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豊倉賢略歴
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2010 A-8,1: 豊倉 賢  「  ホームストレッチの晶析研究 」

1)はじめに
  豊倉が、早稲田大学大学院で晶析研究を始めて50年経過したが、いまだにやり残した研究課題は山積している。昨年10月、恩師城塚正先生がご他界され、4月の先生を偲ぶ会で大勢の卒業生に会って、50年間の晶析研究・晶析技術の進歩について語りあった。

  豊倉が退職した1999年3月、卒業生のお骨折りで「21世紀への贈り物 ; C-PMT 」を出版し、豊倉研究室が中心になって行ってきた晶析研究成果とその晶析技術発展への貢献について411ページの書籍に纏めた。それから10年、化学工学を取り巻く環境は変化し、世界の化学工学研究もエネルギー・環境問題、増え続ける人口増加やそれと直接関連のある医療・食料問題などを注目するようになり、これまで発展してきた工学理論だけに頼っていては、問題解決が困難と思われる新しい分野の研究課題も研究されるようになっている。しかし、このような新しい課題の研究も、これまで成果を上げてきた研究方法を発展させることによって効果的に研究を進めることが出来ることがあり、このような研究も真剣に行われている。また、これまで研究してきた課題もまだ充分な成果を上げる段階に至ってない場合、更に継続してその研究を続けて期待される成果を上げることが、長い目で見ると社会の発展に貢献することもある。

  豊倉が退職して10年経過した21世紀の晶析工学では、一部の研究者によって新しい研究は始められているが、企業の生産工場で広く稼働している工業晶析技術は20世紀に確立されたものが主流となっている。一方、20世紀の研究成果として発表された新しい晶析現象を発展させた新技術の開発研究も、一部の研究者が行っており、その成果は期待されている。

  ここで、日本の化学産業の発展を考えると、日本でオリジナルに考案したアイデイアに基づいた新しい研究成果を発展させて新生産技術を開発することは、日本の産業を発展させるうえで重要である。その意味で、1960年以降豊倉研究室で研究してきた成果を発展させて独創的な日本の工業晶析技術の開発に貢献して来たことは、工学研究として意義深いことである。それらの工業晶析技術の開発研究は豊倉研究室が世界で活躍している著名な研究者・技術者と連携を取って進めたものであり、40年間に亘った豊倉研究室の活動に関心があって討議して来た多数の研究者等から寄稿された記事を、上記「21世紀への贈り物;C-PMT」に掲載している。これらの記事は、豊倉が退職した時早稲田大学理工学部長を務めておられた宇佐美昭次先生や長年に亘ってご指導を下さった早稲田大学名誉教授城塚正先生が御執筆下さったのをはじめ、特に豊倉研究室の晶析研究成果に好意的にご支援を下さいました元化学工学会会長の桐栄良三先生や齋藤正三郎先生、その他、国内外の学会をリードされた著名な先生方、また研究活動を共に行った国内外の研究者、技術者や研究室の卒業生等100名を越える人々から豊倉研究室の活動等についての寄稿を頂いた。

  今年8月より始める本ホームページtc-pmtにおいては、記念出版書籍に掲載された貴重な記事を毎月数件以内に絞って引用し、豊倉はその内容をよく考えて、大学研究とは何か?共同研究者との研究はどのように進めて成果を出すべきか? また、研究成果の自己評価をどのように行って、研究成果を発展させたかを記述し、これから大学や産業界で活躍する卒業生等の参考になるよう、豊倉は80歳を越えるまで晶析工学研究を続けたいと考えている。そのようにしてこれまで行ってきた研究を再検討することによって、豊倉が50年間続けてきたホームストレッチの晶析研究を纏め、それを理解して工業晶析研究に関心のある研究者・技術者に、豊倉研究室の晶析研究を越えて新しい晶析工学・技術を発展させていただきたいと期待している。

2)著書「21世紀への贈り物 ; C-PMT 」について
  豊倉は、早稲田大学選択定年制度の適応を受けて申請した1999年3月退職の願いが受理された内示があった1998年秋には、棚橋さんや平沢先生を中心に卒業生の間で豊倉の退職に関連した相談も始めたようであった。その中の一つに退職記念出版が話題になったようで、平沢先生を通して豊倉の意見が尋ねられた。実は、この話は突然伺ったことだったので、どう返事をしたらよいかなかなか思いは決まらなかった。何れにしても、豊倉が早稲田大学に37年間奉職し、無事退職の時を迎えられたのは、恩師城塚正先生はじめ、大勢の早稲田大学や学会の先生方からご指導を頂き、その上、企業現場の技術の方々や共に研究活動を行った研究室の卒業生、学会活動を一緒に行った他大学・公的研究機関の研究者・企業技術者からご理解と協力・支援を頂いて、早稲田大学の晶析研究を発展させることが出来たからと考え、この機会にこれら大勢の方々のご厚情に御礼申し上げ、これまでに行った研究成果等を纏めて将来の晶析工学理論・化学製品生産技術の発展に貢献するような記念出版が出来たらと思って、記念出版のお申し出にお礼申し上げた。そこで、記念出版書籍の主な内容は、豊倉が早稲田大学在職中に研究室所属の学生と行った晶析研究成果の上に纏めたものであって、その成果は、研究室の研究哲学C-PMTに基づいて20世紀に纏めたものであることを表せるタイトルに卒業生の賛同が得られたらと期待した返事をした。

