シリーズ無実

証拠のない「犯人」

 

 狭山事件では、警察は証拠となるような物として、脅迫状、足跡、スコップ、被害者の自転車、学生証、万年筆、時計、カバンなどを出しています。

 ところが、いずれも石川さんに結びつくもの、指紋などがまったく見つかっていないものばかりです。ひとつづつ見ていきます。

 脅迫状は、石川さんが漢字を書くことができないような筆記能力しかなかったことから、また、筆跡からも、石川さんが書いたものでないことが明らかにされています。石川さんの書いた「上申書」と見比べると、その違いは誰の目にも明らかです。それから、昨年提出された新鑑定によると、封筒に「軍手」と思われる痕跡があることがわかっています。警察は、犯人が軍手を使った、とは一言もいっていません。

 足跡は、そもそも、警察が「犯人のもの」とした根拠があいまいであり、まったく別人のものの可能性があるのです。その上で、石川さんの足とは大きさが違うのであり、これも石川さんとは何の関係もないのです。

 スコップは、警察が「死体を埋めるのに使用した」と言っているのですが、弁護側の越生鑑定によると、付着物の分析から、すくなくとも死体発見現場で穴を掘るのに使われたものではないことが証明されています。さらに、このスコップは、近所の養豚場から盗まれたものだと警察は言っていますが、それを証明する事実はありません。確かに、養豚場の経営者が「うちのだ」といったということはありますが、それも、警察の圧力によって言わされた可能性もあるのです。養豚場に限らずどこの農家にもひとつや二つはあるようなありふれたスコップであり、はっきりいってどこのものか、もともと誰のものかわからないのです。

 三大物証と言われるのが、時計、万年筆、カバンです。いずれも、石川さんの「自白」によって発見された、と警察は言っています。しかし、これらの発見はきわめて不自然であり、また、発見されたものが、被害者のものではないことが明らかとなっています。警察の、証拠捏造の可能性が大きいのです。というか、捏造された証拠だというしか説明のつかない事実があるのです。特に、万年筆は、石川さんの家から発見されたのですが、発見前に、2度にわたって、徹底的な家宅捜索が行われており、それによって発見されていないのに、誰が見てもすぐわかる鴨居の上から発見されたのです。そして、インクが、被害者が使用していた色と違うのです。

 これらの証拠と、石川さんを結びつけるものは「自白」だけです。つまり、証拠があるから、石川さんが犯人だ、というのではなく、「自白」があるから証拠があるのです。問題は「自白」です。それは、警察による長期の拘留と接見禁止(弁護士にもほとんど会わせなかった)、脅迫と泣き落とし、拷問によって言わされたものです。ですから、客観低事実とは根本的に相容れないものであり、実際、多くの矛盾点が明らかとなっています。++++

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