勢い磁性粉の優劣がテープの優劣を左右することになる。従ってテープメーカーの磁性粉メーカーに対する要求は、デンドライト(樹枝状結晶)やタクトイド(針状結晶が多重的に積層したもの)を含まず、軸比と長軸径が一定で長軸分布が極力狭い針状磁性粉であって磁気特性と酸化安定性に優れ、ビヒクルを製造したときの分散性が良好であること等々であった。

  さてこの磁性粒子の形状は中間原料であるゲーサイトの形状で決まる。即ち結晶ゲーサイトから直接脱水してメタル鉄になってもその形状はゲーサイトの形がそのまま受け継がれるいわゆる形骸粒子である。 ゲーサイトの製造方法について筆者等は以下の2つのプロセスを検討した

3.1ゾルゲル反応による方法
  硫酸第一鉄をアルカリで中和して、難溶性塩である水酸化第一鉄を得たのち得られた懸濁液に空気を吹き込んで鉄を酸化させ、難溶性塩であるゲーサイト(オキシ水酸化第2鉄:FeO(OH))を得る方法である。

FeSO4 + 2NaOH → Fe(OH)  + Na2SO4    (1)
4Fe(OH)2  +  O2 → 4FeO(OH) 2 H2O   (2)
(1) 式で得られる水酸化第一鉄の懸濁液は殆どアモロファスゾルとみなすことが出来る微粒子(比表面積SSA=2000m2/g程度)からなり、これを直ちに空気酸化すると酸化時間も短く且つ得られるゲーサイト微粒子はか細すぎて所望の短軸径を有する針状結晶が得られない。しかしながら上述の水酸化第一鉄の懸濁液を空気酸化する前に常温で数時間熟成すると SSAが600m2/g程度まで低下し水酸化第一鉄は6角板状の結晶になり、これを空気酸化すると酸化に要する時間が数時間以上に長くなり、得られるオキシ水酸化鉄も所望の短軸径を有し、軸比も8〜10となった粒子が得られるようになる。さらにゲーサイトが生成する途中の過程をTEMで観察すると、6角板状の水酸化第一鉄結晶の稜辺に沿って針状のゲーサイトが生成し、それが成長しやがて母体である6角板状の水酸化第一鉄結晶が消滅して針状のゲーサイトだけになることがわかった。上述の実験結果と水酸化第一鉄の溶解度積が10-20でありゲーサイトのそれが10-33であることは判っていたのでこの系の律速過程を明らかにするために吹き込み空気量や酸素分圧などの巨視的な外部操作変数を変えて実験した。その結果、ゲーサイトが生成するメカニズムを以下のように考えた。6角板状水酸化第一鉄結晶から溶出するFe2+イオンが溶媒(水)中の溶存酸素と反応しFe3+に酸化され、酸化されたFe3+イオンが6角板状結晶からそう遠くまで拡散することなくいったんは溶媒を媒介としながらも近くの6角板状結晶の稜辺に生成しているゲーサイト結晶の成長に費やされるのではないか、即ち水酸化第一鉄結晶1個ごとに孤立系としてゲーサイト粒子の成長に寄与しているのではと考えた。いずれにしても溶媒媒介転移を考える反応晶析を議論する場合にはどこが律速段階なのか常に考慮しておかなければならないことは明らかである。一般に製品特性が多くの操作変数から成り立っているような場合に特に重要であり、狭い実験範囲で多くの操作変数を変えて行った数少ない実験回数から個別の実験結果を予想してはいけないのである。

上述の実験結果については以下のシンポジウム等で発表させてていただいた

Shiroishi A and A.Murakami:The1st Korea-Japan Symposuim on Separation Technology, Sept.(1987)
Takako Y and A. Shiroishi:The 12th Symposium on Industrial Crystallization Sept(1993)


さてこのようにしてゲーサイトを製造しても十分納得のいく磁気特性を有する磁性粉が得られなかった。 その理由は短軸径、その厚さ及び長軸径(軸比)分布がいまだ十分でなく、個々の粒子の結晶性が不十分だからではないかと結論づけ、水熱反応によるゲーサイト製造研究と取り組んだ

3.2 水熱反応によるゲーサイト製造研究
 水熱反応でゲーサイトを得る反応スキームは以下のようなものである。
Step1:前述の反応式(1)でアモロファスなゲーサイトゾルを得る。
Step2:ゾルの溶媒を限外濾過等により溶媒置換し、新しく調整した溶媒(アルカリ水溶液)に分散させる。
Step3:Step2で得た懸濁液を高温、高圧(150℃〜200℃)で処理する(熟成する)。

 一般にこのようにして得られたゲーサイトは結晶性が高く、粒度分布は極めてシャープであるとされている。事実、サンプルの短軸、長軸、軸比の分布解析や、単一粒子のラウエ斑点やデバイシューラーリン グの測定など電子顕微鏡による解析を行うとゾルゲル法で得られたものより鮮明な測定画像が得られる。問題はアモロファスとも見なせるゲーサイト微結晶(SSAが200m2/g以上)が水熱処理によりどのようなメカニズムで結晶性が高く形状のそろったゲーサイト結晶(SSAが60m2/g程度になる)に再結晶されるかである。

 再結晶で生成する結晶の大きさは水熱処理に供するアモロファスゲーサイトの懸濁濃度に依存し、希薄であればあるほど粒子径が小さくなる。またこの水熱処理液にあらかじめ晶癖変化を起こすであろう添加物を共存させると得られる粒子の軸比は1〜10ぐらいまでドラスチックに変わる。

 これらの現象は学問的にはどのように説明できるのだろうか。

 そのメカニズムを探るため、アモロファスゲーサイトから結晶性の高いきちんとした微結晶が再結晶される途中の懸濁液の様子をTEMで観察してみた。するとアモロファスな溶液からまず粒子が少しずつ凝集を起こし(一様に分散し熱力学的に不安定なアモロファス体が分相してより安定な状態に変わるかのように)、それぞれの一個の凝集体から時間と共に一個の針状ゲーサイト結晶ができあがっていく(成長していくイメージではなく、1個の凝集体に含まれる微粒子群が順次母核となるゲーサイト結晶に取り込まれていくイメージである) 再結晶で得られる粒子の粒径分布が単なるゾルゲル法のものよりシャープであるという理由は上述の1個の凝集体の大きさの分布がより均一であり、その凝集体から孤立的に1個のゲーサイト結晶ができあがると解釈すれば一応の説明はつく。ゲーサイト製造法の開発研究としては実験結果の再現性が確保できればそれで問題は解決したことになり、先へ進むことが出来る。しかしながらこの現象を物質移動現象論を始め熱力学的知見、さらには量子論的な数式等を駆使した説明ができなければその現象の普遍性が確保できない。

水熱処理に係わるこのような現象について豊倉教授と議論し、先生の推薦もあって以下のWork Shopで口頭発表させて頂いたが、当時は現在ほどナノ粒子がメジャーな研究テーマではなく、関心もほとんどなかったので、以後この件に係わる公表はやめてしまった。

Shiroishi A:Japan French Working Party on Industrial Crystallization at Toulouse Spt.(1987)

水熱反応の研究はその後脚光を浴びてきたが、メカニズムに関する研究はその後もあまり見あたらなく、筆者の疑問は現在もそのままになっている。近年、同志社大学の白川教授が類似の研究を展開しておられ、成果に大いに期待したい。

  次回は有機結晶の多形制御について私見を述べたい。

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