日本スチールドラム振興会 SINCE 1994

楽器の種類

 スチールドラムには高音域から低音域までのいろいろな種類があり、トリニダードトバゴでは主にそれらで構成されたオーケストラやバンドで演奏されております。
高音域の「テナー」や「ダブル・セコンド」などはソロや他の楽器とのアンサンブルで演奏される場合も多くあります。楽器のメーカーや製作者によって多少の違いがありますが、ここではそれらの楽器の主な種類をまとめてみました。
主な楽器の種類(基本最低音域順)
名称 種類 形状 個数 音域
1、 テナー ハイ・テナー ノート部の深さ:23cm
スカートの深さ:14cm
1個 D4〜F#6
ロー・テナー 1個 C4〜E6
2、 ダブル・セコンド 長さ:22cm 2個 F#3〜C#6
3、 ダブル・テナー 長さ:24cm 2個 2個 F3〜B5
4、 ギター ダブル・ギター 長さ:45cm 2個 C#3〜G#4
トリプル・ギター   3個
5、 チェロ トリプル・チェロ 長さ:45cm 3個 B2〜Bb4
フォー・チェロ 長さ:55cm 4個 Bb2〜C#5
6、 テナー・ベース 長さ:62cm 4個 F2〜C4
7、 ベース 長さ:89cm 6個 A1〜D3
8、 クワドロフォニック 長さ:28cm 4個 B2〜Bb5
直径は全て約59cm

1、テナー

 音域的にはソプラノ、基本的にメロディーラインを演奏。
 音階の配置は5度サークルとなっている「フィフツ(5th)・スタイル」が現在の標準。 以前は最低音程がD4からの「ハイ・テナー」が一般的であったが、現在ではC4からの「ロー・テナー」が主流のようです。
 かつては現在「インベーダーズ・スタイル」とも呼ばれている特に原則の無い配置となっていて、当時より演奏しているプレイヤーは現在でもそれを使用。またレネゲイズの古参プレイヤー等は「フォース(4th)・スタイル」と呼ばれる特殊な音階配置の楽器も使っている。
 この楽器の呼び名が「テナー」となった経緯については、ある人がジャズ・バンドなどを見て、一番前でメロディーを演奏しているのが「テナー」(サックス)だと聞き、同じように一番前でメロディーを演奏することの多いこの楽器を「テナー」と呼んでしまった・・・と聞い事がある。最近では、「リード」と呼ばれたり、「ソプラノ」と呼ばれることもあるが、世界的に「テナー・パン」と言えばこの音域のこの種の楽器の呼称として通用する。

2、ダブル・セコンド

 音の配置はオーギュメント・タイプであり、当初はハーモニー用に開発された物と思われる。ソロでメロディーを演奏するプレイヤーもおり、そういったプレイヤーは外周部で隣接するオクターブの間に隙間の無い「メロディック・タイプ」を使用している。
 「トリニダード・スタイル」と「インベーダーズ・スタイル」と呼ばれる物があり、この「インベーダーズ・スタイル」が多いようである。
 最低音階がE3からの楽器も増えつつある。また、F3からやG3からの物も稀に見受けられる。
 アメリカのパン・ショップでは特殊な配置の楽器を製作,販売している。

3、ダブル・テナー

 “バーティー・マーシャル”の開発した楽器。メロディーとハーモニーさせるラインを演奏する場合が多い。スエーデンの “Steel Pan Tuning”という本や、スイスのメーカーのカタログには上記と多少異なる配置図が紹介されていますが実物は今の所未確認です。ちなみにこの両音階配置図は全く同じコピーと思われます。また“レネゲイズ”ではオーギュメント配置で音域の狭いだけの楽器も使用しています。

4、ギター

「ダブル・セコンド」や「チェロ」などと和音を構成する演奏が多いようです。
「ダブル・ギター」で「トリニダード・スタイル」と呼ばれる楽器の音階配置はオーギュメント・タイプであり、同じくオーギュメント・タイプで最高音程の低い「ルディー・スミス・スタイル」も見受けられます。また、音階配置の原則の不明なエリー・マネットの開発したと言われる「インベーダーズ・スタイル」もあります。

5、チェロ

「トリプル・チェロ」は“エリー・マネット”の開発した楽器で、音階配置はディミニッシュ・タイプであり、最高音階がC#5までの物もあります。
「フォー・チェロ」は“バートラム・ケルマン”が開発した楽器で単に「フォー・パン」又は「フォー・パン・チェロ」とも呼ばれています。
「フォー・チェロ」の音階配置は5度サークルとなっています。“レネゲイズ”では特殊な配置の楽器を使用しています。また「テナー・ベース」と同じ長さの楽器も使用しています。
「ダブル・セコンドやギターなどと和音を構成する場合が多いようですが、カウンター・メロディーを演奏する場合もしばしばあります。

6、テナー・ベース

音階配置はCaug,Dm,Gaug,C#m,のコードを作っている。“レネゲイズ”ではオーギュメント・タイプの楽器を使用。またG#,F#m,Em,Bb,のコードを作っている楽器もあり、“パンベリ”では一般より短いチェロ程度の長さの楽器も使用しています。

7、ベース

「シックス・ベース」の音階配置は5度サークルの変形。
最低音階がA1の「トリニダード・スタイル」は「ロウ・シックス・ベース」とも呼ばれています。「ハイ・シックス・ベース」と呼ばれる楽器もある。「シックス・テナー・ベース」と呼ばれる物もあり、“レネゲイズ”は日本公演で使用している。また6個の単体の配置はオーケストラによってしばしば異なっている。

8、クワドロフォニック

 音階配置はオーギュメント・タイプです。

9、その他1-シックス・パン

 上記の「クワドロ・フォニック」に2個単体を追加して音域を広げたタイプで、カナダで開発されたようです。

10、その他2-アラウンド・ザ・ネック・パン

 パレード用のアラウンド・ザ・ネック用には「テナー」の他、「シングル・セコンド」「シングル・ギター」「ファイブ・ノート・ベース」等の楽器が使用されています。