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豊倉賢略歴
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2007B-6,1 田中良修、IEMリサーチ;1959年東京理科大学理学部化学科率、(工学博士)

 
  豊倉が田中先生に初めてお目に掛かったのは、1988年塩工業会技術部の方々が早稲田大学豊倉研究室にお出になった時であった。その時、製塩企業で食塩結晶生産技術を担当している技術者に、最近の晶析工学を教えて食塩生産技術の改善が出来るように教育して欲しいと突然言われた。当時の製塩企業は大型晶析装置を使って、食塩結晶を生産しているのは聞いていたが、その装置をどのように設計し、稼働していたかは知らなかった。そのため、その申し出を受けて、お手伝いをすることは豊倉にとって非常に興味はあったが、実際どのように進めるのがよいかはか全く見当が付かなかった。

  当時、田中先生は日本たばこ産業の海水総合研究所に所属し、日本海水学会では研究会活動担当役員を務められていて、豊倉がお世話する「海水利用工学研究会」の幹事も務めていただくことになった。それからおよそ10年、具体的な活動やその他のことでお目に掛かることが多かった。そこでは、晶析のことだけでなく、田中先生が学位論文を纏められた「電気透析や膜技術」のことなどいろいろお話を伺うことができた。特に専門分野の特定課題を詰めて研究を行っていると他分野の様子を聞く機会は思いの外少なくなっていた。このような時に、田中先生にお目に掛かると、田中先生が研究された電気透析や膜技術の話、海水から食塩結晶を生産する技術が発展してきた経過、電気透析膜技術が日本で開発された経緯、また種々の分野の学問・工学を総合的に組み合わせる生産技術、このような産業を発展させるために疎かに出来ない海洋資源・沿岸環境問題から製品食塩の利用やそれと関連のある医学、食品分野およびこれらを総括的に扱ってバランス良く発展している日本海水学会の話なども聞くことが出来た。田中先生は1988年からしばしば研究室に来られていたので、卒業生の中には田中先生に会った記憶のある人が多いと思うが、そのころから、機会があったら研究室の卒業生に田中先生の貴重な経験話をして頂こうと考えていた。

  今月のはじめ、田中先生が世界的な出版社「Elsevier社」からご自身の研究を中心に纏められた新学術技術書:

  “ION EXCHANGE MEMBRANES : FUNDAMENTALS AND APPLICATIONS”

を出版するとのご案内をいただいた。これはよい機会と思い、田中先生が大学を卒業してから半世紀近く研究者として、公的研究機関や企業研究機関で活躍して来られた様子、およびその成果を一冊に纏められて新しく出版する著書の概要を記事にして頂くお願いをした。研究室卒業生は化学企業で活躍している人が多く、その中には電気透析・膜技術に関心のある人もいると思う。また卒業生が所属する部署や身近なところにこの技術に関心のある人がおりましたら、田中先生の著書をお話いただいて、これからの活躍に利用頂いたらと思います。この著書について不明なことがありましたら、直接田中先生にお問い合わせ下さい。 。   (07年5月、豊倉記)

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学歴
1959年 3月 東京理科大学理学部化学科卒
職歴
1959年 4月 日本専売公社入社
中央研究所、小田原製塩試験場にてイオン交換膜の研究に従事
特別研究員、チ−ムリ−ダ−

1996年 3月

日本たばこ産業株式会社(元日本専売公社)退職
1996年 4月 IEMリサ−チ設立、代表
イオン交換膜の研究に従事
現在に至る
学位 工学博士(東京大学)
学会における役職
日本海水学会 企画理事、編集理事
電気透析および膜技術研究会幹事
海水利用工学研究会幹事
材料構造物研究会幹事
造水水利用研究会幹事

日本イオン交換学会 企画理事、編集理事
現在、名誉会員
受賞
日本海水学会 学術賞 (1984年)、功労賞 (1995年)
日本イオン交換学会 功績賞 (1997年)、特別表彰 (2004年)


「 私の学会・研究活動と新刊書の出版について 」

 

IEMリサ−チ 田中良修    

1.OJT晶析委員会およびその他学会・研究会における活動
  私の経験の中で日本海水学会傘下の研究会活動は大変貴重なものと考えています。第一は「電気透析および膜技術研究会」です。第二は豊倉先生が主宰された「海水利用工学研究会」です。この研究会は1988年に設立され、その中で実施したOJT晶析委員会活動は講演会活動ではなく、仕事を通じての訓練 、(On Job Training)を基礎とするという豊倉先生の指針により進められました。製塩会社、装置メ−カ−その他からなる幹事20名、委員20名のご協力を頂き、テーマとして?粒径制御と生産性、?凝集晶の粒径制御と二次核化、?製塩用晶析缶の合理的設計、を取り上げました。1996年に活動の完成を記念してヨ−ロッパの製塩工場を視察したことは誠に有意義でした。そこで感じたことは塩が国際的な商品であり、わが国の塩業は国際競争の中にあるということでした。良質の塩を低コストで製造するということは製塩業界において古くから掲げられてきた目標ですが、この目標を達成できなければ生き残る道がないと言わざるを得ないほど、現状は厳しいと感ぜられました。研究会活動の成果は製塩工業の発展に寄与し、技術資料「製塩工業における晶析」として1997年3月に日本海水学会より発行されました。私はこのほか、材料構造物研究会、造水水利用研究会などの研究会活動に参加しました。また、日本海水学会および日本イオン交換学会における学会活動に参加しました。

