木下黄太氏インタビュー
「放射能防御」と脱原発を巡る、もろもろの事情
官邸前金曜行動が「被曝回避派」を排除した理由
木下 それから1年経って、官邸前金曜行動が盛り上がりました。
このことについては、僕は大変高く評価しています。僕は無理だと思ったのに、その1年後にあれだけの人数が集まったということについてだけは、率直に評価したいと思いますが。
運営者 なんですが・・・
木下 果たしてあれだけの人を集めた意味はあったんでしょうかね。
福島民友新聞が2014年の7月初めに、「反原発デモに違和感。福島差別を助長」というようなという論説記事を書いているのですが、これは反原発デモ=福島差別として、断罪するような記事です。
だけど、少なくともデモの主催者の人たちは、デモによって福島の人たちを差別しようとする気持ちは1パーセントも持っていないはずです。
なぜなら、デモの主催者である反原連の人たちは、福島原発由来の放射能による健康被害は起きないほうがいいと思っているし、起きるはずはないと思っている立ち位置に近いからです。
運営者 じゃないと、怖くて東京で屋外でデモなんかできませんよ。
木下 つまり福島の人たちとそういう意識は全く同じはずなんです。そして反原連の人たちは、被曝回避を主張する人たちを極力排除したいと明確に思っていたわけです。
運営者 木下さんとはどういう関係なんですか。
木下 初期のころに、官邸前金曜行動の幹部の何人かは、僕の講演会に来てるみたいなんです。その時、彼らの運動について「ぜひ続けてください」と言った記憶があります。
その時話していて、根幹として「このようにしたい」という考えはあまりなかったように見受けられました。また、こちらと同じように被曝回避について話していたし、それに対する反論はなかったと思います。
運営者 そうすると彼らは、被曝回避について否定も肯定もする論拠もない
ままに、単に政治的な立ち位置だけで被曝回避を否定するというまちがいを犯している可能性があると思いますよ。
木下 もう一つは、あの時は彼らはどちらかと言うと僕に同調していたのに、今は違うのは何故かという感じはしますね。
運営者 同調する理由がなくなったんでしょうね。
木下 そしてこれはね、これから後に話す、被曝回避しているはずの人の中に、おかしなことが起きている原因と繋がってると思うんです。
おそらく反原連の人たちを僕の講演会に連れてきたのは、被曝回避をやっている女性なんですよ。そしてその人は今でも頑張ってるんだと思います。反原連の人たちと、そのような女性とは、とても近い立ち位置にいるわけです。
反原連の人たちは、原発を止めたいという純粋な気持ちがあったと思いますよ。
彼らは、東京で人を動員するためには反原発でなければならないし、福島とは寄り添っていく姿勢でなければならないと思ったのだろうと理解しています。
その上で、被曝回避を主張している連中は少数派だから、その連中は切る必要があると考えた訳です。そうやって肝心要の、放射性物質の危険性ということを無視してしまったのです。
そのようにして反原発の人たちの間にも、被曝回避を主張するかどうかで、バッサリと大きな亀裂が入ったと見るのが正しいと思います。
運営者 マーケティング戦略として、被曝回避は好ましくなかったわけですね。
木下 勿論です。被曝回避ということは、実は言わずにやっている人たちが都内の有力な立場にいる人たちの多数派ですから。そういう人たちに響かない。
また、反原発系で僕よりも人が呼べる人というのも、実はすごく数が限られていて、山本太郎氏とか小出先生くらいだと思います。そういう感覚も理解していない。ただし、僕としては、1年前に自分が言っていたことが、たとえ違う形だとしても結実するのはいいことだと思ったし、そこでブログで官邸前金曜行動への参加を呼びかけたのですが・・・。
■木下黄太氏インタビュー
今そこにある「放射能危機」の本質 2014年4月
「放射能防御」と脱原発を巡る、もろもろの事情 2014年7月
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