理数生物授業日誌 2005年5月

5月9日(月) 授業

異化

 「好気呼吸の反応過程」

-7-

好気呼吸の反応過程は1.解糖系 2.クエン酸回路 3.電子伝達系の3つの経路にわけることができます。
解糖系は嫌気呼吸と共通でグルコースが2モルのピルビン酸になる過程でATPが2モル生成されます。クエン酸回路は反応回路で,2モルのピルビン酸に6モルの水が加わり,6モルの二酸化炭素に分解されます。やはり2モルのATPが生成されます。電子伝達系は1,2の段階で脱水素酵素によってとれた水素が,その電子をシトクロムと言う酵素の上をやり取りし,1モルのグルコースにつき34モルのATPを生成します。最後に水素は酸素と結合し,水が生じます。このように,有機物を完全に二酸化炭素と水に分解すること持っているエネルギーを効率良く取り出すことができるのです。

「演習のお陰で,県模試は白紙にならずにすんだかな?」

5月11日(水) 授業

異化「呼吸商」

−8−

吸収する酸素の量と,放出する二酸化炭素の比(二酸化炭素/酸素)の値を呼吸商(RQ)と言います。呼吸基質に炭水化物を使った場合には,RQは1に近い値となり,脂質の場合にはRQ=0.7タンパク質の場合にはRQ=0.8ぐらいになります。脂質を基質とする場合には,多くの酸素が必要なのです。この値から,実際に生物が呼吸に何を基質としたかがわかるのです。ちなみに,種子に油分を多く含むゴマなどは,呼吸商が0.7に近い値になります。

「先生,実験しないの?」「ついにきたか」(B)

5月12日(木) 授業

同化

光合成の限定要因

−9ー

光合成速度は,光強度,温度,二酸化炭素濃度,水のうち最も不足している要因によって決定されます(限定要因)。何が限定要因かは,そのパラメーターを変化させた時に光合成速度も変化するならば,それが限定要因です。

光合成速度はふつう一定時間当たりの二酸化炭素吸収量を測定して決定しますが,その測定値には,呼吸によって放出する二酸化炭素量を差し引いた値になります。したがって(真の)光合成速度を求める場合には,測定値(みかけの光合成速度)に呼吸速度の絶対値を加える必要があります。

「1年の時にも学習しました,思い出しましたか?」 「・・・・」

5月13日(金) 授業

同化
光合成の反応過程

−10ー

光合成はチラコイドで起こる 1.光の吸収 2.水の分解による還元型水素の取り出し 3.ATPの合成と,ストロマで起る炭酸同化とグルコースの合成という4段階にわけることのできる一連の化学反応です。1.2.3は光があればすすみ,二酸化炭素がなくてもいくらかの還元型水素(X・H2)とATPが蓄積します。その後,暗黒条件にして二酸化炭素を与えると,第4段階のカルビンベンソン回路がまわり,いくらかの二酸化炭素を吸収し,グルコースを生成します。

「光合成色素と酵素群を持っていれば,我々もご飯を食べずに生きていけるか?」

5月16日(月) 授業

同化
細菌の光合成,化学合成
窒素同化
窒素固定

−11ー

細菌は,葉緑体は持っていませんが,光合成をする種類があります。バクテリオクロロフィルで光エネルギーを吸収し,水の代わりに硫化水素を分解し還元型の水素を作ります。また,光エネルギーではなく,物質が酸化する時に発生するエネルギーを用いて炭酸同化を行なう,硫黄細菌硝化細菌などの細菌がいます。

タンパク質の原料はアミノ酸で,窒素を含む有機物です。有機酸にアミノ基をつけてアミノ酸を作る過程が,窒素同化です。

空気中には窒素ガスがたくさんありますが,これを直接窒素同化に使うことはできません。しかし,根粒菌アゾドバクターラン藻(シアノバクテリア)の数種などの原核生物には,窒素ガスからアンモニアを作る「窒素固定」をすることができるものがいます。

5月17日(火) 授業

免疫
細胞性免疫

−12−

脊椎動物は,体外から侵入した生物の主にタンパク質を抗原として認識し,それを排除する仕組みを持っています。抗原が侵入すると,マクロファージがその細胞膜表面に持っているタンパク質で,抗原に結合し,その情報をT細胞に提示します。T細胞はさらにB細胞にその情報を伝え,B細胞は抗原に特異的に結合する抗体(免疫グロブリン)を生産します。抗体は抗原と結合し(抗原抗体反応)抗原を無力化します。B細胞は分裂して増え,抗原が無くなった後には,少しのB細胞が,記憶細胞として残り,次に抗原が侵入して来た時には,素早く抗体を生産することができます。