2.研究歴
  昭和1959年に東京理科大学理学部化学科を卒業して日本専売公社(現在 日本たばこ産業株式会社)に入社し、中央研究所および小田原製塩試験場でイオン交換膜の研究を行いました。退職後は旭硝子と旭化成のOBとともにIEMリサ−チを設立し、研究を続けています。私の研究内容は、濃度分極、限界電流密度、水解離、選択透過性、電流分布、装置内液流動、装置内液漏れ、エネルギ−消費、総括物質移動、非平衡熱力学、放射線グラフト重合などに関するものです。研究結果は日本海水学会誌、日本イオン交換学会誌、電気化学会誌、Journal of Membrane Scienceに発表しました。

  私が入社した1959年は製塩法が入浜式から流下式に転換した直後で、塩が生産過剰となり、第三次塩業整備が行われていました。その後1972年の第四次塩業整備により流下式塩田法はイオン交換膜法へ転換されました。イオン交換膜の研究は1935年頃に着手されており、1950年に膜が合成されてから、脱塩と濃縮への応用が開かれました。その後、1960年代にわたって内外の優れた研究者が業績を残しています。私の研究はこのような先人の業績をもとに製塩技術転換のサポ−トを目的として行われました。

  ひるがえってみると、1972年に流下式塩田法からイオン交換膜法へ製法転換されましたが、製塩業界が古くから掲げた目標のうちコスト低減はまだ達成されていません。この課題は現在も未解決であり、今後の技術開発にゆだねられています。IEMリサ−チにおける研究もこの点に注目して展開したいと思っています。通算して私は40年以上イオン交換膜の研究に従事したことになり純粋培養された感じはあるのですが、各種研究会および学会における活動を通して人脈を広げ、知識を吸収することができました。このことが研究を発展させるエネルギ−になったと感じています。

3.新刊書
  3年ほど前Elsevier社から専門書を執筆しないかという打診がありました。 英作文に自信がなく迷っていたのですが、誠に有難い話なので書くことにしました。はじめは「電気透析」という題目で打診したのですが、これでは読者層が狭く、あまり売れないだろうという返事だったので、思い切って題目を「イオン交換膜-基礎と応用」としました。執筆条件は原稿300枚以上、執筆期間2年、というものでした。そこで2005年−2006年にわたって執筆し、2006年11月に完成投稿しました。2007年1月にElsevier社からMembrane Science and Technology Series No.12として発行するという連絡を受けました。本書の基礎の部分には私の研究が入っています。応用の部分は特に「電気透析および膜技術研究会」会員の皆様から頂いた知識、その他文献情報等をもとに執筆しました。

  Google検索で、Tanaka Yoshinobu, Ion exchange membraneと記入し、さらに「海 外も探す」をクリックすると、いくつかの項目が現れ、その中の「Ion Exchange Membrane, 12−Elsevier」をクリックすると上記新刊書の紹介記事が現れ、その中に購入方法も記載されています。記事の内容は次のとおりです。

表題
ION EXCHANGE MEMBRANES : FUNDAMENTALS AND APPLICATIONS
特徴
イオン交換膜の基礎研究と工業的応用は半世紀以前に開始された。研究開発の発展を通してイオン交換膜技術は各分野に応用され、生活水準の向上に寄与している。本書はイオン交換膜の示す多くの現象についてだけでなく、各分野における応用とその経済的評価について述べている。特長は次のとおり
(1)イオン交換膜技術における最新情報
(2)イオン交換膜に関する幅広い説明
(3)多くの図表を用いたわかりやすい構成

対象読者
学生、研究者、技術者、企業家、コンサルタント 。

目次
基礎
第1章
第2章
第3章
第4章
第5章
第6章
第7章
第8章
第9章
第10章
第11章
第12章
第13章
第14章

イオン交換膜の合成
膜特性の測定法
膜特性と輸送現象
Teorell, MeyerおよびSieversの理論(TMS理論)
非平衡熱力学
総括物質移動
濃度分極
水解離
電流密度分布
流体力学
限界電流密度
漏洩
エネルギ−消費
膜劣化
応用
第1章
第2章
第3章
第4章
第5章
第6章
第7章
第8章

電気透析(ED)
極性反転電気透析(EDR)
バイポ−ラ膜電気透析(BP
電気再生式脱塩(EDI)
電解(EL)
拡散透析(DID)
ドナン透析(DOD)
エネルギ−転換(EC)
体裁

ハ−ドカバ−、530ページ、2007年7月発行
発行: Elsevier
価格 GBP 115, USD 195, EUR 160

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