HOMEoriginal>暗黒童話 …今宵はどの御伽噺をお聞かせしましょう 
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キコリ [2011.]


 朝焼けの樹海
 等間隔で刻む錆鉄の音

 少年の【時】は もはや永遠に刻むことは無いのだろう―



  ~†~ キコリ ~†~


その【音】は、何気なく開いた懐中時計の秒針と、同調した旋律を奏でる。

刃こぼれした斧を唯々、無心に打ち付ける少年の瞳は虚ろで。
握った掌を赤土色に染めて尚、鉛の腕を持ち上げては振り下ろす。
もはや、切り倒すどころか、幹を削ることさえままならない斧で、ひたすらに【同じ動き】を繰り返す。


 休まることもなく
 壊れた玩具のように
 【時】を忘れたかのように


 黄金の塗装もはがれた
 純銀の面影すら残らない

 赤い斧を―




 「欲は身を滅ぼす」

  …とは、正にこれを指すのでしょう。


 哀れなものだ。

 同じ職仲間に見栄を張り、手に余る【もの】を欲したばかりに
 少年は【時】を永遠、
 大樹に刻み続けるだけの【傀儡(クグツ)】と化してしまったのだから…。


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