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2005 B-2,2:「2次核発生速度を考慮した連続分級層型晶析装置の設計法」


1)はじめに

  この記事は2005B-1,2で、2次核発生速度と結晶成長速度に基づく連続分級層型晶析装置の設計法の考え方を紹介したが、その考え方に従って設計式を提出し、それを使った設計法を化学工学論文集第2卷、6号、p561(1971)に発表した。それは、1992年4月に発行した「晶析工学の進歩」p337〜341にも掲載しているので、本稿の詳細を確認したい時にはどちらかをご覧下さい。ここに記述する式やFig. & Tableは上記論文に掲載したものの一部で、その番号は原論文のままでここで抜けているものは原論文にはそのまま掲載されます。また、主な記号はこの本文中に記述しますが、説明不十分なものについても原論文をご覧下さい。ここでは原論文の概要紹介を目的にしてますので、疑問点等については何時でもお問い合わせ下さい。

2)設計理論の概要について

  ここで対象に考える晶析装置は連続円筒形および円錐形分級層型晶析装置
で装置内の状態は理想モデルで、装置内に懸濁する結晶は高さ方向に流動層の流動特性に従った粒径分布があるが半径方向には分布はなく、また溶液流は塔頂方向に一様なピストン流とする。従って、塔底部に供給される過飽和溶液は懸濁結晶の間を通過して過飽和度を低下し、塔頂溶液の過飽和度は最も低く、また懸濁してる結晶粒径は流動特性によって規定される位置に浮遊しており、結晶の成長速度が溶液の上昇速度に比較して遅いので、その沈降速度は特別な場合以外無視できるものとする。装置形状が円筒型では半径方向に均質であるが、溶液の上昇流速はほぼ一定であるので、塔頂方向に空間率の分布は出来る。しかし、円錐形では装置内空間率は一定でそれに合ったように装置壁は上方に向かって広がっているとする。この装置の単位装置容積当たりに懸濁する結晶表面積当たりの結晶核発生速度 f' は装置内懸濁結晶粒径基準のレイノルズRe 及び過飽和度ΔCに対してEq.(1)

(1)

結晶成長速度Rgに対してBransonの式Eq.(2)

(2)

で表されるとする。

3)円筒形分級層型晶析装置の設計法

  晶析装置の微小高さ dZ内の物質収支を取ると基本式Eq.(3)が得られ、それより塔高Zの算出式、晶析操作特性因子(C.F.C)および装置断面積SはそれぞれEqs.(4),(5),(6)となる。


(3)

(4)

(5)

(6)


  また(C.F.C.)は無次元粒径y、無次元過飽和度Φに対してFig.1にて求められる。2005B-1,2の2・2)に示した方法によって円筒形分級層型晶析装置の設計をするには、所望結晶粒径と結晶生産量を規定する必要がある。また晶析装置塔底部溶液の過飽和度および無次元過飽和度Φを設定するとその装置内で発生する2次結晶核発生速度を推算することが出来る。そのためには所望粒径の結晶を所定量生産する時必要な結晶核数を推算する関係式Eq.(7),装置内溶液線流速に関する相関式Eqs.(8),(9)、装置全体の単位断面積・単位時間当たりに発生する2次核発生速度の相関式Eq.(10)およびそれらの推算に必要な相関式はEqs.(11),(12),(13),(14)となる。


(7)

(8)

(9)

(10)

(11)

(12)

(13)

(14)

  これらの関係式を用いると設定した装置塔底部の溶液過飽和度ΔC1に対してFig.2に示した手順にて装置は設計でき、その装置内で発生した2次核発生速度と必要核発生速度も容易に推算できる。ここで、推算した二つの核発生速度は等しくないとその装置で所望結晶を生産することは出来ない。一方これらの核発生速度および設定された装置塔底部の溶液過飽和度の相関式はそれぞれEqs.(15),(16)となる。


(15)

(16)

  これらの相関式を両対数に図示するとFig.3 に示すように、交差する勾配の異なる2本の直線になる。そこで、塔底部溶液の過飽和度を設定して計算すると装置内で発生する核発生速度と所望製品結晶を生産するために必要な核発生速度は一般的には異なる二つの値となるので、図面上の同一過飽和度に対して異なる核発生速度を示す2点となる。そこでそれぞれの異なる点より、それらが対応する式Eqs.(15),(16)の勾配に従った直線を引き、その交点を求めそれより二つの核発生速度が等しくなる塔底部溶液の過飽和度を決定する。最終的にこの過飽和度を塔底部溶液の過飽和度として装置設計をするとその装置は核発生速度と結晶成長速度に基づいて装置設計されたことになる。

4)連続円錐形分級層型晶析装置の設計法

  この装置モデルは既に2)で扱ったように円筒形装置とは装置内空間率が異なるために、相関式はEqs.(4),(5),(6),(10)はEqs.(17),(18),(19),(21)と変わる。
                     

(17)

(18)

(19)

(21)

  しかし、この修正した式を使うとその扱い方は全く同じようにして、2次核発生速度と結晶成長速度に基づく連続円錐形晶析装置を設計することが出来る。

5)カリ明礬12水塩結晶生産の連続円錐形分級層型工業晶析装置の検討

  青山はFig.7に示す大きさ形状の連続円錐形分級層型工業晶析装置を稼働させてTable2に示す結晶製品を生産している。そこでここでは装置形状、装置高さが規定されてる装置で生産されるカリ明礬12水塩の結晶生産速度と無次元操作過飽和度を設定したとき生産される結晶粒径をFig.3に示した図を使って推算した。ここで用いた2次核発生速度の相関式および結晶成長速度式は豊倉・山添・茂木らがAIChE Symp.Series vol.72,No.153,53,(1976)に発表したEqs.(26),(27)を使用した。

 
(26)

(27)

  ここで推算した結晶の生産量、製品粒径は無次元過飽和度をパラメータにFig.8に示した。また、このFigにTable 2のデータを無次元過飽和度を記入して点綴するとFig.8に示すごとく推算結果とよく一致した。

2005年3月

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