| 3/20(水) 観戦初日 女子シングル予選・ペアフリー |
| 世界フィギュア観戦、初日。朝5時50分に起きて、会場へと足を運ぶ。 「エムウェーブ」というネーミングの意味を初めて知った。外から見ると、アルファベットのMの文字が波のように連なっているデザインなのだ。それにしても、Mは何かの頭文字なのだろうか。 バスを降り、中に入る。会場内はスピードスケートができるだけの広さがあるが、フィギュアではそれを全面使うことはない。会場の一部を仕切り、客席もにわか造りの鉄パイプ組みだ。一番安いA席を取ったが、少し遠いな、というのが第一印象。持ってきた300mmの望遠レンズをもってしても、席からでは選手のアップを撮ることは不可能だ。おまけに、ビデオ撮影は禁止となっており、重たいのを我慢して持ってきたビデオカメラは使えない。 8時50分、競技開始。まずは、女子シングルの予選が行われる。40名の参加全選手がA,B二つのグループに分かれてフリー演技を行い、そのうち30名がショートプログラムに進むことができる。40名全員が4分のフリーを演ずるため、時間がものすごくかかる。 にわかフィギュアファンなので知らない選手の多いなか、いきなり最初に出てきたのは、ロシアのマリア・ブッテルスカヤ選手。美人選手で実績もあり、日本でも有名だ。僕でも知っている。でも、演技にそれほどキレがあるとは思えない。正直、峠を超した選手という印象は否めない。 以降しばらくは知っている選手は出てこなかったが、第3グループに入り、村主選手、そしてミシェル・クワン選手が登場となる。リュックから望遠レンズを付けたカメラを取り出す。しかし、遠いうえに選手はほとんどずっと動きっぱなしなので、シャッターチャンスがなかなか訪れない。結局、プログラム開始前と、終了後の僅かな時間しか写真は撮れないことがわかった。 村主選手は、ほぼノーミスのいい出来だった。高得点を出し、トップに立つ。しかしその後に滑ったクワン選手がそれに勝る高得点を出し、予選A組第一位を決めた。 いっとき、クワン選手は「名前で点をもらっている」と言われたことがあったらしい。今日の採点も、ともに素晴らしい演技を行った村主選手に比べ、明らかに1ランク上の点数が付けられていた。あれはどうなんだろう。クワン選手を応援する人は多かったが、あまりに高い点数を目にして、会場は複雑な反応だったように思う。 昼休憩をはさみ、午後はグループBの演技が行われた。ただ僕は、朝からずっと背もたれなしの席で観戦を続けた疲れがたまっていて、昼食が終わってからそのまましばらく外で休んでいた。体がへたばっていては楽しむものも楽しめなくなってしまう。入り口で配られているスタートリストをチェックし、ウクライナのリアシェンコという選手のあたりで観戦を再開する。彼女はそれほど強くはないが、日本では人気がある選手。それでも下位選手のひしめく予選の場では抜きん出ていて、その時点でグループBトップに立った。 さて。その後の組で、いよいよ僕の最も応援する、スルツカヤ選手の登場となる。リュックから再びカメラを取り出す。競技前の練習でシャッターチャンスを狙うが、やはり難しい。演技が始まる前の静止ポーズで一枚撮り、あとは演技に集中する。 たぶん、オリンピックとほぼ同じプログラムだったと思う。そして、あの時のフリー演技で少しぐらついたジャンプは、今日は完璧だった。見たところ、ほぼノーミス。そして予想通りの高得点。グループBダントツの首位だ。よしよし、いい感じ、とカメラを納める。 その後、最終組には日本の恩田選手と、僕が実力No1と勝手に思っているサーシャ・コーエン選手が入っていた。恩田選手は、演技前の練習で3回転ジャンプや3回転−2回転の連続ジャンプなどを次々に決め、絶好調の様子。練習なのに会場から歓声があがる。しかし、「あんまりやると疲れちゃうよ」との声もあがっていたら、やっぱりの尻餅で練習を終えた。嫌な予感は的中し、本番でも一本ジャンプをミスった。それでも、その後はやっぱり好調で、軽快なジャンプを何本も見せた。結果、グループB3位。大健闘である。 