| 3/22(金) 観戦三日目 女子シングルSP・アイスダンスフリー |
| あまりにも疲れがたまっていたので、朝の公開練習はパスすることに。10時半ぐらいまでゆっくり寝て、やや体調回復。昼前にホテルを出る。 駅前のドラッグストアで花粉対策の飴や目の洗浄液を購入する。それから、会場で買うと高いので弁当も買っておく。 バスに乗り、会場に着いたのは1時半。それでも考えていたよりは早く、女子シングルのショートプログラムは全5グループのうち、第2グループの途中に差し掛かっていた。 目当ての選手は、第4グループあたりから登場する。まずは、ウクライナのリアシェンコ選手。美人選手であるのみならず、演技の質も高い。予選は第7位である。その予選と同じく、今日もまたソツのない演技。5点台が現れ、ようやく上位選手が出てきたか、という感じになる。 同じ組で滑るはずだったロシアのマリア・ブッテルスカヤ選手は、怪我のため棄権となった。アナウンスメントが流れると、会場から失望の声があがる。世界選手権で一度優勝するほどの実力者であり、日本でも知名度が高い。僕も楽しみにしていたのに残念だったが、確かに、一昨日の予選でも演技の切れはなかったように感じた。 そしていよいよ、最終組。一気に会場のボルテージが上がる。村主、恩田両日本人選手をはじめ、スルツカヤ、クワン、コーエンなどの強力選手達がいっせいにリンクに上がる。 全員での6分間の練習のあいだ、僕はスルツカヤ選手の動きを追っていた。彼女は、最後に滑ることになる。何とか、今大会では勝って欲しい。意外なことに、世界選手権では一度も優勝したことがないのだ。 グループ最初に出てきたのは、ハンガリーのセバスチャン選手。村主選手とほぼ同じぐらいの実力なので、その出来は気になるところだったが、少しミスが出て、前グループのリアシェンコ選手を下回る。それに比べ村主選手は、僕がこれまで見た中で最高の出来だった。一度のミスもなく、滑り終えると、会場からはスタンディングオベーションが沸き起こった。嵐のような歓声のなか、村主選手も会心の笑顔。そして信じられない高得点で、文句なしのトップに立つ。 その得点を見送るように現れた、ミシェル・クワン選手。こちらも大きな拍手で迎えられた。 しかし、クワンはミスった。最初のジャンプでよろけ、以降の演技にも精細を欠いた。得点は伸びず、なんと村主選手の方が順位が上になった。これには少し不満の声もあがっていたようだが、僕は予選でクワン選手が出した高得点のほうが疑問だったので、今日は文句はない。 続くは、恩田選手。村主選手に続き、こちらも絶好調。少しふらついた程度で全てのジャンプをこなす。技術点は高く、表現点もそこそこ出た。そして、サーシャ・コーエン選手。なんとなく調子が悪そうで、予選の時も2位にはなったが、あまり冴えた演技ではなかった。彼女の場合、一つ一つのスキルはものすごいのに、それを演技全体を通して保つことができず、必ずどこかでミスをする。今日も一度、ジャンプでよろけた。それまでもっと高難度なジャンプを飛んでいたにもかかわらず、だ。それ以外は、スパイラルやスピンも圧倒的な素晴らしさだったのに、結果、点が伸びなかった。この時点で、1位村主、3位恩田という、信じられないような順位。 トリを務めるは、わが応援する、スルツカヤ選手。失敗だけはするなよと念じつつ、演技に見入った。ジャンプは無難にまとめた印象。最初に3回転−2回転が決まったあとは無理をせず、ステップやスピンが多かったような気がした。それでももちろんすべて質は高く、会場は沸く。終わった瞬間、誰もがその最高の演技を称えた。村主選手の時には立たなかった僕も、今度はスタンディングオベーションに加わる。そして、皆が納得の高得点。表現点ではなんと、二人の審判員が6点満点をつけていた。ほっと息をつく。これでとりあえず大丈夫。夜は、アイスダンスのフリー演技。下位の選手はとりあえずパスし、10位以内の選手の演技から見始めることにした。 ところで、周りでもよく聞くことだが、アイスダンスの得点の良し悪しの基準が、今ひとつよくわからない。とくに技術点に関して、そう思う。シングルやペア競技ならば、ジャンプの回数や高さなど、素人が見ても簡単にわかるのに。それが、フィギュアの中でも今ひとつ盛り上がりに欠ける原因かもしれない。 今日も、見ていておおっと思ったのは、3〜4組ほど。まずは、MTVの世界をヒット曲メドレーで再現したロシアペア。肩や頭をリズミカルに動かして小気味よいダンスを披露していた。そうそう、こういうのもっとやってよ、と思った。どのペアも同じような演技、というかスケーティングばかりで、見ていてつまらないものが多い。「アイスダンス」なのだから、もっともっとダンスの要素を取り入れれば、見ていてもっと面白くなると思う。まだまだできることは山のようにあるのにと、そんな気がした。 最終グループ、一番手はもう一組のロシアペア、そしてオリンピック銀メダリストのロバチェワ・アベルブフ組。テーマはオリンピックでも見せてくれた、「平和への祈り」だ。昨年の同時多発テロ事件に題材をとったこのプログラムは、わかりやすくて、しかも人の胸を打つ。自分でも意外なほど、演技の内容を覚えていた。最後に男性が女性を抱え、少し下にずれて氷面すれすれのところで止まる。決まった。会場から一斉に大きな拍手。立ち上がる人もいた。それまでのペアとは明らかに一線を画す演技。当然の高得点で首位に立つ。 その後に出てきたのが、昨日のオリジナルダンスで気に入った、僕の一押しのイスラエルペアである。昨日と同じく、両腕をあやとりのように複雑に絡ませる社交ダンス的な技や、そして華麗なステップワークを見せてくれた。これぞ、ダンス。氷の上で踊るダンスだ。会場の盛り上がりはさほどでもなかったが、僕には今日の中では一番の出来だった。審判は、ロシアのペアに続く第2位の評価を示した。 続くブルガリアペア、そしてリトアニアペアの演技は、正直、僕にはあまり響かなかった。リトアニアのペアは人気があるようで、声援も多かったのだが。 そしてトリは、カナダのペア。マイケル・ジャクソンのヒットメドレーで、「ビリー・ジーン」から始まるナンバーは楽しく、そこそこ会場も受けていた。ただ、ダンスの内容はそれほどもなく、マイケル・ジャクソンの曲で助けられているという感じがしないでもない。 結果は、ロバチェワ・アベルブフ組が優勝、トリのカナダペアが2位、僕の応援するイスラエルペアが3位という順位。今日は表彰式を見ずに会場を出る。 明日は、競技としての最終日。女子シングルの順位が決まる。 がんばれ、スルツカヤ。 負けるな、スルツカヤ。 |