命題論理の自然演繹における諸定理 【15】後件否定式 Modus Tollensの証明

A,Bに、どのような論理式(命題変数単体に限らない)をいれても、
 ( ¬B(AB) ) ¬A 
は、
命題論理における自然演繹】の定理


【証明】  ( ¬B∧(AB) ) ⇒ ¬A 

 命題論理の形式的体系自然演繹に準拠した操作   
   端的には、
    ・仮定の書き出し 
    ・推論規則「∧除去則」による書き換え 
    ・推論規則「¬除去則」による書き換え   
    ・推論規則「¬導入則」による書き換え   
    ・推論規則「⇒除去則」による書き換え 
    ・推論規則「⇒導入則」による書き換え 
 のみで、
 論理式( ¬B(AB) ) ¬A」が得られる  
 ことを示す。

 →step01
 →step02
 →step03
 →step04
 →step05
 →step06


[step1] 自然演繹で認められた操作(2)仮定の書き出し

 論理式¬B(AB)」 を仮定1として書き出す。

  

仮定1
 ¬B(AB) 


[step2]自然演繹で認められた操作(3)推論規則による書き換え




【文献】
 ・野矢『論理学』1-2-2-公理系のサンプル2-問題25(3)(p.65) 解答(p.227)
 ・野矢『論理学』1-2-3-LP-命題論理の諸定理-定理11(p.70);付録-定理11(p.220)。


 ※注意:野矢は、他のテキストで「¬導入則」と呼ばれる推論規則も「背理法」と呼んでいる。[『論理学』1-2-3-完全な公理系の例-派生規則(p.69)


   

  ・推論規則「∧除去則」にしたがって、
    仮定1「¬B(AB)」 を「AB」 へ
   書き換える。

  ・推論規則「∧除去則」にしたがって、
    仮定1「¬B(AB)」 を「¬B」 へ 
   書き換える。

  ・推論規則「∧除去則」により、
    書き換え後に引き継がれる仮定は、書き換え前の仮定のすべてとなるから、
     書き換え後の「AB」「¬B」は、それぞれ、仮定1「¬B(AB)」 のもとにある。

  ・これで、推論規則「∧除去則」による書き換えによって、
   仮定1「¬B(AB)」から、
       「仮定1『¬B(AB)』 のもとで『AB』」
       「仮定1『¬B(AB)』 のもとで『¬B』」
   が導出されたことになる。

  

仮定1
 ¬B(AB) 

 

仮定1
 ¬B(AB) 




(∧除去) 


(∧除去) 


AB


¬B 



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[step3] 自然演繹で認められた操作(2)仮定の書き出し

 論理式A」 を仮定2として書き出す。

  

仮定1
 ¬B(AB) 

 

仮定1
 ¬B(AB) 



 仮定2 


(∧除去) 


(∧除去) 


A

AB 


¬B 



[step4] 自然演繹で認められた操作(3)推論規則による書き換え

  ・推論規則「⇒除去則」にしたがって、
     仮定2「A
    「仮定1『¬B(AB)』 のもとで『AB』」
   を
   「B
   へ書き換える。

  ・推論規則「⇒除去則」の規定により、
   書き換え後に引き継がれる仮定は、書き換え前の仮定のすべてとなるから、
    書き換え後の「B」は、仮定2「A」、仮定1「¬B(AB)」 のもとにある。

  ・これで、推論規則「⇒除去則」による書き換えによって、
     仮定2「A
    「仮定1『¬B(AB)』 のもとで『AB』」
   から、
   「仮定2『A』仮定1『¬B(AB)』のもとで『B』」
   が導出されたことになる。

  

仮定1
 ¬B(AB) 

 

仮定1
 ¬B(AB) 



 仮定2 


(∧除去) 


(∧除去) 


A

AB 


¬B 




(⇒除去)



B


[step5] 自然演繹で認められた操作(3)推論規則による書き換え

  ・推論規則「¬除去則」にしたがって、
      ・「仮定2『A』仮定1『¬B(AB)』のもとで『B』」
      ・「仮定1『¬B(AB)』 のもとで『¬B』」
   を「(矛盾)」 へ書き換える。

  ・推論規則「¬除去則」の規定により、
   書き換え後に引き継がれる仮定は、書き換え前の仮定のすべてとなるから、
    書き換え後の「」は、仮定1「¬B(AB)」、仮定2「A」 のもとにある。

  ・これで、推論規則「¬除去則」による書き換えによって、
      ・「仮定2『A』仮定1『¬B(AB)』のもとで『B』」
      ・「仮定1『¬B(AB)』 のもとで『¬B』」
   から、
      「仮定1『¬B(AB)』、仮定2『A』のもとで『(矛盾)』」
   が導出されたことになる。


  

仮定1
 ¬B(AB)  

 



 仮定2 


(∧除去) 

仮定1 



A

AB 


 ¬B(AB)  




(⇒除去)

(∧除去) 


B

¬B 




(¬除去)



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[step6] 自然演繹で認められた操作(3)推論規則による書き換え

推論規則「¬導入則」にしたがって、
 「仮定1『¬B(AB)』、仮定2『A』のもとで『(矛盾)』」を
 「¬A」へ書き換える。

 推論規則「¬導入則」の規定にしたがうと、
   「¬A」への書き換え後に引き継が れる仮定は、
   書き換え前の仮定「¬B(AB)」「A」 から、仮定「A」を差し引い た分だけとなるから、   
   「¬A」への書き換え後に引き継が れる仮定は、仮定1「¬B(AB)」だけ。

・これで、推論規則「¬導入則」による書き換えで、
  「仮定1『¬B(AB)』、仮定2『A』のもとで『(矛盾)』」
 から、
  「仮定1『¬B(AB)』のもとで『¬A』」
 が、導出されたことになる。

  

仮定1
 ¬B(AB)  

 



 [仮定2] 


(∧除去) 

仮定1 



[A]

AB 


 ¬B(AB)  




(⇒除去)

(∧除去) 


B

¬B 




(¬除去)




(¬導入)仮定2を解消


¬A

[step7] 自然演繹で認められた操作(3)推論規則による書き換え

推論規則「⇒導入則」にしたがって、
  「仮定1『¬B(AB)』のもとで『¬A』」を
  「( ¬B(AB) ) ¬A」へ書き換える。
推論規則「⇒導入則」の規定にしたがうと、
   「( ¬B(AB) ) ¬A」への書き換え後に引き継がれる仮定は、
   書き換え前の仮定「¬B(AB)」から、仮定「¬B(AB)」 を差し引いた分だけとなるから、   
   「( ¬B(AB) ) ¬A」への書き換えで、すべての仮定が解消されることになる。

・これで、推論規則「⇒導入則」による書き換えで、
  「仮定1『¬B(AB)』のもとで『¬A』」から、
  仮定なしの「( ¬B(AB) ) ¬A」が導出されたことになる。

  

[仮定1]
 [¬B(AB)]  

 



 [仮定2] 


(∧除去) 

[仮定1] 



[A]

AB 


 [¬B(AB)]  




(⇒除去)

(∧除去) 


B

¬B 




(¬除去)




(¬導入)仮定2を解消


¬A


(⇒導入)仮定1を解消

( ¬B∧(AB) ) ⇒ ¬A



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