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豊倉賢略歴
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2008 A-3,1: 豊倉 賢  「 5年目のホームページtc-pmtに向けて 」

1)tc-pmt 4年目の活動を受けて:
  昨年3月掲載のホームページ「1007A-1,2」では、当初考えていた満3年を経過 したところで新しい展開をするために、それまで執筆を依頼していた研究室卒業生仁加えて、豊倉研究室のホームページtc-pmtに関心のある方々にも執筆いただいて内容の充実を図ることを提案しました。そこでこれまで学会活動や晶析研究のことで豊倉と一緒に仕事をしたことのある人達の中から、執筆時間の都合をつけて頂いた数名の方々にお願いして、卒業生とは異なった世界を経験ことをベースにした貴重な記事を寄稿頂きました。卒業生は既にそれらを読んで各自が経験したことのない分野の事柄や世の仕組みを学んで、これからぶつかるかも知れない未知な活動環境に対する心の備えをするのに随分参考になったことと推察してます。今年もこのような記事の掲載を継続しようと思いますので、豊倉研究室卒業生のHPに関心があり、寄稿いただける方を紹介・勧誘して下さい。一方、昨年は卒業生に対する寄稿依頼はこれまでより多少少なくなりました。最初の3年は実績を作るため、卒業生からの寄稿を恒常的に続けるように務めましたが、これからは無理なく継続していきたいと思っています。今年受け取った年賀状の中に寄稿を考えていると書いた人もおりまして、これからも寄稿依頼の送信は続けますので、卒業生の活発な寄稿を期待します。特に、最近は海外で活躍する人は多くなっておりますし、国内でもより重い責任ある立場で活躍している人が増えています。また、長年務めた職場を後進に譲って、第二の人生を始めている人もいまして、そのような新しい人生についての記述等は後輩の参考になることが多いものですので、忙しいこととは思いますが積極的に寄稿して下さい。

  昨年(2007年度)は日本粉体工業技術協会に晶析分科会が発足して10年を経過しまして、08年1月18日に晶析分科会10周年記念講演会「日米欧における晶析技術の将来」を東京一ツ橋の「学術総合センター・一橋記念講堂」で開催し、講師に卒業生の研究室時代に良く名前を聞いたことと思いますProf.J.Ulrich, Prof.A.S.Myersonと竹上敬三さんをお招きしました。この分科会は発足当初豊倉がコーデイネータを務めましたが、その後はコーデイネータの北村、城石先生と代表幹事の山崎さんを中心に活動を続け、国内では粉体工学会の奥山先生らと産学共同の晶析研究グループを立ち上げ活発な交流を行っています。また、国際的にはヨーロッパWPC ChairmanのProf.J.Ulrich、アメリカACT有力メンバーのProf.A.S.Myersonらと連携を取りながら活発な活動を検討してまして、このグループの活動は、日本の晶析グループ活動の有力な拠点として国内外より注目されております。最近は企業からの派遣で大学院博士課程に在籍して晶析と異なるそれぞれの分野で活動している卒業生も多くなってきています。その活動状況などもこのHPに寄稿・紹介していただけたらと期待してます。

2)迷走する日本を軌道に乗せるために:
  バブルの崩壊から立ち直り掛けていた日本経済は、最近の原油高とそれに追い打ちを掛けるように起こったサブプライム問題の発生等で迷走しているように見えます。しかし、日本における企業を広く考えると、苦境の中においても既定の方針通り進めて着実に業績を上げてるところもあれば、不況の波に煽られて四苦八苦しているように思えるところもあります。これら企業の業績を健全に保って発展させるには、その企業で働く従業員の姿勢も大切ですが、大局的には企業経営者の経営方針、政治家の施政方針の影響を大きく受けると思います。ここで対象になる経営方針や施政方針は、企業や国家、世界の現状分析に基づく自己評価とそれを前向きに想定して描く実現可能な将来あるべき姿(将来ビジョン)に近づけ・実現するために拘わるものであることが必要です。この分析、評価、方針等の決定は最終的には経営者の判断で決められますが、これらの判断は、現在までに研究され・確立された理論に従って検討され、決められるのが妥当と思います。しかし、その理論は現代社会で起こっているすべての問題について回答を作成することは出来ますが、その内容は何時でも絶対的に適切だと期待することはできません。

