理数生物授業日誌 2005年6月

6月1日(水) 授業

 遺伝子の実体
遺伝情報の発現1「転写」

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遺伝子は長いDNA分子の上にとびとびに存在します。その情報とは,A,T,G,Cの4種類の塩基の配列なのです。遺伝情報の発現とは,その塩基配列をもとに,タンパク質が作られる過程です。まず第一の過程は「遺伝情報の転写」です。長いDNA分子の中で,必要な部分の塩基配列が,伝令RNA(mRNA)に写し取られます。この時,大量のタンパク質が必要な場合は,mRNAも沢山でき,少なくて良い場合はmRNAも少ししかできません。

「明日から山岳部の大会です。明日は問題演習をやること」

6月6日(月) 授業

遺伝情報の発現2「翻訳」

ー19ー

核内で作られたmRNAは遺伝情報を持たないイントロンを切り離す「スプライシング」をへて核膜孔から核外へ出,そこにリボゾームが付着します。リボソームの上にあるmRNAの3つの塩基の配列(トリプレット)に相補的に結合する塩基配列をアンチコドンに持った運搬RNAが特定のアミノ酸を運んで来て結合します。リボソームはmRNAのうえを3塩基分ずれてまたtRNAが次のアミノ酸を運んで来ます。こうして次々とアミノ酸が運ばれ,アミノ酸どうしがペプチド結合をし,立体構造が形成されてタンパク質が完成するのです。

「DNAとRNAの違いをしっかり頭に入れておくこと。ポイントは”U”福井弁のような塩基です」

6月10日(金) 授業

遺伝子と酵素

ー20ー

一つの遺伝子は,一つの酵素に対応すると考えたのはアカパンカビを使って実験した,ビードルとテイタムです。アカパンカビにX線を当てると,アルギニンを最小培地に加えないと生育できない変異株が出て来ますが,それは,アルギニン代謝系で働く酵素を作る遺伝子が壊れてしまうからと考えられます。

遺伝子DNAの塩基配列が1つ間違えただけでも,作られるタンパク質に大きな変化が生じる場合もあります。また,塩基が1つ無くなると,フレームシフトが起きて,ほとんどまともなタンパク質は作られません。

6月15日(水) 授業

形質発現と携帯形成

ー21ー

遺伝子はタンパク質の設計図でした。しかし,設計図だけあっても家は建ちません。適当な時期適当な場所で,設計図に示されている部品が,正確に作られる必要があります。それぞれのタンパク質が作られるスイッチになるのもやはり物質なのです。その物質は生物体の外から来るものもあれば,その生物の遺伝子によって作られたタンパク質である場合もあります。

ヒトの持っている遺伝子の2割以上は,遺伝子の発現を調節するためのタンパク質を作る「調節遺伝子」なのです。

6月17日(金) 授業

バイオテクノロジー

−22ー

生物学の発展は,バイオテクノロジーと呼ばれる新しい技術を産みました。組織培養細胞融合は細胞レベルでのバイオテクノロジーです。遺伝子レベルのバイオテクノロジーに遺伝子組換えがあります。哺乳類しか作らないホルモンの遺伝子を制限酵素(はさみ)リガーゼ(のり)を使ってプラスミド(細菌が持っている小さい環状のDNA)に組込みます。このときついでに抗生物質耐性遺伝子も組込んでおきます。そのプラスミドを大腸菌に入れると,大腸菌がホルモンを作りはじめます。ちゃんとプラスミドが入ったかどうかを確かめるため,大腸菌を抗生物質を含む培地で培養するのです。そこで生育できた菌は遺伝子が導入されていると言うことです。

大腸菌への遺伝子導入実験,細胞融合の実験は経験済みです。▼細胞融合の実験へ  ▼遺伝子導入実験へ

6月20日(月) 授業

バイオテクノロジー2
DNAのクローニング

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DNAの解析や遺伝仕組換えに不可欠な技術がDNAのクローニングです。マルスが考えたPCR法はチューブの中に,DNAの鋳型鎖とDNAポリメラーぜ,ヌクレオチド,プライマーを入れ,後は温度を3段階に約1分ずつ変化させると言う単純なものでした。しかし,この1サイクル,3分で,DNAは2倍に増幅されるのです。約2時間で,百万倍程度に増幅することができます。全く同じ塩基配列を持ったDNA断片が幾らでも負やすることができるのです。

90℃と言う温度に耐えることのできる,熱水噴出口に生息する細菌のDNAポリメラーぜに着目したのが成功の秘けつでした。

6月23日(木) 授業

分子生物学復習

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科学技術振興機構(JST)の作る理科ネットワークで,教員用に公開されているコンテンツを利用して,DNA,タンパク質,バイオテクノロジーの復習をしました。立体的な画像のアニメーションが使われているので,DNAから伝令RNAが転写され,また,伝令RNAの塩基配列をもとにアミノ酸が次々と連なって,タンパク質が合成される過程がよくわかりました。授業の内容が,画像としてイメージできたと思います。

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