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放送大学 教養学部
社会と産業コース

プロフィールprofile


どこで学んできたか

 1960年、石川県金沢市に生まれる。金沢泉丘高校理数科から文系に転身し(当時は少し成績がよいとみんな理系を志す時代だったので、自分もそうしてしまったが、高校の最初の数学の時間でこれはだめだと思った)、1979年(共通一次試験が行われた最初の年だった)都立大学人文学部に入学。その後、社会学科に進む(当時は人文学科社会学専攻だった)。大学院は東京大学社会学研究科に進むが、実証的な伝統の強い都立大の社会学とは異なり、理論指向の強い当時の東京大学の社会学研究室(ちょっと上の学年に大澤眞幸や宮台真司がいた)の中にあって、かえって都立大的な実証研究への志向を固める(1987年博士課程中退,社会学博士)。

どこに勤めてきたか

 その後、東京都の老人総合研究所の研究助手をへて、流通経済大学の社会学部に属することになる。流通経済大学はかつて日本通運が出資をして設立された大学だが、日通が汚職事件に関与した際に学生が集まらずつぶれかけた経験をもつ。私が在籍した当時は社会学部の新設を皮切りに18才人口の多いうちに拡張して経営基盤を確立し、18才人口が減少する時期に備える努力をしていた最中であった。この時期にこのような健全な大学経営の実態にふれえたことや、決して有利な地位にはない大学や決して優秀とはいわれない学生たちと関わることができたのは、私にとっては何よりの財産である。その後、流通経済大学は堅実な中堅校としての地位を確立していくことになる。

研究面での経歴――社会学の方法論の側面で

 学問的な意味でのプロフィールを記すならば、最も影響を受けた教員は意外に思われるかもしれないが、学部時代の指導教員であった河村望である。とりわけ学部3年のときに演習でマルクス、ヴェーバー、ジンメルの講読を受けることができたのは大変な幸運であった。私に少しばかり社会学の古典的素養があるとすれば、すべては河村さんのおかげである。柳田国男をへて有賀喜左衛門の社会学へと進んでいったのも河村さんの示唆による。学部時代にはどちらかといえば頭でっかちで理論指向であった私が、実証研究を志ざすようになる河村さんとのいきさつについては、少し書いたものがあるので参照してほしい(玉野 1998「モノグラフ研究と社会学」)。福武農村社会学への批判やアメリカのシカゴ学派の理解についても、その方向性はすべて河村さんが書いたものからえている。『ブリッジブック社会学』に私が書いた内容も同様である.したがって、私の社会学の基本には日本の社会科学におけるマルクス主義の影響を底流とした農村研究や家族研究の古い系譜が流れている。これは私のような年代に属する社会学者には希有なことであろう。そのような素養をふまえてシカゴ学派流の都市社会学研究を行っていることに、自分なりの特長があると思っている。

研究面での経歴――専攻、研究対象の側面で

 社会学的な方法論については以上の通りだが、私が実際に行ってきた調査や研究対象はまた違った系譜をもつ。この点ではかつて河村さんと並んで都立大の社会学を支えていた倉沢進との関わりが深い。倉沢進・森岡清志のもとで行われた伝統型消費都市における都市的生活様式や生活構造に関する調査研究に参加する機会を多く与えられた。この点についても少し書いたものがあるので参照されたい(玉野 2003「サーベイ調査の困難と社会学の課題」)。そんなわけで、かつて倉沢進が深く関わった自治省のコミュニティ施策などに代表される、いわゆる都市コミュニティ研究を専門とすることになったわけである。もう少し一般的な言い方をすれば、都市地域を対象としたコミュニティ・スタディということになる。要するに、町内会や自治会などの様々な住民活動団体やNPO・ボランティアなどの市民活動と、それぞれの地域社会の歴史的な形成過程や地方自治体の政策との関連を、社会学的な調査研究の手法で解明していくというタイプの研究を行っているわけである。

最近の社会的活動と研究内容

 そんなことをやってきたためか、最近では神戸市の地域活動推進委員会の委員などを頼まれ,少しは社会学的な地域研究の方法が実地に生かせないかと考えながら仕事をしている。他方、本業としての研究活動としては、何年か前に長い間細々と続けてきたある地域の調査研究の成果をようやく1冊のモノグラフとして仕上げることができた.ある町の高度成長期までの物語を通して日本の社会の骨格が見えてくるものになっているので,ぜひ多くの人に読んでもらいたいと願っている(玉野 2005『東京のローカル・コミュニティ――ある町の物語一九〇〇─八〇』).同時に、その副産物としての創価学会の研究を一般向けにまとめることもできた(玉野 2008『創価学会の研究』).さらに,それらの研究の継続として出てきた研究課題――大都市地域の変動にともなう,かつて工業地帯であった都市地域の空間的社会的な転換とそれに隣接する住宅地における市民活動の展開など――についても、住宅総合研究財団の出版助成を受け,編著をまとめることができた(玉野・浅川編 2009『東京大都市圏の空間形成とコミュニティ』).今後は,東京・大阪・名古屋の三大都市圏の比較を視野に収めた,グローバリゼーションのもとでの日本都市研究へと,改めて進んでいきたいと考えている.

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