朝からずっと見てきて、一部の強い選手とそれ以外の選手、というのには大きな溝があるように感じていた。得点の出ない選手は、大体同じ。一度の失敗でもうやる気をなくし、後がボロボロになってしまう。見ていても、絶対決めてやるという覇気が伝わってこない。急速に萎えてしまうのがはっきりと感じられる。 優勝を狙うならいざ知らず、一度失敗してもその後立て直せば充分上位は狙える。恩田選手がいい例だ。ましてや今日はまだ予選の段階。上位30位に入れば良い。予選の順位には0.4が乗算されて順位点となるので、ショートプログラムとフリーでいくらでも挽回できる。 そうしなきゃいけない、などと偉そうに言うつもりはないが、もったいないなあと思うのだ。 さあ、女子シングル予選のトリを飾った、サーシャ・コーエン選手。相変わらずのどっしりした演技、そして軽快なジャンプ。ただものではない。しかし、このままいくとスルツカヤを抜いてトップか、と思った瞬間、トリプルジャンプが抜けてシングルジャンプになってしまった。このミスだけで、あとは完璧。スルツカヤに次ぐグループB2位で演技を終えた。 女子シングル予選が終わってから1時間ほどの休憩を挟み、今度はペアのフリーが行われた。こちらは今日で最終順位が決まる決勝戦。雰囲気も違い、緊張は高まる。 実は僕は、ペアの競技というのをちゃんと見るのはこれが初めてだった。にわかフィギュアファンとして目覚めたソルトレイクオリンピックでも、ペアとアイスダンスは見ていなかった。しかし、エキシビションで見た演技でその魅力に触れ、今回観るのを楽しみにしていた。 そして競技が始まる。シングルと違い、スロウジャンプやデススパイラルが面白い。ただ、もともとシングルよりも知っている選手が少ないうえ、オリンピックでダブル金メダルを取ったペアが両方とも出ていないので、途中でまた休憩を取ることにする。 最終グループは、ソルトレイクで3、4,5、6位となった4組が揃った。そのなか、ショートプログラムでトップに立っていたのは、オリンピック銅メダリスト、中国のシュー・シェン&ホンボー・ツァオ組。そして2位はオリンピック4位のロシアのペア。メダリストはこの組で決まりそうだった。 グループの2番目に、中国のペアが登場した。練習の時から凄いと思っていたが、スロウジャンプの高さが他の組より段違いに高くて見栄えがする。そしてさらに感心したのは、全ての演技内容に何かしらアイデアが組み込まれている点だ。フリー演技とは言っても、割と似たような内容になることが多いが、このペアに限ってはジャンプにしてもリフトにしても何か他とは違った要素を取り入れ、それが観衆の目を引く。 とくに、最後の締めくくり方が圧巻だった。他の組はたいていスピンなどの後に二人がポーズを取っておしまいとなるが、このペアはこれでもかというほど複雑な構成を入れて、締める。正直、心から感動したのは今日このペアがはじめてだった。優勝してほしいと思った。一箇所、男性側がジャンプでよろけるミスがあったが、それでも暫定首位には立った。 続くロシアのペア。ショートで2位だが、ここでノーミスなら順位はひっくり返る可能性がある。しかし、この組はちょっと不運なアクシデントに襲われてしまった。 途中で男性が転倒。しかしこれだけならまだ良い。その後、女性のスケート靴のエッジに男性の服の袖が引っかかってしまい、演技の流れが止まってしまった。大きなミス。2位に沈む。 トリとなったのはショートで3位のアメリカペア。ここで1位になれば総合でもトップになれた。しかしこちらもミスが出て、結局3位。僕が望んだとおり、中国ペアの優勝で幕は下りた。というわけで、初日はほぼ丸一日、スケート漬け。会場には12時間以上いたことになる。そして、しっかり楽しんだ。練習の入るタイミングや、キッス&クライの位置など、テレビではわからない部分がたくさんあって、それも嬉しい。 明日は正午からアイスダンスのオリジナルダンス、そして夕方から男子シングルのフリー。午前中にある男子シングルの公開練習を見に行くつもりなので、結局今日と同じぐらいのハードな日程になる。 |