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ニンギョヒメ [2009.] |
誘われたその手を取ると、男は大きな漆黒の翼を羽ばたかせ、娘を抱き上げ窓の外へと飛び立った。 素敵…わたしは夢を見て居るの? 王子様は白馬ではなく、お空を飛べるだなんて… なんて、なんて浪漫… あぁ…本当に幸せです わたしの、わたしの王子様… 広大な羽音と共に舞い降りたのは、身も凍えるような冷めきった館。 その2階の窓より帰還した【彼】は、娘をそっと寝台へと降ろしてやる。 羽毛布の柔らかな温もりに抱かれ、未だ夢に浸る彼女は知りもしないだろう…。 自らが犯してしまった事態の末路を。 『如何ですか?私の館は』 「シャンデリアにレースのカーテン…とても素敵です。まるでお城の様…」 「あぁ…王子様、お歌はお好きですか?わたし、昨日よりももっともっと綺麗に歌えます」 『そうですね…ですが今夜はもう遅い…。三つ目の願いも【今度】にして、今宵はもうお休みなさい。』 ああ、わたし このまま此処で幸せに暮らせるのね 神様、神様、ありがとう…。 こんな素敵な王子様に巡り会え共に暮らせるだなんて… わたし本当に幸せです。 神様… 魔法のランプの精霊さん… 三つ目のお願いです。 どうか、どうかこの幸せが何時までも…。 この【時】が、永久までも―… 『……おやおや、いけない子ですね。【最期の願い】を望んでしまいましたか……』 『甘い果実は熟してからのほうが、好みなのですが…仕方ないですね…【夢の代償】ですよ…』 ―お休みなさい…永久に…― 娘は眠った。 喜福の笑みを浮かべたまま。 穏やかな口元には、首筋の動脈より逆流した鮮血が… 微かに滴り白いヴェールを赤く紅く鮮やかに染め上げる。 願い欲した三つの夢を、【永遠】に 安らかに 眠りについたのであった…。 三つの願いを叶える【魔法のランプ】…。 その【代償】は… …っふふ もう、言わずとも分かりますよね? 【夢】は所詮【眠りの最中】でしか、見ることも叶わないのですよ― ……っふふ… |
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