「免疫の主役,T細胞とB細胞 私のイニシャルです。」

5月18日(水) 授業

免疫
免疫2

−13−

予防接種はあらかじめ抗原を体内に入れておいて,その抗原に対する抗体を生産する記憶細胞を作っておくものです。はじめに入れる抗原をワクチンと言います。血清療法はウマなどに作らせた抗体を,抗原に感染した時に注射し,速やかに抗原を排除する方法です。

アレルギーは免疫の過剰反応,AIDSはT細胞にHIV(ヒト免疫不全ウイルス)が感染し,免疫システムも壊してしまう病気です。HIVは感染力は弱いのですが,発病まで時間がかかり,その間,他人に感染させる可能性があります。そう言う意味では,すぐに発症して激しい症状を起こす病原体よりもわけが悪いのです。

明日から試験です。

5月25日(水) 実習

免疫
感染経路を突き止めろ1

−14ー

昨日は試験を返しました。よく勉強した人もいます。直前の質問がばっちり当たった人もいました。

今日は久々の実習。ELISA法を用いた感染の有無を調べ,どんな経路で感染したかを明らかにします。病原菌(ホントはニワトリの血清タンパク質)の入ったチューブは1つだけ,誰かが持っています。他の人のはすべて単なる緩衝液。3人の人とチューブの中の液体を混ぜ合わせて分け合います。相手がもし感染していたら自分も感染します。自分のチューブに病原菌が入っているかどうかをELISA法で確かめます。
自分のサンプルをウェルスプリットの孔の中に入れ,タンパク質をウェルに吸着させます。次に,そのタンパクに特異的に結合する抗体(一次抗体)を入れます。タンパクがあれば結合します。次に一時抗体に特異的に結合する二次抗体を入れますが,二次抗体には,酵素も一緒に結合しています。最後に酵素基質を入れ,もしそこに二次抗体に結合した酵素があれば,基質は反応し青く発色するのです。

右の3つが陽性コントロール,次の3つが陰性コントロールです。個人のサンプルは3つずつ入れてあり,左から4〜6つめにサンプルを入れた人は,感染していたことがわかりました。

5月26日(木) 実習

免疫
感染経路を突き止めろ2

−15ー

昨日ELISA法で誰が感染しているかを調べた結果と,誰と接触したかの記録を持ち寄って,感染源と感染経路を追跡しました。接触した人全員が感染している人が,感染源です。
結果,MさんとYさんのどちらかが感染源であると言うことが突き止められました。残念ながら,そのどちらが最初かはわかりません。そのわけは,感染を受けた人が,感染源から直接感染を受けた人と後で接触していたためです。しかし,いずれにせよ,二通りの感染経路が明らかにされました。実験は大成功です。

「理系クラスはうまく行かなかったのに」(B),「私達,実験に慣れてるから」(とみんな鼻高々)

5月27日(金) 授業

遺伝子の実体
DNAの構造

ー16ー

遺伝子の本体はDNAです。構成単位はヌクレオチドと言い,ペントース(5炭糖)にリン酸と塩基がついたものです。塩基には4種類ありアデニン(A),チミン(T),グアニン(G),シトシン(C)です。ヌクレオチドは脱水結合によって多数直鎖状に結合し,ポリペプチドを作ります。塩基どうしは水素結合によって緩く結合しますが,ペアが決まっていて,アデニンとはチミン,グアニンとはシトシンと決まっています。したがって,ヌクレオチドの2本鎖がはしご状につながり,それが二重らせん構造を作っています。

1953年,ワトソンとクリックがその構造を発表し,分子生物学の発展の扉が開かれました。

5月30日(月) 授業

遺伝子の実体
DNAの複製

ー17ー

DNAの何が遺伝子かと言うと,その塩基配列が,遺伝情報そのものなのです。ですから,塩基配列が変らないように正確に複製が起きなくては行けません。その点,塩基が相補的に結合する「半保存的複製」は塩基配列のコピーの正確さに関しては,これ以上ないほどです。

今日から教育実習の先生が来ました。また,授業してもらいます。


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