  標記記念出版書籍については、出版にご尽力いただいた記念会実行委員長棚橋純一氏が記念誌の冒頭に「豊倉先生記念の本の出版に際して」を寄稿いただいている。その記事は本稿の巻末に記載しているので、是非御覧頂くよう期待している。また、豊倉が申し出たC-PMTは、平沢先生から相談を受けた時にとっさに思いついたことで、多くの人は馴染みないと言葉と思い、記念出版書籍のpp.61~65に「 C-PMT と研究者・技術者の育成 」の記事掲載をお願いした。また、この記事の中のp.63~65には豊倉研究室の晶析研究とC-PMTの係わりについて記述した。この書籍は出版後10年余を経過しているので見付け難い諸氏はご一報いただければ、コピーを送付させていただきます。

3)むすび
  tc-pmtに掲載した晶析研究についての記事は、恩師城塚先生が元気で居られた昨年秋頃までは、豊倉研究室で行ってきた晶析工学研究を今後さらに発展させようと志す人達に、研究室で行ってきた晶析研究の進め方を正しく伝える記事を掲載してきた。しかし、それから半年経った今、これからのtc-pmtに掲載する記事は、世界の晶析研究や化学工学における工業晶析研究として、化学工業の発展を視野に入れた広い内容にしなくてはと考えるようになっている。

  そこで、豊倉がtc-pmtに掲載する記事は、そこに記述しようと思っている内容について、豊倉と最も近い考えを持っている他の研究者の考えることとの相違点の理解が得られるように記述することで、広い視野での記述内容を考え、晶析工学の発展に参考になるようにしようと思っている。具体的には自分のことであっても、同じ内容のことについて自分以外の研究者が記述した記事を可能な範囲で併記するようしてはと考えている。

  このような記述は何処まで可能か分からないが、第三者が執筆した記述内容と近い主題に対して豊倉の考えを記述してtc-pmtに毎月掲載するようにし、これから新規な最先端の研究活動を志す人達の参考になるように心掛ける。そこで、対象にする第三者の記事は当面、書籍“21世紀への贈り物C-PMT”に掲載されてる豊倉の親しい人達が執筆したものとし、次号は上記書籍のp.2 およびp.3 に掲載されてる宇佐美昭次先生と城塚正先生がご執筆下さった記事を拝読して、豊倉の大学研究室生活を考えて見ようと思っている。

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巻末添付記事:記念出版書籍“21世紀への贈り物C-PMT”p.1に掲載した棚橋純一氏ご執筆の記事 “豊倉先生記念の本の出版に際して”のコピー

豊倉先生記念の本の出版に際して

豊倉賢先生記念会実行委員会
実行委員長 棚橋 純一

  1962年早稲田大学に奉職され、以降36年間早稲田大学で活躍され、1999年3月に選択定年制度を受けて退職される恩師豊倉先生を記念して先生の御薫陶を受けた弟子たちが記念出版を発行することになりました。この出版に際して、弟子たちで構成する出版委員会で協議を重ね、先生が早稲田大学理工学部で教鞭を執られた教育・研究理念を纏めて、それを今後、大学研究室で学ぶ学生に伝承すべく編集することにしました。先生は晶析工学を大成され、20世紀の化学工業界に活をいれ、21世紀の発展を期待しておられます。学会での活動は化学工学会が中心でしたが、日本化学会、分離技術懇話会、日本海水学会、日本粉体技術工業協会などに及び、研究・教育の対象も物理化学的な基礎現象から晶析工学、工業プラント、化学工業プロセス等化学工学を軸に工業化学的取り組みもカバーされました。その間海外との交流も活発に行われ、日本国内はもとより世界の大学・研究所の研究者、産業界の技術者とも親しく交流され、学問・技術についての情報交換も行われてきました。

  以上の事情を鑑み、記念出版を“21世紀への贈り物C-PMT”とし豊倉先生にご相談申し上げ、活動された研究者・技術者にも執筆をお願いし、また、先生の恩師城塚先生をはじめ、化学工学会元会長の桐榮良三、齋藤正三郎先生の他多数の方々から玉稿をいただきました。また豊倉先生からは1999年1月22日に行われた最終講義および40年間の御研究・教育を振り返った玉稿をご執筆いただき、本書を出版することができました。ご多忙のところ貴重な時間を割いてご執筆いただきました方々に御礼申し上げます。益々のご健康とご健勝をお祈り申し上げます。

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