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3/21(木)  観戦二日目 アイスダンスOD・男子シングルフリー
 朝、せっかく1000円払って公式練習を見に入ったのに、ヤグディン選手と本田選手をほんのちょっと見ただけで終わってしまった。有力選手が出てくるのは10時からというのは公式サイトを見て知っていたが、少しだけ宿を出るのが遅くなってしまった。長野駅からエムウェーブまでのバスも混んでいて満席。昨日7時に乗った時はガラ空きだったのに。
 乗っているのはほとんど女性客。もともとフィギュアスケートは女性ファンが多いのに加え、今日は男子シングルのフリー演技が行われる日だ。もう、ヤグディンさま、本田クン、という声がそこかしこから聞こえてきそうな雰囲気。

 昨日の席は、リンクの長手方向中央あたりだったが、今日は片側に寄った位置にあった。ちょっと見づらいが、キッス&クライには昨日よりも近いので、写真が撮れそうだ。
 公開練習が終わり、ぶらぶらと売店あたりをうろついていると、リンクへ続くドアから、小柄な女性が小走りでやってきた。見るとなんと、伊藤みどりさん!そのまま別のドアへと走っていく。あまりの速さに誰も気付いていない。昨日はアメリカの男子選手がうろうろしていて、写真やサインにも気軽に応じていた。それを見て以来、スルツカヤいないかなあと歩き回ったりしたが、もちろん会うことはできなかった。

 正午から、アイスダンスのオリジナルダンスが始まる。ペアに続いてアイスダンスも、ちゃんと見るのはこれが初めて。他の競技ほど派手ではないため、下位の選手の演技は少し退屈だったが、コンパルソリー(予選)10位以内の選手達の演技はさすがに見ごたえがあった。
 なかでも僕は、コンパルソリー4位だったイスラエルのペアの演技に目を奪われてしまった。よく出来たダンスは心を動かすことができるのだと知る。
 結果、上位の順位は予選とほぼ変わらず。トップは、オリンピック銀メダリスト、ロシアのロバチェワ・アベルブフ組。確かにこれも人を惹き付ける圧倒的なパフォーマンスだった。アイスダンスは明日、フリー演技で最終順位が決まる。

 男子シングルのフリー演技が始まる時間、僕は休憩スペースで休んでいた。ここに来てから、花粉症がもう最悪の状態。点鼻薬もあまり効かず、鼻の奥がツーンと痛い。熱はないが体がだるく、睡眠不足も影響してか、頭が朦朧とする感じだ。
 それでも、少し眠ったら楽になった。男子フリー演技は4つのグループに分かれており、僕は最終グループにしか知っている選手はいない。第2グループの途中あたりで席に戻る。
 中国人選手が演技をしていて、なかなかいいジャンプを飛んでいた。僕の後ろの席にはいかにもスケート通というような薀蓄おやじがいて、この選手とそのすこし後に演技をしたスイスの選手のことをほめていた。

 第3グループの終盤でのこと。カナダの選手が、そこそこの内容で演技を終えた。その瞬間、ドドドドっという音が客席通路に響く。何だ何だと思って見ていると、女性ファンがいっせいにリンクに近づき、花や贈り物を投げ入れていた。すごい量だ。モニタースクリーンを見てみると、なかなかの男前。まだ力はそれほどでもないが、人気があるらしい。

 さて、クライマックスは最終グループ。トップは本田選手、その後にヤグディン選手が続く。ロシア第2の選手アブトやオリンピック銅メダリストのティモシー・ゲーブルもいる。
 本田選手はショートプログラムを終えて、第4位。フリーの演技如何ではメダルも狙える。その本田選手の演技が始まった。出だしは絶好調。ジャンプが次々に決まり、会場からは盛大な拍手が起こる。しかし、このままいけるかと思った中盤あたりで、ジャンプミス。会場からは失望の大きなため息。それでもめげず、最後まで滑り切った。さっきのカナダ選手を上回る地響きがまたやってきて、リンクはまた花やぬいぐるみであふれた。
 本田選手自身もちょっと不満げな表情だったが、得点は結構高く出た。この時点で暫定トップに立つ。しかし次に控えるは、あのヤグディンだ。

 銀盤中央に立ち、オリンピックで何度も聞いた「仮面の男」のテーマが流れる。さっきまで本田選手を応援していた会場全体がもう、ヤグディン一色に染まっている。4回転ジャンプ、4回転−3回転の連続ジャンプが次々と決まるたび、憑かれたように拍手をしている自分に気付く。あの魅力的な、そして神懸り的なステップも見られた。そして、静かな荘厳なフィナーレ。優勝が決まった瞬間だった。
 こんなに終わって欲しくない4分半はなかった。至極の一品だった。他の誰にも真似できない、ヤグディンだけの世界。ただ一人だけが全く別の世界で演技をしていた。あの演技に誰かが勝てるなんて思えない。でもそう考えるとプルシェンコがいかに凄いかということも言えるわけで、次はこの二人が戦うところを是非見てみたい。

 本田選手は、銅メダルを獲得。少しホームディシジョンかなとも思うが、プルシェンコのいないオリンピックの順位そのまま(ゲーブル選手が今回は銀メダル)なので、今の彼の実力通りなのだろう。心から拍手を贈りたい。

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