  理論は、そこで対象になるすべての事象とその各事象が持っている個々の特性およびそれらが相互に関与する関係をモデル化して提出されたもので、そのモデルは現実の社会、経済等で起こっている事象をすべて正しく表現していると考えるのは至難なことです。したがって、企業経営者や施政者が対象にしている事象を最もよく表現していると思われるモデルを想定し、それに最も近いモデルの上に提出された理論に従って近未来の姿を推定し、それを実現する方針を決定してその実現を図るようにするのが一つの有力な方策と考えられます。しかし、世の中は流動的であり、理論を選定するために想定したモデルは、時の経過によって適用できなくなることがあり、その場合は既に提出した理論を修正して使用するか、それとは別に新しい理論を提出して適用出来るようにすることが必要となります。このような理論を良く理解して、皆が期待する将来像を描きながら経営方針や施政方針を決定する経営者や施政者がいる企業・国家は、迷走することなく長期的安定成長を続けることが出来のでないだろうか?ここでは、時代の変遷に惑わされることなく、世の中の動きに対応を取れる理論体系を構築できる研究者と、その理論を企業経営や施政に適用できるよう経営者や施政者に示唆を出来る教育者の活躍が必要と思う。

3)産業立国に貢献する工学分野の研究者と技術者
  社会科学においても、自然科学においてもその理論が企業や国家の発展に寄与する仕組みは同じであるが、そこで対象になる事象の特徴は異なっていることが多く、時としては全く違ったもののように見える。しかし、それぞれにおいて体系化されてる両方の理論によって考えると、一方のみでは見えなかった部分が見えるような気になることがある。それは自然科学系理論の中だけで考えても大切なことと思う。いずれにしても、一つのことを真剣に考えて追求すると、その内容は深められ、完成度は高くなるがその殻からの中に閉じこもっていると行き詰まってしまうことも多い。

  豊倉は、早稲田大学在職時の40年間、晶析を軸に研究を進めてきたがその過程において常に新しい刺激を加えながら晶析研究を伸ばすようにしてきた。研究を始めた当初の晶析研究は、化学工学分野の多くの研究者と同様に析出成分の液相内拡散現象を中心に考えて研究を進めた。その現象をある程度進んだ段階で、城塚先生からそれをベースにして、装置設計理論の提出をするようにご指示を受けた。それがある程度進んだ過程で、先生はそれを企業現場の工業装置に適用する機会を与えて下さり、経験を積むことが出来た。その段階で、米国TVA公社への留学を許して下さった。その時、このまま晶析研究を伸ばすのも一つの方法だが、また全く異なる分野の研究を行う道もあるというご示唆を頂いた。豊倉の留学は早稲田大学で行った晶析研究成果に対してアメリカの研究者・技術者から評価を受けたが、その一方で、ヨーロッパの研究者からもそれなりの評価を受けて帰国することが出来た。帰国した時先生からお前は晶析研究を続けることによって、それを深めることが出来たとのお言葉を頂き、さらにその研究を続けて、広く世界の研究者・技術者から評価を受けられる成果を出そうと思った。またその時、城塚先生から、晶析分野を発展させるには、自分のグループだけですべての課題を研究して成果を独り占めするようなことをしてはだめだという貴重なご指導も頂いた。それを機に晶析研究を行うのにも、自分グループの研究テーマを限定し、それ以外の重要な研究課題は他の研究グループに委ねるようにした。そのことは、自分たちの研究範囲の成果について、世界の研究者からさらに高い評価が得られるようにしなければならないと考えて研究を続けた。

  それから30年、欧米を中心に海外の研究者・技術者と交流を続けた。そこでは数年ごとに同じ研究室を訪問し、その間に提出したオリジナルなアイデイアに基づいた新しい研究成果についての討議を行った。このようなある限定期間の研究成果の進展については、世界の一流の研究者は皆高い関心を持っており、この新しい研究成果を発展させて開発した技術なくしては工業立国を築き上げることは出来ないと思った。そこには真にオリジナルな理論を提出する研究者とその研究成果を発展させて新技術を開発出来る技術者が必要で、研究者と技術者の二人三脚きわめて重要であった。

4)むすび:
  豊倉研究室の40年の歴史は新技術の開発に寄与する研究と教育活動の連続であった。それらに関係した主要論文や記事は、1992年に発行した「晶析工学の進歩」や1999年に発行した“ C-PMT ”掲載してある。今年度のHPにはそれらの記事をより平易に書き直して掲載し、関心のある人達の参考になればと考えている。

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